第1373話 騎乗レース、決着!
嵐には呼吸みたいな物がある。
ふとっちょさんが必死に山道を軍馬で駆け上がらせている。
その後から神学校の軍馬が追い上げてきた。
さてさて、嵐には呼吸みたいな物があるのだ。
一瞬、暴風雨が和らぎ、雨も弱くなった。
騎士学校の第四走者がすかさずペガサスを羽ばたかせ、空に舞い上がる。
「よし、そのまま来いっ、来いっ!!」
騎士学校騎乗部部長が大声を出して手を伸ばす。
ふとっちょさんが背中を丸めて軍馬を必死に駆けさせる。
その横を神学校の軍馬が追い上げてくる。
いかん、騎士学校騎乗部が追い上げてきた。
風が止まると空を行くペガサスの優位がでかいな。
ふとっちょさんの軍馬の上をペガサスが飛び越えていく。
風吹けよ~!!
ペガサスが第五チェックポイントに飛びこんで来て、騎士学校騎乗部の部長に投げるようにタスキを渡した。
ふとっちょさんもチェックポイントに入って、私に向けてタスキを投げる。
騎士学校の第四騎手が騎馬鞭を振って、うちのタスキを打ち落とした。
「なにすんだー、こらーっ!!」
「ごめんごめん、手が滑ったよ、あははっ」
てんめーっ!!
ぶっ殺そうと思ったが、ヒューイが羽を伸ばしてヒョイとタスキを空中で取った。
ナイス!
ヒューイはタスキを私の首に羽で器用に掛けてくれた。
《俺はいくぜ!》
「行こう!! ヒューイ!!」
上手くタスキは取れたが、その隙に、騎士学校騎乗部部長が空を先行、神学校騎乗部部長のスレイプニルもタスキを受け取り、崖の難路の部分を凄い勢いで登り始めた。
くそうくそう。
私は三番手で登り始める。
ヒューイはガガガガガと力強くきつい上り坂を走り始めた。
《飛ぼう》
「そうね、風も……」
と、思った瞬間、轟風が吹きつけて来た。
叩きつけるような豪雨も来た。
悪路、悪天候にスレイプニルは強い。
神学校騎乗部部長はさらに騎獣の速度を上げた。
暴風が吹いたが、騎士学校騎乗部部長のペガサスはふらついたが、なんとか飛んでいた。
さすがの飛行技術だな。
《飛ぶぜ飛ぶぜ》
「行くかあ、ヒューイ!!」
《俺はいくぜっ!!》
ヒューイは坂を力強く蹴り上げて空中に躍り上がった。
彼は力強く羽ばたいた。
前方に揺れて飛んでいるペガサスがいて、足下にスレイプニルが駆け上がっている。
「くそう、負けるかあっ!!」
騎士学校騎乗部部長がペガサスを力強く羽ばたかせる。
轟風雨がうねるようにヒューイとペガサスを叩く。
ペガサスの羽が裏返って失速し、斜めに落下していく。
ヒューイは体をくねらすように風に乗り、さらに高度を上げて羽ばたく。
頂上を眼下に見るほどの高度を取り、大嵐の中でゴールゲートに向けて急降下して行く。
もの凄い速度でヒューイはゴールゲートをくぐり、再び空に飛び上がった。
「やったぜ、マコト!」
「やったよう!」
アダベルとペペロンが声を上げた。
そのまま二人は観客席から外に出て、巨大な竜に変化した。
GUWAAAAAAA!!
GOWAAAAAAA!!
二匹の竜は天に向けて轟々と吠え声を上げた。
大嵐の天に向けて二匹の吠え声は竜巻のように螺旋を描き頭上の雲を吹き飛ばした。
「「「おおおおお!!」」」
一瞬で大嵐が消えて、青空が顔を見せた。
《俺はやったぜ、俺はやったぜ》
「やったねー」
風も雨も無くなった山頂にヒューイはひらりと下りた。
万雷の拍手が私とヒューイを包む。
ゴールゲートを神学校のスレイプニルが通過した。
「二位! 神学校騎乗部!!」
その後、農学校、そして師範学校が続いた。
騎士学校騎乗部のペガサスはびっこを引きながらゴールゲートをくぐった。
最下位の五位だった。
おおー、やったぜー。
ワイバーンたちが去ったのか、あっというまに嵐は無くなったな。
勝ったなあ、との感慨を浮かべる間も無く、私とヒューイは騎士学校騎乗部部長のペガサスへと向かった。
羽が折れて、足が骨折しているなあ。
『ハイヒール』
ペガサスと騎士学校部長は緑の光に包まれて傷が癒えた。
「あ、うう、その、すまん」
「気にすんな」
そのままヒューイを駆って怪我をしたペガサスや、転倒した軍馬などを治していった。
大嵐だったから意外と怪我が多かったな。
ペガサスを飛ばそうとして、墜落のケースが多い感じだ。
みな、チェックポイントから山頂に向けて登って行く。
頑張ったなあ、みんな、良いレースだった。
ペガサスは悪天候でほとんど飛べなかったのに、一瞬の飛行でかなり詰められてやばかった。
晴れのレースだと、どんだけ有利なんだよ、この天馬達は。
さて、次は表彰式だね。
ステージでケビン王子が呼んでいるな。
あー、優勝できて良かった。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




