第1346話 甘味処西橋亭に行く
西橋亭は街の西側の大きな橋のたもとにあった。
しかし、水路が張り巡らされた街だから橋が多いね。
命令さんが、お店に入ると、従業員の表情がパッと明るくなった。
「あらあら、いらっしゃいませ、お嬢様」
「今日はお客様を沢山つれて来たわ、学園のお友達と大神殿孤児院の子供達よ」
「あらあら、いま個室の準備をいたしますね、少々お待ち下さいね」
さすがは領地だ、命令さんは愛されているなあ。
子供たちが店の前の水路をのぞき込んでいる。
落っこちないでね。
「魚いるー」
「ほらほら」
「フナですわね」
水路の水は透き通って、その中を魚が泳ぎ回っているね。
「釣りしちゃだめかな」
「水路は釣り禁止ですわ。街の東に釣り堀がありましてよ」
トール王子の問いかけに、命令さんが丁寧に答えた。
「わっ、おやつ食べたら行っていいですか、聖女さま」
「三十分ぐらいなら良いわよ」
「「「「やったあっ」」」」
村の三馬鹿とトール王子とアダベルが喜んだ。
まったく釣り天狗達だなあ。
個室の準備が出来たので、みんなで入る。
「ここの名物は何かしら?」
「木の実のケーキが人気がありましてよ。近隣の山で取れる木の実を使ったショートケーキですの」
「じゃあ、それを、あとお茶をください」
命令さんお勧めのケーキを頼んでみた。
子供達もメニューを見て色々迷ってるね。
カロルはイチゴのショートケーキ、コリンナちゃんはチョコロールケーキを頼んでいた。
この世界は乙女ゲームの世界だからお菓子類が充実しているんだよね。
ちゃんと美味しいケーキがあるので色々と捗る。
水車亭は落ち着いた雰囲気だったけど、西橋亭は明るくて家族向けっぽいね。
お、木の実のケーキとお茶が来た。
いただきまーす。
パクリ。
お、おおっ。
おおおおっ。
ナッツ類がごろごろ入ったショート系ケーキで確かに美味しいね。
こってりと甘いんだけど、お茶によく合う。
うん、ここは美味しいなあ。
「おいしいわね、マコト」
「このお店は当たりだわ」
「そうでしょうそうでしょう」
命令さんが誇らしげであるね。
子供達がぎゃあぎゃあと騒ぎながらケーキを食べ、お茶を飲んだ。
「子供達は良いですわね」
「ケリーさんは街の孤児院に慰問に行くんですって? 偉いわね」
「領主一族の勤めですから。今度、王都の大神殿孤児院と交流とかいかがですか?」
「良いわね、いつでも連れてらっしゃいな」
「ヒルムガルド孤児院の子供達もよろこびますわ」
うん、孤児院同士の交流は良い事だね。
孤児が楽しいし、良い事だね。
「マコト、釣り堀行ってくる」
「もう、行っちゃうの」
「魚が待っているのだ」
「三十分ほどしたら、丘の上公園に戻ってきなさいよ」
「わかったっ! 行くぞみんな」
「へい、アダベル親分!」
「行こう行こう、アダベル」
釣り天狗どもは釣り堀に向けて全力疾走していった。
「では、三十分ほど自由時間にします。ヒルムガルドを楽しんでください」
「「「「はーい」」」」
カロルとコリンナちゃんが寄ってきた。
「マコトはどうするの?」
「ヒューイとお散歩かな」
「つき合うよ」
「ありがとう、コリンナちゃん」
「私も行くわ」
「じゃあ、行こう」
マメちゃんが影から出て来て、早く行こうとばかりに先導してくれた。
店の前に繋いだヒューイの手綱を取って跨がる。
カロルとコリンナちゃんも手を引いて乗せた。
「お、重く無い?」
《主、程度の重さなら大丈夫》
「コリンナちゃんが三人乗っても余裕だってさ」
「そりゃすごいや」
ヒューイに乗って川の街ヒルムガルドを散歩する。
王都よりも標高が高いので、わりと涼しいね。
お洒落組はお土産屋さん巡り、剣術組は屋台で食べ歩いているな。
綺麗な街で、人々の表情も明るい。
命令父は嫌なハゲ頭だが領主としては一流のようだね。
良い街だなあ。
街の東側に釣り堀があって、柵越しにうちの釣り天狗どもが釣りをしてるのが見えた。
お、トール王子がマスを釣ったな。
楽しそうだね。
システムはどうなっているのかな。
釣った奴は貰えるのか。
「発展してるし、良い街だな」
「商工会議所に行く?」
「地味なお役所じゃないの、マコト」
「うんにゃ、市場と川港を合わせたみたいな施設だよ」
「それは面白そうね」
ヒューイを回頭させて商工会議所に向かう。
この前のように商工会議所の中に入り、川港を見て、裏手の市場を見た。
「おお、いろいろ売ってるなあ」
「面白い施設ね、川港で王都に向けて加速させる装置があるのね」
「ホルボス村にも作ろう」
「ホルボスは流通ルートに無いからなあ」
ここは流通の集積地だから意味がある施設だよね。
さて、三十分ほど経ったから丘の上公園に行こう。
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