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第134話 学園に帰って集会室でのんびりする

 馬車はキャンベル邸を出て、一路学園に向かっているよ。


「なんとも素晴らしい物を見せてもらったよ、領袖」

「いやあ、別に、普通の司祭の務めですから」


 隣の席のジョンおじさんに褒められて照れる。


「あんなに女神様の魔力を感じる昇天の儀は初めて見たよ。素晴らしかった」

「……女神さまを、身近に感じた……」


 そうだね、一般の人はあまり女神様を身近には感じないのだよね。

 わたしでも、たまに気配を感じるぐらいだからなあ。


 なんか、女神さまの力って、地下から来るのよね。

 一般の人のイメージは天から降る感じだろうけど、力は地の底から湧いてくる。

 地母神のイメージなのかねえ。

 温泉イメージでもある。

 女神は温泉なのかもしれぬ。


「アリスの転生はどれくらいになりますかー、聖女さまー」

「一年後ぐらいかな」


 ジュリエット嬢が、アリスの抜け殻の人形を抱きながら言った。


「時間が掛かりますねー、アリスがどこに転生するか教えてもらえませんかー」

「魂追跡魔法は魔力消費が激しいから駄目だよ。今回は特別っぽい」

「そうなんだー、ちえー」


 ジュリエット嬢は口をとがらせた。

 あんまり死んだ人の転生先を調べるのは気がすすまないなあ。

 みんな知りたいだろうから、調査に忙殺されそうな気がする。

 一律に出来ないと言った方が良さそうだよ。

 なんか、ずるっぽい感じもするしね。


「ちいさい子供が愛する人の転生したものかも知れないと考えて、やさしくする、のが良いと思うよ」

「うん、それはとても良いね」


 ロイドちゃんがうなずいた。

 実際に聖心教の年寄りが子供に優しいのは、そういう考え方が底にある気がする。


 窓の外を見ると、聖騎士団の大きな馬車が大神殿への道へ曲がっていく所だった。

 御者をしているリンダさんに手を振ると、笑って振りかえしてくれた。


 生まれて初めての異端審問だったけど、上手く行ってよかったな。

 リンダさんが暴れるような事態にならなくて幸いだ。


 我々の乗る馬車は学園に着いた。

 馬車溜まりに駐車する。


 どやどやと馬車を降りると、ジョンおじさんが降りてこない。


「では、マコトくん、また明日ね」

「はい、ジョンおじさんについてきてもらって助かりました。ありがとうございます」

「なんのなんの、私でよければ、なんでもするから気軽に頼んでくれたまえよ」


 そう言って、ジョンおじさんは馬車のドアを閉めた。

 魔法塔方面へ馬車は走り去る。

 ジョンおじさんと知り合って良かったなあ、いろいろ助かる。


「……僕は、魔術部に行くよ……、また……」

「エルマーもありがとうね」

「……なんでもないよ」


 そう言って、エルマーは微笑むと部活棟へ向かって歩いていった。

 さて、私は何をしようかね。


 集会棟へ向かって歩き出す私の後ろを、ロイドちゃんとジュリエット嬢がついてくる。


「なんだよう」

「派閥の集会室へ行くんだろ、僕らもいくよ」

「そうですわそうですわ」


 いつの間にか息ぴったりになってやがるなあ。

 まあ、いいか。


 集会室へ行くと、コリンナちゃんがテーブルで勉強をしていて、こちらを見ると眉を上げた。


「おかえりー」

「ただいま、コリンナちゃん」

「ジュリエット、彼女がコリンナさんだ、凄い文官なんだよ」

「そうなんですかー、初めましてー、ジュリエットですー、キャンベル家の娘ですわー」

「これはこれは、初めまして、コリンナ・ケーベロスです」


 コリンナちゃんは立ち上がってジュリエット嬢に頭を下げた。


 あー、勉強会もやらないとなあ。

 中間試験は歓迎ダンスパーティの後だけど、すぐ来そうだ。


 チャラ男のロイドちゃんも一見地味な娘に見えるコリンナちゃんには興味が無いようだ。

 彼女が、メガネとかを変えて、美少女だとばれると、チャラ男にコナ掛けられそうだから、今のままが良いね。


「とても居心地が良いお部屋ですねー、ちょくちょく寄って良いですか-」

「派閥に入ったから、問題は無いですよ」

「僕も僕もー」

「ロイド王子はちょっと遠慮しなさいよ」

「えーっ」


 まったく、派閥外の人間なのに煩わしいわね、ロイドちゃんは。


「聖女様派閥で、ダンスパーティに出るんですねー、私も出ます-」

「エスコートはロイド王子ですか」

「そうだよー、僕がエスコートするよ」

「嬉しいー、ロイドさま、好き好き~」


 ああもう、いちゃいちゃすんなっ。

 黒板の参加者の欄に、ジュリエット嬢の名前を書き足す。


 壁の鳩時計が、ポッペイポッペイポッペイと三回鳴いた。

 三時か。

 そして、誰が持ってきた、鳩時計。


「カロルがもってきたよ、鳩時計」

「そうなんだ、可愛いね」

「素敵ですわー」


 三時だし、お茶を飲もうかな。


「ダルシー」

「はい、マコトさま」

「お茶を入れてください」

「かしこまりました」


 ダルシーの入れてくれたお茶は、まあまあだった。

 なかなか上手にならないけど、そのうち腕もあがるでしょう。


 開け放った窓から、春の風が入ってきて、白いカーテンを揺らした。

 ああ、こういうのんびりした時間はいいねえ。

 のんびり。

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