第1353話 学園に戻ってお風呂に入る
テケテケとヒューイを王都に向けて走らせる。
飛んで行けば早いけど、まあ、今日は騎乗部の練習日だからね、みんなで一緒に帰ろう。
「レースはいつだっけ?」
「水曜日だよ、体調を整えておいてよ」
おお、水曜日か、平日にやるのかと思ったが、建国記念日で祝日であった。
《楽しみ》
「頑張りましょうね」
「わんわんっ」
影から首だけ出したマメちゃんが返事をした。
そうだね、マメちゃんも頑張ろう。
街道を王都を目指す私たち魔法学園騎乗部の上空をペガサスの群れが飛んだ。
なんか変な動きをして……。
ヒューン。
馬糞爆撃であった。
「あぶねえっ!!」
咄嗟に隊列の上に障壁を張った。
ベチャリ。
騎士学校騎乗部の屑たちはゲラゲラ笑いながら王都に向けて飛行していった。
……。
お前、それが騎士のやる事か……。
水曜日に死なす。
《死なそう》
「うおー、助かったぜ、聖女さん」
「ペガサス馬糞が直撃する所だった」
「空中でウンコできるんだなあ」
「馬は歩きながらウンコできるからなあ、ペガサスも飛びながらウンコできるんだろうよ」
「あれが騎士か、ふざけやがって」
障壁を斜めに傾けて、馬糞を谷側に落としたあとに消した。
危ないなあ。
私が聖女候補でなかったら馬糞まみれになる所だった。
リンダさんにチクって騎士学校にカチコミして貰おうかな。
一時間ぐらいタッタカ走らせると王都の東門が見えて来た。
各々、冒険者カードを示して街門をくぐる。
王都の石畳をシタシタと走らせて魔法学園校門に到着である。
さすがに陸の騎乗だと結構掛かるな。
「水曜日の朝は飛空艇で行く?」
「いいのかい聖女さん」
「どうせ派閥員の観客も運ぶし、たぶん現地では王族の控え室に使われるだろうし、良いわよ」
「うわあ、あの凄い飛空艇に乗れるのかあ」
「これは楽しみでござるなあ」
「げにげに」
へんな言葉遣いの奴がいるが、「げに」というのは古語で「真に」という事だ。
水曜日の早朝に厩舎前で騎乗部の部員と騎獣をピックアップして運ぼう。
ちょっとせまいけど、軍馬は貨物室、ヒューイは甲板で運べるでしょう。
厩舎までヒューイに乗っていって馬丁さんに手綱を渡した。
《ではまた》
「またね、ヒューイ」
「わんわんっ」
マメちゃんもさよならと言っているな。
「じゃあ、聖女さん、今日は勉強になった、なかなか良い感じじゃないか」
「相手がペガサス六騎じゃなければね」
「ま、まあ、あいつらはしょうが無いから、敵は神学校かな」
「農学校も良い人たちだったわね」
「師範学校も良い奴らだぜ」
ほう、それはレース当日が楽しみだなあ。
「そいじゃ、水曜日の早朝にね」
「あいよ、厩舎前で待ってるぜ」
私は女子寮に向けて歩き出した。
なんだか一日、ヒューイに跨がっていたので足がガニガニになっているなあ。
乙女としてどうなのか。
まあ、お風呂に入ってリラックスすれば治るかな。
女子寮の玄関から入って、階段を下りて地下階の大浴場へと入った。
日曜の午後だから、人は少なそうね。
服を脱いで籠にいれてロッカーに入れた。
鍵を手首に付けて浴室へ。
「あらあら、マコトさま」
「メリッサさまの勘が当たりましてよ」
「なによ、山を張ってたの」
「レースの練習をなさるなら、お帰りになるのはこれくらいでしょうね、と、思いましたの」
「当たりましたわ」
先に湯船に入っていたお洒落組の子と会話を交わしながらかけ湯をしてしずしずと入る。
「はああああっ、極楽極楽」
「おほほ、時々マコト様はお婆ちゃんのようですわね」
「そうですわー」
「ほっといてくれい」
ああ、やっぱりお風呂好きだわ。
普通の湯でも温まって良いねえ。
「騎乗レースはいつ開催ですの?」
「水曜日だって、二人も行く?」
「プートリー山ですわね」
「この前登った山ですわね」
「そう、結構登るの大変だから、派閥員は蒼穹の覇者号で送ろうかと思って」
「「いきますわっ!!」」
思いあまって二人は立ち上がった。
ザバリと波が来た。
「王家主従も行くだろうし、ついでだね。あ、アダベルとかも行くのかな」
「行きますわよ、アダベルさまは守護竜様ですから」
「そうですわそうですわ」
そうすると子供達も来そうだなあ、どうしようか。
明日でもアダベルと打ち合わせをしよう。
あと、王家主従にも。
王様もご観覧するから、白銀の城号も出すのか、そうすると、あの山に駐める場所はあるんだろうか。
飛空艇令嬢もアライドから来るんだよなあ。
やばい、飛空艇が混雑するな。
あと、ペペロンとグレーテとナージャも来るし。
まあ、あいつらはペペロンの影跳躍で来るから世話があまりないけどね。
しかし、狭いプートリー山の山頂が一杯になりそうだなあ。
大型船は麓に駐機させておいて、蒼穹の覇者号でピストン輸送すべきか。
というか、騎乗レースの開催主体はどこなんだろ?
王家か? 騎獣復旧委員会か?
ちょっと明日聞いてみようかな。
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