第1334話 お風呂で暖まって王都に帰る
パシャーン!
うけけけけ!
きゃっきゃっきゃ!
小さい子達とお風呂に入ると騒々しいけど、そういうのが良いよね。
アダベルも一緒になって暴れているけど。
邸宅の温泉は黒御影石か何かのどっしりと大きい湯船に掛け流しでとても良い感じ。
地獄谷に比べると硫黄感は弱いんだけど、あっちはちょっと強すぎて入るのに覚悟がいるんだよね。
こっちは良い塩梅の強さなので気楽に入れる。
《温泉は熱ければ熱いほど良い!》
昭和の爺さんかヒューイは。
ぐらぐら煮立った地獄谷温泉で奴はご満悦である。
《温泉いいなあ》
集会室で勉強しているコリンヌさんが念話を繋げてきた。
ヘビ三郎はお庭でお散歩中だ。
マメちゃんがばちゃばちゃ泳いで子供達に水を跳ねかけ黄色い悲鳴をあげさせていた。
洗い場に行くと、当然のような顔でダルシーが来て、無言で洗い始めた。
「あれ……」
「……」
「置いて行ってごめんね」
「いえ、空気のようになるのがメイドの里の教えですので、かまわないのでございます」
「次の遠乗りは呼ぶから」
「はい」
というか、王都からホルボス山に跳んできたのかな。
意外にダルシーの移動力も早いからね。
でもダルシーに洗われるのは嬉しいな。
気持ちが良い。
髪の毛をシャワシャワ洗って貰ってから、湯船で暖まりなおす。
ダルシーは続けて、マメちゃん、孤児たち、アダベルと洗っていった。
「やっぱり邸宅は温泉があるからいいよなあ」
「アダベルもお風呂好き?」
「この姿になれるようになって好きになったよ」
まあ、どでかいドラゴン形態での水浴びは場所を選びそうだしね。
お風呂から上がるとダルシーがバスタオルで体を拭いてドライヤーを掛けてくれた。
マメちゃんもドライヤーでふかふかになったぞ。
新しい下着を履いて、洗濯したての制服を着る。
ホカホカになった子供達とダイニングに行くと、ジェーンさんが冷たい牛乳を出してくれた。
「守護竜牧場のミルクですよ」
「おお、それはそれは」
カプリ、うん、これは濃厚だなあ。
美味しい。
アダベルはガブガブ飲んでおかわりを要求していた。
「もう王都に帰っちゃうんですか、聖女さま?」
「そうね、でも、明後日の土曜日にみんなでマーラー領に行って水着を取りに行きましょう」
「わあっ、本当ですかっ」
「いこういこうっ、マスを食べよう」
「もう、アダちゃんは食べる事ばっかり」
「試験も終わったからね、もうすぐ夏休みで、みんなで海にバカンスに行くよ」
「「「「わあいわあいっ」」」」
子供達はびょんびょん跳ね跳んで喜んだ。
うんうん、夏は子供達の思い出を沢山作る時期だからね。
みんなで色々と夏を楽しもうよ。
丁度良くヒューイが地獄谷から戻ってきた。
だが、すごく硫黄臭い。
「臭い」
《そうか?》
しょうが無いので池でダルシーと水をザバザバ掛けて洗った。
鞍を付けてヒューイに跨がった。
「ダルシー、乗って」
「はい」
庭の草むらからヘビ三郎がにょろにょろでてきて、ヒューイがくわえて首に巻き付かせた。
「あんたたちも早く帰りなさいよ」
「わかった、暗くなる前に帰るよ」
「またねー、マコ姉ちゃん」
「聖女さま、さよなら~」
「またね~」
ヒューイが空に舞い上がった。
後ろにダルシーが乗っているので暖かいな。
ホルボス山から王都まではひとっ飛びである。
本当に空を行く物なら近いんだよね。
馬車とかだと半日、馬を急がせても二時間ぐらい掛かる。
空軍と陸軍の速度の格差たるや。
ひゅわっと飛んで王都西門に着陸、門番の人に冒険者証を見せて通関する。
ダルシーも冒険者証あるんだよね。
シルバーで私より偉い。
再び舞い上がって裏の方から厩舎前に舞い降りる。
「おかえりー、ヘビサブローが居ないと思ったら連れて行ってたのか」
驢馬にのった美ショタ中年マヌエルがお出迎えである。
「ヘビからライオンまで世話してもらってごめんね」
「なあに、かえって勉強になるぜ。騎獣テイムは難易度高いからなあ」
コリンヌさんが校舎のほうからデデデと走ってきた。
「わ、私も水車亭でフルーツケーキとお茶のセットを食べたいですっ」
「土曜日にマーラー領行くから、帰りに寄ってお茶しようか」
「それは良いですねっ!」
コリンヌさんはマヌエルの手からヘビ三郎をひったくった。
クリームを貰って鱗のつや出しをしている。
「ヒューイの鱗も綺麗だが、ちょっと硫黄臭いな」
「今日は硫黄成分が特に強かったみたいで、これでも水で洗って薄まったのよ」
《硫黄は良い匂いだ》
「あはは、後で洗浄しとくよ」
「おねがいね、マヌエル」
実はマヌエルはヒューイの担当の馬丁じゃないのだけれど、割と気軽に世話を焼いてくれるね。
貴族のおボンボンの出なのに腰が軽くて良いな。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




