第1349話 晩餐会に試験休みの夜は更けていく
さて晩餐であるよ。
皆でぞろぞろと食堂へと入り込む。
「クララ今日のお献立はなあに?」
「今日の下級貴族食はね、ビーフシチューとオニオンサラダ、カニコロッケに黒パンよ」
「おおっ! ビーフシチュー」
イルダさんが作るシチューは超絶美味しいからなあ。
楽しみだ。
カウンターでお料理を取ってトレイに乗せていく。
シチューのお皿は小さめだけど深くてなみなみとはいっているな。
うひひひ。
お茶をカップに注いでトレイをテーブルに持っていく。
ああ、良い匂いだなあ。
伝統的なブラウンソースビーフシチューだな。
皆がテーブルに揃ったので、食事のご挨拶。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
パクリ。
んーー、口の中でお肉がほどけてトロトロだなあ。
ジャガイモも人参も美味しい。
パクパクパク。
イルダさんのシチュー類は本当に匠の味って感じで素晴らしい。
一流レストランと遜色無いお料理が寮のご飯でたべられるなんてー。
うまうま。
黒パンの酸っぱさにも良く合うぞ。
うまうま。
「イルダさんのお料理はいつも美味しいわね」
「並の腕じゃないわよね、外に出てお店を出したら贔屓してしまいそうよ」
「ああ、この味のお店なら、接待に使えるわね」
上流階級の資格として、美味しいお店を沢山知っていて、接待に使える、というものがある。
まあ、家令などに食に詳しい者がいても良いんだけど、自分が味の良し悪しがわかって、一言蘊蓄をたれられると一目おかれるんだな。
「はあ、開店が待ちきれませんわ、アンドレア領として新酒を支援してしまいますわよ」
「あらあら、メリッサさまったら、まだ早うございますわよ」
メリッサさんは実家がワインの産地だから、将来食通になりそうだなあ。
マダムエドワルダとか、隠れた名店とかよく知ってそうだね、今度聞いて見よう。
貴族社会は、武力、魔法だけではなく、文化や生活なんかのゴージャス競争の面もあるからね。
貴族らしい見栄の張り方、気品ある自慢の仕方とかあるんだよ。
煌びやかなパーティや夜会、数々のロマンスを王都に刻んで貴族達は生活して死んで行くんだよな。
私はあまりの贅沢は嫌いだけど、美味しい物とか、綺麗な物とかは好きだなあ。
あまりやるとビアンカ二世の名前が鳴り響くからほどほどにしないとね。
というか、ビアンカさまは蘇生費や治療費を使い切れなかったからああいうとんまな使い方だったんじゃないかなあ。
教会に献金しても、あまりね、権威が天元突破しちゃうしなあ。
飛空艇と邸宅などに阿呆みたいな金をつかうのは、そのせいもあるのだろうなあ。
そんな事を考えていたら、晩餐を完食していた。
食器を返却口に持って行って、帰って来たら、ダルシーがお茶を入れてくれていた。
ありがとうね。
「マコトは明日はどうするの?」
「明日はプートリー山でレースの練習、通しで走るとか聞いたよ」
「あら、レースも近いのね」
「マコトの姉ちゃんの結婚式も近い」
コリンナちゃんの言う通りだ。
試験開けに怒濤のようにイベントが突っ込まれてくるな。
ちなみにお義兄様とお義姉様の結婚式は来週末だな。
わしら聖女派閥員は結婚式をお祝いしてから、ホルボス村の村祭りに出席、邸宅で一泊、そしてリシュエール諸島へと旅立つのだ。
なんだか慌ただしいね。
でも、それが夏って感じだな。
「カロルは明日暇だったの?」
「うん、そうだったけど、コリンナと買い物に行くわ」
「うぐぐ」
「それは楽しみ、カロル」
「マコトは忙しいからね」
くそーくそー。
レースなんか出るんじゃなかった。
ハゲをぎゃふんと言わせるよりもカロルとデートやろうがいっ。
カロルが私の頭に手を乗せてポンポンと叩いてきた。
「まあまあ、また機会はあるから、次の時にね」
「うん、まあ、その時に」
「騎獣レースも大がかりになりそうだな。各国のお偉いさんとか来るのか」
「アライドから飛空艇令嬢が来るね、あとジーンからグレーテ王女とペペロンが来るよ」
「ああ、ナージャも来るのか、見つからないようにしないと」
「見つかると思うけどね」
「うへえ、やだなあ」
まあ、わしらが、ビリケムさまの祝福を間違って与えてしまったからなあ、しかたあるまいよ。
ナージャは秋からのギュンターめの留学の護衛にアップルトンに来るはずだし。
コリンナちゃんは秋までにナージャと互角程度には鍛えておかないと死んでしまうね。
そして私は秋までにポンコツ魔導戦艦の攻略だ。
ああ、もう、色々面倒くさいなあっ。
お茶も飲み終わったので、食堂を出て、皆にお休みなさいの挨拶をして205号室へと帰還して寝た。
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