第1355話 自然公園でパンランチ
校舎で派閥員を拾いながら玄関から外に出ると、ヘビ三郎を首に巻いたヒューイが待ち構えていた。
《さあ、行こう》
「ヒューイは便利だねえ。あとヘビ三郎気に入ってるの?」
《スベスベしているからな》
そうか。
まあ、ライ一郎とヤギ次郎は邪魔くさいからな。
コリンヌさんもだが。
ヘビ三郎が首をもたげて、こんちゃって感じに頭を下げた。
みんなでひよこ堂まで歩く。
私だけヒューイに乗っていて、なんかすまんね。
「お、ヒューイ号、また来たのかあ」
《来たぞ、クリフ兄》
ヒューイの念話はクリフ兄ちゃんには通じないけど、良く来た良く来たとタテガミを撫でていた。
さて、今日は何を食べようかな。
聖女パンとハム卵サンドかな。
父ちゃんに取ってもらってソーダと一緒に亜麻布袋に入れて貰った。
カロルは、聖女パンとベーコンサンド、コリンナちゃんは聖女パンとシュガードーナツであった。
わりとみんなおきに入りのパンが決まってきたね。
みんなでひよこマークの付いた亜麻布袋をぶらぶらさせて、自然公園まで歩いた。
カロルが収納袋から敷布を出してくれて、さらにタープを張り始めた。
コリンナちゃんと、私でタープを張る手伝いをした。
直射日光の下だと暑いからね。
完成~~!
まあ、障壁に色替えして張れば良いじゃんという意見もあるだろうが、タープというものは布の天井だから良いのだ。
うん。
敷布に座ってひよこ堂のパンをぱくつく。
美味い美味い。
やっぱ実家のパンが心に染み入るねえ。
うまうま。
「とりあえず、水曜日は早朝から蒼穹の覇者号を動かしてもらえないだろうか」
「まあ、いいよ」
「とりあえず、プートリー山の麓の馬車溜まりに白銀の城号、そしてアライドの飛空艇を停泊させて、山頂までは蒼穹の覇者号でピストン輸送だ」
「朝早くから悪いね、キンボールさん、レースにも出るのに」
「まあ、偉いさんの世話をしとかないと、レースも中止になって、パスカル部長とかがっかりするからなあ」
「レース開始、一時間前までには解放するから、たのむ」
「問題無いよ。というか、王様とか、蒼穹の覇者号内でレースが見たいとか言い出さないか?」
「う、それは」
「父上は言いそうだなあ」
「快適な船だからなあ」
まあ、ラウンジに居て貰うなら問題無いかもな。
子供達が来たらメイン操縦室に入れておけば良いし。
派閥員もメイン操縦室かな。
上空を青白い影が横切った。
私はタープから出て、アダベルに向けて手を振った。
彼女は行きすぎてから戻って来て公園の芝生に着陸した。
孤児達が籠から下りてきて、ぼわんと煙が立ってアダベルがやってきた。
「なんだなんだ、用か用か」
そして自然な動作で私の手から聖女パンをかっぱらって食べた。
「アダベル、あんた、水曜日はレース見にくるの?」
「行く行く」
「私たちも行く~~」
「レース見るー」
「ヒューイ頑張れ-」
《がんばるぞ》
「じゃあ、アダベルは籠に子供を乗せてプートリー山まで行ってくれる?」
「ああ、良いよ……、あ、トールとティルダと、村の三人もか。開始は何時だっけか?」
「十時スタートだから、九時には入ってないと駄目よ」
「わあ、籠がパンパンになるよう」
「でも、しょうがないね」
「頑張って乗ろう」
「プートリー山山頂では、蒼穹の覇者号のメイン操縦室に居て良いから、ディスプレイあるからエイダさんが中継してくれるでしょう」
【ドローンを何機か飛ばして中継しますよ】
おお、それは特等席だなあ。
「あ、それは凄いな、蒼穹の覇者号が一番良い席になりそうだね」
「王家の人と、グレーテ王女、ペペロン、あと飛空艇令嬢と貴方たちが使ったら丁度良いぐらいじゃない?」
「VIP席だな、うん、それは良い」
アダベルがちょっと渋い顔をした。
「あー、だけどさ、水曜日天気が悪いぜ」
「え、なんで?」
【典型的な初夏の気圧配置で荒れる兆候はありませんが】
「ドラゴン関係の噂でなあ、イエローワイバーン達がマコトの晴れ姿を一目見たいと、ちょっと遠くで見てるらしいんだ」
「そうなんだ」
わりと奥ゆかしいのだな、山頂に来ても良いのに。
「でもってドラゴン連絡網で、ワイバーンたちも、噂の聖女さまを一目と、一山離れた山から見てるそうなんだ」
「おお、キンボールはワイバーンに人気があるんだな」
「王家の騎士と絆を結びたい亜竜は居ないのかね」
「みんな聖女が好きで、他の人間はあんま好きじゃ無いってさ」
「そうなんだ、で、なんで天気が崩れるの?」
「ワイバーンが集まると大気が不安定になって、大嵐になるぞ、明日の夜とか散らしておくか?」
なんですと!!
ワイバーンが集まると大嵐が起こるのか。
そういう不思議機能を持ったドラゴンなのか。
そうかそうか、ワイバーンはそういう奴だったんだな。
けけけけけけけ。
大嵐、テンペスト。
聖女候補はテンペスト大好き。
風よ吹き荒れよ、ペガサスどもを吹き飛ばせ。
どっどど どどうど どどうど どどう
勝機!!
「いやあ、ワイバーンさんも蹴散らすのは可哀想だよう、ほっといてあげなさいよう」
「? いやでも、レースが……」
「騎乗レースは軍馬のレースだから、雨が降っても風が吹いても中止は無いのよ。だから大丈夫大丈夫」
「そ、そうなの?」
「なるほど」
「なるほど」
王家主従も力強くうなずいた。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。
 




