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第1368話 プートリー山山頂も大荒れ

 朝ご飯をすませて、メイン操縦室に戻ると、ゆりゆり先輩がいた。


「おはようございます。遅かったですね」

「もう、行き違ってしまって、置いて行かれるかと思いましたわ」


 そうだったのか。

 あと、いない人はと……。

 よしロイドちゃんもいるね。


「そろそろ発進するわよ」

「オッケー、大風だから気を付けてね」


 私は艇長席によじ登って船長帽をかぶった。


 ざあっと、雨が降ってきた。

 うわあ、すごいな。

 バケツをひっくり返したような豪雨だった。


 甲板の上には障壁が張られて、ヒューイには掛からなかった。


「蒼穹の覇者号、リフトオフ!」

【蒼穹の覇者号、離陸シーケンスに入ります】


 前のモニターに風の密度が色分けしてあって、うねるように動いていた。


【風の密度の薄い部分にのって上昇してください、風の谷を越えると船体に動揺が起こります】

「わかりました」


 おお、悪天候モードだと、こうなるのか。

 風の流れが解りやすいな。


 蒼穹の覇者号は豪雨と大風の中、ガタガタしながら飛ぶ。

 高度をあげたあと、カロルは操舵輪を回してプートリー山に向けて回頭し速力を上げた。


 辺りが驟雨で真っ白になっているね。

 凄い雨脚で、風も強い。

 時々船首が振れてガクンと揺れる。


「うはあ、この中でレースか、開催できるかな」

「まあ、現場に行ってからね」


 雨の具合が解らないので何とも言えない。

 蒼穹の覇者号のサブディスプレイにカラフルな天気図が映っているけど、見方が解らないので困るね。

 カロルは風の凹凸を読んで上手に動揺を抑えて飛ぶ。

 というか、白銀の城号とか、成層圏の召雷号はちゃんと航行できてるかな。


 とはいえ、プートリー山は王都のすぐそこなので、ほどなくして到着した。

 山頂には工兵さんたちが右往左往して働いているね。


「これは、神学校とか、農学校とかの選手を拾って山頂に上げた方がいいかもね」

「何回か麓と山頂を往復するから、その途中で街道を行って、選手がいたらピックアップするわ。ええと、騎士学校の選手も?」

「あー、まあ、しょうがないね。ペガサスだと山頂まで行くのに遭難しそうだし」

「わかったわ、マコトらしいわね」


 そう言ってカロルはにっこり笑った。

 いや別に公平じゃあないよ、レースはやらないとさ。


 カロルは蒼穹の覇者号を山頂にふわりと着陸させた。


《俺はやるぜやるぜ》


 ヒューイが大風と豪雨の中に羽ばたいて飛びだした。


「あ、馬鹿!」


 一瞬風にながされてどこかに落ちるかなと思ったけど、ヒューイは器用に羽をつかい、轟風を掴んで飛び上がる。


《快適快適!》


 うはー、竜だから悪天候でも飛べるのか。

 凄いなヒューイは。


(そのまま、チームの待機所に入りなさいよ)

《解った、いくぜいくぜっ》


「ヒューイくん凄いわね」

「この豪雨轟風の中を飛べるのかあ」

「竜馬が五匹いれば、どんなレースでも勝てるな」

「そんな騎士学校みたいな事はしない」


 私は艇長席から跳び降りた。


「チームを下ろしてくる」

「わかったわ、私は蒼穹の覇者号で麓に行って、王家の人をピックアップしてくるね」

「お願いね、カロル」


 いやあ、操縦者が複数いると助かるな。

 エルマーも、僕もやるぜという感じに笑って手を振った。


 私は船内を駆けて後部貨物室に急いだ。

 ラウンジから騎乗部部員たちが降りて来た。


「待機場所に騎獣を移動させるわ」

「すげえ嵐だなあ、レースがやれたら面白いぜ」

「軍馬が役に立つのがいいよな」

「古式テイムで人馬一体で、がんばるよ」


 騎乗部員と共に後部貨物室に入る。

 ハッチが開いて風が吹き込んできて、軍馬が暴れたがすぐ大人しくなった。

 外にはヒューイが居て、早く来いよという感じの表情を浮かべていた。

 本当にもう、はりきってんなあ。


 後部ハッチから、待機場所まで障壁を張って、騎獣達を移動させた。

 蒼穹の覇者号から、カーチス兄ちゃんとロイドちゃんがでてきて、嵐の呼吸をついて観客席に飛びこんだ。

 あの二人は山頂で何かするのね。

 ラウンジと、船室はゆりゆり先輩が手配してくれるだろう。


「おお、聖女さん、障壁の通路いいですな、こいつは恒常的においとくのですか?」


 ティエリー工兵隊長が話しかけてきた。


「蒼穹の覇者号が出たら壊すよ、邪魔だし」

「それはいいですね、うんうん、観客席、ステージも良い感じですよ。雨が降り込まないのがありがたいです」

「ご期待に添えたら嬉しいですよ」


 私はティエリー隊長と笑い合った。


 蒼穹の覇者号がファンファンとプロペラを回し麓に向けて飛行して行った。


 王立魔法学園騎乗部は規定の待合室に騎獣たちをおさめた。

 よし、障壁の中は風があまり吹かず、雨はまったく入らないね。

 快適快適。


「助かるなあ、あ、飼い葉ありがとうございます」


 工兵さんたちが、軍馬用の飼い葉を持って来てくれた。

 パスカル部長は鞄から魚を出してケルピーに与えていた。

 私も収納袋からヒューイ用のお肉を出して食べさせた。


《美味い美味い》


 雨脚が少し弱まったかな。

 嵐の呼吸のような感じがあるね。

 風は相変わらず轟々と木々を弓のように曲げて渡っていた。


「軍馬なら、行けそうだな」


 嵐の感じを見ていたマヌエルがぽつりと言った。


「んだね、騎乗レースは騎士が難所を軍馬で走るのを競うレースだからね。やれそうだ」


 私はマヌエルと目を合わせ、悪い笑顔をお互いに浮かべた。

 うへへへ。

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― 新着の感想 ―
各学校への軍事教練の側面もあるだろうから「ペガサスが飛べないので悪天候で中止しましょう」とか軟弱なこと言い出したら軍部から突き上げ来るだろうからやめられないよなあ。 「うむ、やはり軍馬は質実剛健に限る…
竜馬を五頭揃えるのは無理だろうけどワイバーンでなら五頭揃えられるかな?そして五頭揃うと必ず悪天候になったりして。 雨の山道じゃ軍馬でも大変だろう、竜馬とケルピーの独壇場かな?ペガサスは翼が重りになって…
ペガサスライダーズは年貢の納め時ですかねー。 いやはや残念ですなー、ハゲが団長じゃなければ古式テイムワンチャン教えて貰えたかもしれないのにね。
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