第1327話 勉強会は続くよ、三時まで
今日は水曜日だからな、聖女の湯の日だ。
三時頃に入れに行こう。
それまでは、せっせとお勉強である。
カリカリカリカリ。
明日の教科は、数学、魔術理論、錬金か。
お、時間割を見て思いだしたが、私の期末は明日で終わりだ。
金曜日は属性魔術の実習系試験だからね。
うひょひょ、一日早く試験抜けは嬉しいな。
「あ、にこやかになったと思ったら、マコトは明日で試験が終わりなのね、ずるいわ」
「光魔法のカリキュラムがないからね。一足お先にお休みだ」
「ずるい」
「ずるいですわ」
「ずるいみょんよー」
「うるさいわねっ」
《では明後日は遠乗りをしよう》
(そうだね、試験中はあまり構ってあげられてないし)
《遠くまで飛ぼう》
ヒューイも、すっかり飛行の虜だね。
《飛行は大変楽しい》
ヒューイに乗ると意外と遠くまで行けるね。
さすがにマーラー領は無理だが、ヒルムガルドぐらいだったら行けるな。
命令さんの実家だが、覗きに行っても良いかもね。
禿親父は嫌な顔をしそうだけど。
おっと、勉強をしよう。
カリカリカリカリ。
「クレイトン卿、ここはどういう処理なのだ」
「そこは魔力を裏で増幅している……」
ジェラルドがエルマーに勉強の事を聞いているな。
まあ、魔術理論は学園の中ではエルマーが一番詳しそうだよな。
エルマーは一流の魔導師だし、カロルは一流の錬金術師で、聖女派閥の魔導水準が高いなあ。
ジュリちゃんもエルマーに質問をしてノートに書き込みをしている。
家は死霊術師だけど、魔術系インテリの家だしね。
地頭はなかなか良さそうだ。
お勉強が難航しているのは、メリッサさん、マリリン、あとコリンヌさんだね。
コリンヌさんはひっきりなしにライアンくんに話しかけてしょっぱい顔をされていた。
「今日はカルテットは来ないの」
「試験中なので」
昨日来たじゃないか。
念のラインを繋いでみると、厩舎で三匹はのんびりしていた。
見られてると解って喜んでいるな。
のんびりしておれ。
ヒルダさんはキューちゃんを肩に乗せて真面目に勉強をしている。
理知的な感じだなあ。
まあ、お馬鹿な諜報系は居ないだろうからな。
オスカーも真面目に勉強をしているね。
ちらちらとカロルを見るのが気にくわないが。
A組でわりと成績も良いらしい。
まあ、みんなで勉強すると楽しいね。
ということで三時になったので、女性陣は入浴である。
男性陣はもうしばらく勉強をしていくらしい。
よしよし。
みなでぞろぞろと地下道を通って女子寮へと歩く。
女子で大浴場に行かないのは出禁のゆりゆり先輩だけだな。
うむうむ。
がらりと脱衣所の扉をあけて中に入ると、さすがは三時、誰も居ない。
ぱっぱと服を脱いで籠に入れ、マメちゃんを抱き上げて浴室に入る。
かけ湯をしてお湯の中に入り、ダルシーから聖女の湯の素を貰って入れる。
ふわっとフルーツみたいな匂いがして良いね。
白濁した湯を混ぜ合わせてから、マメちゃんをお湯につける。
なんだか君は日に日に重くなるね。
半年もすると抱き上げられなくなるかもね。
寂しいけど。
犬種は豆柴と思ったんだけど、本当はなんだろうね。
影の洞窟の影犬だから、柴犬では無いはずなんだよな。
柴犬にしか見えないけど。
飼い主の心配をよそに、マメちゃんは今日も犬かきで浴槽を泳いでいる。
時々コリンナちゃんとか、メリッサさんに捕まって可愛がられているね。
「しかし、もう一学期も終わりか、凄く長かったような、あっというまのような」
「もう五年も経ってるような気がするよ」
「それは言い過ぎだけど、まあ、色々と盛りだくさんだったからね。私も入学するまで、こんな学生生活を送るとは思わなかったよ。ずっと勉強してるんだろうなって思ってた」
「私もよ、コリンナ、ずっと授業を受けて、錬金作業して寝る三年間なんだろうなって思ってたわ。マコトのおかげね、ありがとう」
「いやあ、私もこんな事になるとはねえ。でも聖女派閥は楽しいし、作って良かったよ」
「そうですわ、そうですわ」
「ここは居心地の良い派閥ですわね」
カトレアさんがマメちゃんを捕まえようとしたら、急角度で曲がってコイシちゃんの方に行った。
「ああ、マメ、撫でさせてくれよう」
「カトレアしゃんは乱暴だから嫌いといってるみょんよ」
「そ、そんな事は無いぞ、ピッカリン愛犬愛撫術で天国に行かせてやるのに」
なんだ、その怪しい術は。
ヒルダさんが目を細めて笑っていた。
ちなみに、影フクロウのキューちゃんは、あまり入浴が好きではないので、脱衣所で待っているのだ。
ああでも、色んな人と知り合って充実した一学期であったなあ。
もうすぐ夏休み。
バカンスに、巡礼旅行に、いろいろと思い出を作るぞ~~!
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