第1358話 みんなでオルブライト商会へ合羽を買いにいく
子供達を連れて大神殿を後にする。
なんだかみんなヒューイに乗りたがって凄い混みようで、私が鞍から下りた。
「なんだかみんなヒューイ君好きよね」
「歩くのがだるいんでしょ」
「正解正解」
ヒューイの鞍の上で、マメちゃんを抱いたアダベルがそう言った。
ヒューイの上は、子供が鈴なりで、ガラリアさんと一緒に警戒して歩く。
「帰りは蒼穹の覇者号で送っていくわ」
「助かる、なんとかみんな入ったけど、キツキツだった」
まあ障壁で補強してあるから、そう簡単に分解はしないでしょうけど、大型の籠を作った方が良いのかな。
だけど、今の籠でもアダベルが飛ぶのに結構邪魔そうだしなあ。
難しい所であるね。
さて、子供達が車道にこぼれ落ちないようにして、中央通りを通ってオルブライト商会へと向かった。
というか、西の商業地区なので、結構遠い。
子供達を乗り合い馬車に乗せて、私とカロルがヒューイに乗って付いていくことにした。
「馬車、乗合馬車っ」
「馬車大好き~!」
「わあ、王都の乗り合い、初めて乗るよ」
「おとなしく乗りなさいよ」
「「「「はーい」」」」
お返事は良いのだが、子供だから騒ぐ騒ぐ。
まあ、乗合馬車に乗っているのは庶民のおばちゃんおじちゃんなので、あまり嫌な顔をしなかった。
乗合馬車を追いかけて、王都の西、商業地区へとやってきた。
薬問屋街の一角にオルブライト商会はある。
地獄谷の硫黄を扱う、サーリネン商会もあるけど、まあ、今日は用事は無いな。
「ああ、お嬢様、聖女さま、いらっしゃいませ。わあ、これは沢山の小さなお客様ですな」
王都支部のバジルさんが子供達を見て声を上げた。
意外に子供好きっぽいね。
「雨合羽を買いに来たわ。子供用もあるかしら」
「子供用はありませんが、女性用が使えそうですな。丁度人数分ぐらいは在庫がございます」
「そう、それは良かったわ」
子供を商会内に入れた。
薬とか並んでるから悪戯すんなよ。
番頭のバジルさんが出して来たのは黄色いポンチョ型の雨合羽であった。
子供達がぎゃっぎゃと言いながら試着している。
意外に似合うね。
デザインはあまり種類が無いが、思っているより安かった。
「雨天作業用だからね、頑丈で安いのよ」
私は雨ポンチョと頭に鍔広雨帽子を被った。
黄色いから目立ちそうだね。
カロルがバジルさんにお金を払っていた。
「ああ、良いよ、派閥から……、あ」
コリンナちゃんはどこ行った?
「コリンナはジェラルドさまと百貨店よ」
「あっちに行ったのか」
「ここは立て替えておいて、後で精算するわよ」
「ありがとう、カロル」
「どういたしまして」
子供達は雨ポンチョを着て嬉しそうだ。
まあ、こいつらは蒼穹の覇者号のメイン操縦室にいて雨には降られないと思うけど、一応ね。
商業地区の中心に公園みたいな広場があったので、蒼穹の覇者号を呼んだ。
ちびっ子たちはみんな黄色い雨具を着て可愛いけど目立つなあ。
ちょっと待っていると蒼穹の覇者号が空から降りて来てタラップが展開された。
怪しい雨具軍団は飛空艇に乗り込んだ。
ヒューイたちは、後部ハッチから勝手に貨物室に入った。
手間いらずだなあ。
艇長席によいしょとよじ登って椅子に引っかけてあった船長帽をかぶる。
となりでカロルも船長帽をかぶった。
「今日は私が飛ばすわ、ホルボス村ね」
「おねがいね、ホルボス基地に入れましょう」
「解ったわ」
せっかく邸宅に行くから温泉に入りたい所だけど、今日は月曜日で聖女の湯の日だから、子供達を置いてから学園で入ろうと思う。
蒼穹の覇者号はふわりと宙に浮き上がり、高度を上げてホルボス村を目指して飛び始めた。
合羽の子供達は、メイン操縦室の床でゴロゴロしていた。
なんで子供はすぐ床で寝転ぶかなあ。
カロルはスイッと渓谷に入り、飛空艇をホルボス基地に滑り込ませた。
なんだか、上手くなってる~~。
艇長として負けていられませんなっ。
基地内にカロルはするりと飛空艇を駐めた。
上手いなあ。
さて、トール王子とティルダ王女、村の三馬鹿とガラリアさんとはここでお別れである。
「今日はありがとうございました」
「合羽大事にする~~」
「楽しかった~~」
「水曜日のレース楽しみですよう」
「合羽着て行きますよ」
なぜだがガラリアさんも合羽を着ていた。
意外に似合う。
「水曜日はギューギュー詰めでプートリー山に行くからなー」
「へいっ、アダベル親分っ」
「ぎゅうぎゅうの籠も、結構好き-」
「狭くて大変だけど、なんか良いよね」
トール王子とティルダ王女、村の三馬鹿とガラリアさんに別れを告げて、メイン操縦室へと戻った。
「次は大神殿ね」
「そうそう、その後は学園でお風呂」
「わかったわ、エイダさん、魔導カタパルトを使います」
【了解です、魔導カタパルト、発射シーケンスを開始します】
いつものように、魔導カタパルトで蒼穹の覇者号は王都方面に撃ち出されて飛んだ。
さて、帰ろうか。
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