第1369話 みんなが山頂に続々と集まってくる
騎獣の世話をしていたら、蒼穹の覇者号が上ってきた。
着陸したら、即、ハッチ回りと後部貨物室に障壁の通路を張った。
ケビン王子とジェラルド、あと王様と王妃さまが降りて来た。
「おはよう、聖女マコト、酷い天気だのう」
「おはよう聖女さま、レースたのしみですわね」
「おはようございます、王様、王妃さま」
「おはようキンボールさん、障壁が助かるよ」
「濡れずに観客席に行けるのは助かる。おはようキンボール」
王族や招待した貴族たちが蒼穹の覇者号から降りて来て観客席に入った。
観客席の中では、カーチス兄ちゃんとロイドちゃんがお客さんを案内してくれている。
後部ハッチから神学校騎乗部の人達が出て来て、障壁通路を通って待合室に入った。
「聖女さまおはようございます。障壁は助かりますよ、すごく居心地が良いですね」
「おはよう、スレイプニルも元気そうね」
「はい、こいつらは悪天候と悪路にめっぽう強いですから」
神学校の三頭のスレイプニルは強敵かもしれない。
なにしろ嵐の山道だからね。
まあ、魔法学園騎乗部は全員古式テイムで騎獣と繋がっているというアドバンテージはあるのだが。
『また行ってくるわ、マコト』
「いってらっしゃーい」
ブローチからカロルの声がして、蒼穹の覇者号は再び舞い上がった。
やっぱり山頂は狭いから蒼穹の覇者号ぐらいがいいね。
大型船も着陸できそうだけど、風で位置がズレて木々を倒してしまいそうだ。
ケビン王子とジェラルド、カーチス兄ちゃんとロイドちゃんが、招待の貴族さんたちを観客席に案内していた。
嵐の方は少し風が弱まったかな、という感じ。
まあ、相変わらず凄い風ではあるんだけど、さっきほどでは無くなった。
雨脚は逆に強くなったな。
《ペペロン登場~~! 実体化するよ~~!》
(あ、今嵐だから気を……)
ペペロンが嵐の中で実体化した。
『ぎゃーっ!! なんだこの風!!』
「あーれーっ!」
「くっ、立て直せ、ペペロン!!」
哀れペペロンは強風に煽られて飛んで行きそうになった。
『あぶない』
そこに古竜モードのアダベルが現れてペペロンを抱き留めた。
『あ、あ、ありがとう』
「わあ、守護竜さまだわ」
「助かった」
アダベルは力強く羽ばたくと、ペペロンを抱えたまま、山頂に着陸した。
すかさず竜たちを囲うように障壁を張る。
『ああ、素敵なお方……』
『なに言ってんだ?』
アダベルは籠を下ろすとトンボを切って人化した。
『ああっ!! 女の子だったのっ! 私より若そう!』
「私がアップルトン王都の守護竜、聖氷竜アダベルであーる!」
籠からちびっ子たちがびっくりするほど沢山でてきた。
竜の障壁から観客席に障壁通路を繋いだ。
子供達は歓声を上げて、観客席になだれこみ、カーチス兄ちゃんに捌かれて、席についた。
ペペロンもトンボを切って人化した。
「な、なんだよ、私より竜体が小さいくせに、人化するとなんで大きいんだよっ」
「わはは、私の方がお姉さんなのだっ」
「理不尽だ!」
「私はペペロン、ジーン皇国帝都の守護竜だ」
「ああ、話はマコトから聞いてる。よろしくな」
「よろしくね、アダベルちゃん」
「ちゃんはやめろ」
私は待合室から障壁通路を出して竜の障壁ドームへと入った。
「いらっしゃい、グレーテ王女、ナージャ」
「来たわよー、観客席はこっちかしら」
「中の係の者にしたがってね」
「ああ、助かる」
ナージャは目で待合室を探って、パスカル部長を見つけると凄い良い笑顔になった。
小さく手を振ると、パスカル部長も手を振り返した。
ち、バカップルめ。
アダベルとペペロンも観客席に入り、ケビン王子の案内で席に付いた。
いやあ、どんどんお客さんが揃って行くね。
要らなくなった竜ドーム障壁や通路を消しながら、そう思った。
子供達が待合室に来て、騎獣たちを興味深そうに見ていた。
「うわあ、足が六本ある馬~」
「虫みたいだ」
「スレイプニルって種類の馬だよ、山岳コースで凄く強いんだ」
子供達はこわごわと騎獣を見て、ヒューイを見つけると背中に乗ったり、足を撫でたりしはじめた。
やっぱりヒューイは良く見るから親近感があるのね。
蒼穹の覇者号が降りて来て、また貴族さんたちと、後部ハッチから屋台を二台下ろした。
「おお、屋台も」
「いやあ、この嵐で山頂までどうしようかと思ってたんだが、オルブライト様が船に入れてくれて助かるよ」
私は障壁通路を作った。
屋台だから床も滑らないような感じにした。
おじさんたちは屋台を引いていった。
途中カーチス兄ちゃんとロイドちゃんが引くのを手伝い、屋台のスペースまで送って行った。
やっぱ、屋台で軽食無いと寂しいからね。
簡単なホットドックとか、スープとか、お茶とか出してくれるらしい。
屋台スペースの近くには座って食べられるようなテーブルと椅子が何セットか置いてあった。
さっそくアダベルとペペロンが屋台に並んでホットドックを囓っていた。
腹ぺこドラゴンどもめ。
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