第1357話 あちこちに嵐の予報を伝える
ヒューイをタッタカ走らせて、学園の中に入り、厩舎まで行った。
厩舎前では、パスカル部長とマヌエル、そして騎乗部部員がいた。
「水曜日は大嵐になりそう、合羽とゴーグルを準備」
「「「「まじ?」」」」
「この時期に大嵐は来ないはずだが」
「色々な理由で大嵐が起こるわけよ、ペガサスぶっとばせるぐらいのやつ」
パスカル部長とマヌエルが吹き出した。
「聖女さん、仕込みおったな」
「悪い聖女だなあ」
「ちがうちがう、私は手を下してない、積極的に大嵐を退治してないだけだよ、けけけ」
「そうかそうか」
「そうかそうか」
みんなが悪い笑顔で笑った。
「合羽とゴーグルか、この時期に大嵐は無いから降られるところだった、ありがとうよ」
「あと、手分けして、農学校と神学校、師範学校に知らせて来て」
「おお、スポーツマンシップだな……、騎士学校は?」
「言ってもあいつら本気にしないでしょう」
「あ、じゃあ、俺が伝えて来るよ、なるべくおどおどしてさあ」
太っちょの選手が笑いを含んでそう言った。
「伝えたけど本気にしなかった、は良いな」
「それだ」
「農学校は俺が行こう、聖女さん、神学校に行ってくれるか」
「良いわよ、部員は合羽とゴーグルはあるの?」
「ああ、梅雨にレースしたりするからな、一応みんなもってるぜ」
「俺持ってねえな、買ってくるか」
マヌエルがつぶやいた。
「大神殿で孤児達とアダベルが雨具をオルブライト商会に買い出しに行くから一緒に行けば? 多分安いよ」
「ああ、派閥員にオルブライト家のお嬢ちゃんがいたな、そりゃいいや」
「私も神学校に一報してから大神殿に行くから、合流しましょう」
「ああ、解った」
「オルブライト商会の物だと、本式のスライム樹脂布の合羽だな、性能が良さそうだ」
「合羽が欲しい人がいたら、マヌエルに付いて行ってね」
「わかった」
さて、神学校に行くかな。
なにげに忙しいな私は。
校門から外に出て、ヒューイを空に羽ばたかせる。
神学校は王都の西側、下町にあるんだよ。
空から行けばすぐそこだね。
ひらりと神学校の校庭に着陸すると、スレイプニルがドドドとやってきた。
「聖女さま、いらっしゃい、どうしました? 試合前の陣中見舞いですか」
私はゴーグルを上にあげて騎乗部部長に微笑んだ。
「水曜日、大嵐が来るよ、ペガサスが吹っ飛ぶような」
「おおおおおっ」
「だから地上の騎獣が有利だと思う。大雨と大風が吹くから合羽とゴーグルを用意しておきなさいよ」
「それは素晴らしい情報をありがとうございます」
「農学校、師範学校にも一報しているのよ」
「水曜日が楽しみですねっ、騎士学校には?」
「一人行ってるけど、あいつらは本気にしないでしょうね」
「そうですな、ふふふ、そうですな」
「じゃあ、水曜日、お互い頑張りましょう。スレイプニルが相当有利になるわね」
「ですな、でも、軍馬も悪天候や悪路に強いので、楽しいレースになりそうですね」
神学校の騎乗部部長は満面の笑みを浮かべた。
そいじゃなあ。
私とヒューイは再び空に舞い上がった。
山頂の観覧席も障壁で補強しないとなあ。
只の枠では、お客さんがずぶ濡れになるぞ。
ヒューイの頭をめぐらせて大神殿に向かう。
マメちゃんが影から顔だけ出して外を見ていた。
大神殿の大階段前に着陸すると、寺男のアンドレとルイゾンが挨拶をしてきた。
「聖女さん、ヒューイ、おかえんなさいー」
「おかえんなさーい」
「ただいま、アダベル達は帰ってきた?」
「まだですな、オルブライトのお嬢さんは来て、女神像あたりに居ましたぜ」
「ありがと」
ヒューイで回廊に乗り込んだ。
巡礼のお客さんが私とヒューイを見つけて拝む。
やあやあ、大神殿を楽しんで行ってね。
巡礼のお客さんにとっては一生に一度の大神殿参拝であったりするので、無下にはできないね。
お金持ちは毎年とか巡礼してくるけど、一般庶民の人は長年貯金して、えいやと思い切って王都に来て、大神殿に泊まるからなあ。
カロルが突き当たりの女神像の前で跪いてお祈りをしていた。
私もヒューイを下りてお祈りをする。
――愚かなハゲに天罰を。
「あら、マコト」
「私も合羽欲しいから、あと、マヌエルも欲しいって」
「わかったわ」
バッサバッサとドラゴンアダベルが羽ばたいて練兵場に下りてきた。
お、来た来た。
練兵場に下りると、籠からワラワラと子供が山ほど出て来た。
良く入ったなあ。
ボワンと煙を出して、アダベルが子供モードになった。
「マコト、カロル、ヒューイ」
アダベルと一緒に孤児達が、トール王子とティルダ王女が、村の三馬鹿が駆けてきた。
あと、ガラリアさんもなんだか一緒だった。
「良く入れましたね、ガラリアさん」
「す、すごくぱんぱんでした……」
帰りは蒼穹の覇者号で送ってあげた方がよさそうね。
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