第1359話 学園に戻って聖女の湯に入る
王都に入り、カロルは大神殿の練兵場に蒼穹の覇者号を降ろした。
ドヤドヤと孤児達が飛空艇から下りていく。
「マコねえちゃん、またねー」
「今日は合羽をありがとうー」
「またねえまたねえ」
アダベルが下りないな。
「アダベルは乗ってくの?」
「うむ、女子寮の大浴場でお風呂を借りて帰る」
「そうなの」
カロルは蒼穹の覇者号を離陸させて学園を飛び越し、渓谷のビアンカ邸基地の着陸棚に下りて行った。
そのまま、カロルは格納庫のトンネルをバックして行く。
後の壁に映像が投影されるので、バックもしやすいね。
格納庫のチェックマークの上にカロルは蒼穹の覇者号を着陸させた。
私とカロルとアダベルは船を下りた。
そのまま地下道を通って女子寮に入った。
大浴場はすいていた。
脱衣所で服を脱いで浴室へ入る。
おっと、お洒落組とヒルダさんが浴室に入っていたぞ。
「あ、お帰りなさいマコトさま」
「お帰りなさいませ」
「合羽は良い物買えましたか、領袖」
「買ったよ、孤児達もみんな」
私はダルシーから聖女の湯の素を受け取り、お風呂に入れた。
ふわりとハーブの良い匂いがする。
私はかけ湯をして湯船に入った。
「おー、聖女の湯は効くなあ」
「肌がスベスベになりますわ」
「良い匂いですわ」
お湯が白濁して、ぼこりとマメちゃんが影から浮上して水面に出て来た。
「おお、マメちゃん」
「わんわん」
マメちゃんがバババババとお湯を巻き上げて泳ぎ始めた。
メリッサさんもマリリンも、キャッキャと笑った。
「メリッサさんとマリリンは合羽を買ったの?」
「雨具は遠足用に買いましたわ」
「私もそうですわ」
あ、そうかプートリー山遠足に雨具は必要だったね。
私も持ってたから新しい合羽もいらなかったか。
でもまあ、オルブライト製の合羽の方が性能が良さそうだからいいけどね。
洗い場に出て、ダルシーに体と髪を洗ってもらう。
いつもながら官能的でうっとりしちゃうなあ。
まめちゃんが私の近くで体をブルブル振って水気を飛ばして影に入った。
んもう。
また湯船に浸かって暖まる。
やっぱり聖女の湯はいいなあ。
「明後日のレースが楽しみですわ」
「派閥員は船で観戦して構いませんか?」
「ええ、良いわよ、メイン操縦室と二等船室を使ってね」
「一等は王族ですか」
「そうね、王族とグレーテ王女と飛空艇令嬢が居るから。まあ、多分ラウンジに居るだろうから念の為だけどね」
「かしこまりました」
やっぱりヒルダさんに話を通すと安心だな。
しかし、大嵐だと、甲板席が使えないので困るな。
……。
バリア張ってあると使えるのか?
でも大嵐の日にバリアあっても野外ではなあ。
ワイルド過ぎるよ。
「やっぱ聖女の湯も良いなあ、邸宅の温泉も良いけど」
「地獄谷にはあまり行かないの、アダベル?」
「ちょっと遠いから、たまに探検な感じで行く。ロイクのおっちゃんがお菓子出してくれるから良いんだ」
なんか、アダベルの良い人はお菓子をくれる人だよなあ。
トール王子もティルダ王女も、村に馴染んで、毎日冒険に繰り出しているようだ。
山一つが領地だから、意外に遊びがいが有るっぽいね。
「秋にはヤマナシとか、山リンゴとか採れるってさ」
「秋はいいね」
湯船を出て、脱衣所でダルシーにタオルで拭いてもらう。
下着を履いてさっぱりする。
ドライヤーを掛けてもらって髪の毛ふわふわであるな。
制服に着替えて、大浴場を出る。
まだ風呂待ちの生徒は居ないようだ。
混むのは晩餐前の夕方と晩餐後の夜間かな。
大浴場前の廊下で、コリンナちゃんとジュリエットさんとすれ違った。
「聖女の湯の素、入れた?」
「入れたよ、すいてるよ」
「それは急ぎませんと」
二人は仲良く大浴場に入って行った。
「そいじゃ、またな、マコト」
「またね、アダベル」
アダベルは玄関から外に出て行った。
学園長の邸宅に戻るのだろう。
さて、ちょっと時間があいたな。
「私はちょっと、図書館行ってくるよ」
「私も行くわ」
「じゃあ、一緒に行こうカロル、じゃあ、また晩餐で」
「「はい、マコトさま」」
「晩餐でお待ちしております、領袖」
私たちは地下道に入って、図書館を目指した。
地上に上がらないで行けるのは良いね。
地下書庫から螺旋階段を上って一階へ、その後階段を上がると貸し出しカウンターだ。
いつも通りルカッちがカウンターの向こうで本を読んでいる。
「いらっしゃい、なんかお探しか」
「先史超魔導時代の飛空戦艦の本は無い?」
「そんな稀覯本は無いなあ。先史超魔導文明の研究自体があまり進んでいないからねえ」
くそう、ポンコツ戦艦の弱点とか探そうと思ったのに。
「まずは『先史超魔導文明の歴史』って本でアウトラインを掴んで、『古代の空中戦艦』って本でも読むんだね」
「ありがとう、ルカっち」
やっぱ、本に関してはルカッちだなあ。
カロルは錬金の専門書の場所を聞いている。
私は歴史のコーナーに行って、ルカッちが言った二冊の本を手に取った。
というか、あんまり当てにならないんだろうなあ。
なにしろ、先史超魔導文明は謎が多いから。
とりあえず二冊貸し出して貰った。
バカンスが終わるまでに読み終わろう。
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