第1351話 プートリー山を騎乗部チームで登っていく
麓に取り付いて、騎乗部全員でプートリー山をトットコ登っていく。
おや?
「意外にみんな騎乗上手いね」
「いやあ、えへへ」
「マヌエルさんが古式テイムを教えてくださいまして、軍馬に掛けてみたんですよ」
「もう、僕とアイゼン号は人馬一体で、特殊能力はありませんが、前よりもずっと乗れるようになりましたよ」
マヌエルがふふんと笑った。
「驢馬がテイムできるんだ、軍馬もできるって寸法よ。意外と馬も頭がいいからな、人馬一体になると結構走れる感じだ」
「おー、これで優勝狙えるかなっ」
「それは無理」
「「「「無理無理」」」」
そうかよ、くそう。
パスカル部長のケルピーのジョガーが道を外れ、沢に落ちた。
うわっ、と思ったら、ジョガーは水面をダカダカダカと駆けてショートカットした。
「ここはショートカットに使えるな」
「中盤にもっと深い沢がありますよ、そっちの方が距離かせげそうですよ」
「そうか、そっちも試して見よう」
特殊騎馬は得意とする地形があるから楽しいね。
ちなみにヒューイは陸上一般と空だね。
《両用だ》
「偉い偉い」
私がヒューイの頭を撫でるとマメちゃんが影からでて、僕も撫でてという感じに吠えた。
なでなでなで。
「やっぱり、ヒューイ号は最後の登りを飛行でカットするかね」
「最後の登りって」
「あそこ」
パスカル部長が指さしたのはコリンナちゃんが絶望した斜度の高い坂だった。
そうか、飛行なら坂とかあまり関係ないのね。
神学校の六本足馬のスレイプニルが得意そうな地形だなあ。
ヒューイを駆って空に舞い上がり、最後の坂を飛び越すと、ゴール地点に騎士学校のペガサス隊が待ち構えていた。
「万年最下位の魔法学園のくせに現場練習なんて生意気だ、今日は俺達が貸し切りで使うんだ、出て行けっ!」
「あんたたち、この前も現場練習してたわね、意外に真面目?」
「え、あ、それは、まあ、そうだ、真面目に練習しないとな、ペガサスの御法は難しいしね」
騎士になろうって子だから真面目な生徒が多いのだろうなあ。
まったくハゲは害毒だぜ。
「敵にも練習時間を送ってこその騎士の正義でしょうに、王族に笑われるわよ」
「むむむ」
私はパスカル部長に振り返った。
「騎士学校が場所を譲ってくれるって、よかったわね、パスカル部長」
「あはは、ありがてえ」
「くそっ、竜馬が一匹居ようと、勝つのは騎士学校だからなっ」
「お互いがんばりましょうね」
とりあえず、ヒューイに乗って山頂を見て回った。
意外に広いね。
ここに観客席が出来て、王族とか賓客とかが座るんだな。
守護竜も座るとか言ってたな。
「聖女さん、スタートゲートはこっちだ」
「なるほど」
「なんだ、スタート走者は軍馬かよ、だせえなっ」
「なにスパイ行為してるのよ、騎士学校」
「見えてしまうからしょうが無いんです~」
めちゃむかつく。
金的を潰してもかまわないだろうか。
……。
まあ、やめておこう。
命拾いしたな。
第一走者は軍馬の部員さん。
坂を転げ下るようにして下りていく。
あ、やっぱりテイムの効果が出ていて、熟練の騎馬兵みたいな乗り方で結構早いね。
第二走者の部員も軍馬さん、標高も落ちて道も結構広くなって走りやすくなるか。
ここらへんだと、軍馬とかスレイプニルとかで差はつかないね。
まあ、ペガサスは空を飛んでるので、どこでも関係ないけどさ。
第三走者はパスカル部長だ、ここらへんにはちょうど深い沢が走っているのでケルピーでショートカットが出来る。
ここで結構タイムが詰められるね。
第四走者は折り返して軍馬さん。
アイゼン号の彼だね。
麓近くて道が広いのでタッタカ走れる。
第五走者も軍馬さん、ぽっちゃり型の彼だ。
山も険しくなってきているが、テイムが効いているのか器用に登るね。
そして、アンカーで第六走者が、私、マコト・キンボールであるな。
ぽっちゃり君からタスキを受け取ってヒューイを飛ばせる。
《全部、我が走れば速い》
「そういう競技じゃねえから」
《げせん》
バッサバッサと羽ばたいて頂上広場にヒューイは飛びこんだ。
うん、飛行は安定してるし、飛ぶのに邪魔な枝とかは特にないね。
騎士学校騎乗部は頂上に集まってひそひとなんかしゃべってやがる。
感じ悪いわね。
「くくく、聖女さまに、特別に俺達騎士学校騎乗部の実力を見せてやるぜ」
「なによー」
ペガサス六騎が山のあちこちに散った。
そしてスタート位置から第一走者のペガサスが飛ぶ。
うっはー、早いなあ。
飛んでるからなあ。
私たちのタイムの半分ぐらいで頂上まで戻ってきおった。
「騎乗をちょっとはやるようになったみたいだが、まだまだだな、おまえたち魔法学園は今年も最下位の席を温めるがいい」
「んにゃろーっ!」
このハゲが率いるズル軍団に一泡吹かせてやりたいが、何のアイデアも出ないなあ。
ずっと飛行はズルだってばよ。
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