第1340話 ロビーに居たら命令さんに捕まった
晩餐まで時間があるので玄関ロビーの応接セットに座ってリシュエール諸島のガイドブックを読んだ。
そうしたら何だか命令さんがロデムを連れて、うろうろうろうろしている。
こちらが顔を上げるとそっぽを向く。
なんだろうねえ、ヒルムガルドに行ったと知って難癖を付けに来たのかな。
「き、聞きましたわ、お父様に、ヒルムガルドに竜馬で行ったんですってね」
「ええ、一足先に試験休みに入ったので、ちょっと遠乗りでいきましたよ」
「い、言ってくれれば案内をしましたのに、そのっ、あなたの事は気にくわないですけれども、ロデムちゃんがお世話になったりしてますし、そのお礼として、ヒルムガルドの見所を案内して差し上げられましたのに、残念ですわ」
なんだろうなあ、デレなのか?
それとも伯爵に仲良くしろって言われたかな。
というか、やっぱりヒルムガルドは結構近い領地なので、命令父は気軽に王都にやってくるな。
「丘の上の展望公園と、商工会議所、あと水車亭にいきましたけど、良い街ですよね」
「そうなのよ、綺麗で発展していて良い街なのよ、聖女候補さんっ、次に行く予定とかはありませんの?」
「明日マーラー領に水着を取りに行く予定で、帰りに寄ろうかなって思ってますよ」
「あら、あらっ、水着ですの、良いわねえ」
あ、これは乗せてけっておねだりかな。
「一緒に乗って行きたいなら行きたいといいなさいよ、ケリー様」
ヒルダさんがいつに間にか隣に座っていた。
「わ、私はそんなこと言ってませんことよ、マーラーさま」
「乗りたそうにしてましたから」
「そ、それはその、ヒルムガルドまで行くには馬車で半日ほど掛かりますし、飛空艇に乗せていただけたら楽しいございましょうし、マーラー領でお買い物も楽しみですけれども、そんなおねだりなんて恥ずかしいですわ」
「「……」」
普通におねだりしてるよなあ。
「明日は、孤児とアダベルとトール王子とティルダ王女も一緒なんですよ。ヒルムガルドで子供が喜びそうな場所はありますか?」
「ありますわ、子供たちならばお洒落な水車亭よりも、甘味の西橋亭が人気ですわよ」
「では、案内してくれるなら、飛空艇で一緒に行きましょうよ」
「いいんですのっ!!」
まあ、なんか断れない感じだからな。
子供の喜ぶ所に案内してくれるなら、一緒に乗せて行くぐらいは良いだろう。
「明日ですわね、楽しみですわっ」
ご機嫌になった命令さんはロデムを連れて去っていった。
「まあ、喧嘩をするよりは、ある程度仲良くした方が利口かもしれませんね」
「ホルスト伯爵は有力貴族だからねえ」
流通都市の貴族は金を持っているので結構強いのだ。
あとは子供とアダベルが喧嘩しないかだよな。
つうか、命令父って子供に優しかったな。
命令さんはどうなのかね。
「少しは軟化しましたが、元がケリーですから、安心してはいけません」
「まあ、だんだん良い方向に行ってると信じたいね」
「そうですね」
ロビーの柱時計がボンボン鳴って六時になったので、エレベーターホールに行く。
みんな集まっていたので、引きつれて食堂に入る。
「クララ、今日のお献立は?」
「ポークカツレツとコールスローサラダ、コーンポタージュスープに黒パンよ」
おお、トンカツか。
これは景気が良いな。
さっそくお料理をお皿に取っていき、ケトルからカップにお茶を注いでテーブルに持っていく。
トンカツかー、トンカツかー、ツバメ食堂のカツ丼をまた食べたいなあ。
黒パンよりも、ご飯で食べたいね。
テーブルでみんなが揃うのを待つ。
まだかなまだかな。
揃ったのでお食事の挨拶だ。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
トンカツは、なんかデミグラス系のソースが掛かっているな。
ツバメ食堂の中濃ソースを買っておくべきだった。
パクリ。
あ、これはこれで美味しいな。
衣も良い感じに揚がっていて、豚肉も良い塩梅で柔らかい。
美味い美味い。
コールスローサラダもシャキシャキして美味しいね。
本当はトンカツには千切りキャベツなんだけどなあ。
付け合わせはジャガイモと人参のソテーである。
コーンポタージュスープも美味しいね。
うまうま。
「あ、シルビアさん、明日マーラー領に水着を取りに行くんだけど、一緒に行きません?」
「なん、だと?」
シルビアさんが隣のテーブルにいたので誘ってみた。
「良いのか? 朝からか?」
「朝から行きますよ、朝食時に集まりましょう」
「そうか、うむ、行くぞ行くぞ」
命令さんも行くのだから、シルビアさんも一緒に行こうですよ。
「明日はマーラー領ね」
「うん、子供達を積んで行かなくては」
「シルビアさまもお召し物を見ましょうよ」
「えー、あたしはあまり服にこだわりないからなあ」
さすがにメリッサさんとシルビアさんでは話が合わないっぽいな。
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