第1326話 王家主従はコリンナちゃんを望む
「おまえらっ、試験の午後だってのに勉強すんのかっ!」
諸島料理店から学園に帰る道すがら、シルビアさんが素っ頓狂な声を出した。
「すんのかじゃないよ、試験は終わって無いけど?」
「勉強好きだなあ、おまえらっ」
というか、勉強の出来ない頭ピッカリンなシルビアさんというのはどうなのだろうか。
A組にいるだけカトレアさんの方が上等なのか。
「シルビアさんも勉強しないと落第したり、C組に飛ばされますよ」
「飛ばされねえよ、B組は成績無茶苦茶でも居られる。C組は授業も嫌ってる奴らの居場所だからな」
げ、C組ってそんな場所なのか。
ビビアンさまは大丈夫か、そんな場所に通って。
「そうですわね」
「そうでしたわ」
「社交を学ぶクラスなのですわ」
メリッサさん、マリリン、エルザさんが口を揃えた。
意外にC組出身者が居るな。
というか、エルザさんはそんなクラスからB組に入って良く順応できているな。
「B組に来て初めて皆様が復習しているのを見てびっくりしましたわ」
「C組の皆様は、お勉強を憎んでおられますからね」
もう、魔法学園に来ないでタウンハウスに居ろや。
お金も掛からないし。
A組、B組、C組で勉強に対する態度が違いすぎてクラクラするなあ。
まあ、学園としてはC組は金のなる木なんだろうなあ。
あそこで稼いで、真面目な教育はA組でやっているのであろう。
学園経営は良い商売っぽいね。
超名門だからなあ。
金で入れるけど。
「シルビアさんはこれからどうするのよ」
「護衛騎士団の道場で一汗かいて、寮に戻って飯食って寝る」
なんという豪傑生活なのか。
「未来の上司としていうけど、一応勉強はしとこうよ、シルビアさん」
「ええ、そうですか、ロイドさまあ」
「一応書類仕事とかもあるしね」
「が、がんばります」
警備騎士団は、前世でいうと警察だからなあ。
一応、法律知識とか、書類製作技能は要るだろう。
まあ、腕っ節も大事だけどね。
「それじゃ、あたしはこっちだから、またな」
シルビアさんは警備騎士団のある方へ曲がって行った。
「豪傑令嬢だ」
「豪傑ね」
「将来は彼女を部下にして使わねばならないのか……」
「腕は確かのようですぞ、ロイド王子」
ジェラルドがフォローを入れたが、ロイドちゃんが渋い顔になっているのは、腕っ節の心配ではないな。
色々な書類仕事で、すごい迷惑を掛けられそうだって顔だ。
我々は学園に入り、集会室へ入った。
「なんで王家主従がちゃっかり混ざっている」
「いやあ、王宮でジェラルドと二人だとねえ、さびしいんだ」
「やはりな、勉強もある程度の人数でやらないと盛りあがらないのだな、これは人間が基本的に群れの動物であるからだな」
「まったくもう、まあ、良いけど」
王城で二人で勉強だと、わりと気詰まりだろうしな。
あんまり聖女派閥に入り浸るとビビアンさまが切れそうであるがな。
「王家派閥も学生部を作って、いろいろ行事すればいいじゃないの」
「まあ、そうなのだがなあ」
「ジェラルドも僕もあまり行事の計画が好きではないんだよ」
そうか、幹事役がいないのか。
こっちだと、私とかカロルとかが何かを始めて、専門家チームのお洒落組とか、剣術組とかが協力して何かしてくれる感じか。
「ウイルキンソンとか、そういうの好きそうじゃない?」
「いやあ」
「いやあ」
「マコト、王家の人はどこかの御令嬢を寵愛すると、まあ、色々と問題があるのよ」
カロルが説明してくれた。
「あー、女子はだめかあ、男子に良い奴とか居ないの」
「いやあ」
「いやあ」
「マコト、男子の令息が王子の寵愛を受けると、それは将来の閣僚になると期待されるので、それもあまりな」
男子の事情はカーチス兄ちゃんが教えてくれた。
「二年になったら生徒会を組閣して、そこで将来の閣僚を見いだしたりする。なので、まあ、一年のうちはな」
「そうだ、二年になったら、コリンナくん、会計として入ってくれないか」
「ああ、それは良いですな、ケビン王子」
「いえ、その、あの、家柄が……」
「関係は無いよ、生徒会は家柄などではなくて、能力を見て選ぶつもりなんだ。コリンナくんが生徒会に入ってくれればオーガーに戦槌だよ」
鬼に金棒みたいな成語らしい。
カロルがコリンナの肩を抱いた。
「コリンナは聖女派閥の大事な幹部ですから、引き抜きはやめてください」
「ああ、惜しいなあ」
「コリンナくんは、その、どうなのだ?」
「あのその、ええと」
コリンナちゃんは困ってるな。
「二年になったら、また誘え!」
「う」
「う」
「今から、ぶっこぬくなよ。コリンナちゃんが欲しかったら、ちゃんと仲良くなって信頼を作れって」
「ま、まあ、キンボールのいうとおりだな」
「そうだね、二年になったら、また誘うよ、コリンナくん、考えておいてね」
「は、はい」
王家主従と生徒会入りだと、出世には良いけど、うっとうしいよね。
まあ、コリンナちゃんが生徒会に行きたいって言うなら止めないけどね。
それも、まあ、二年になってからだよね。
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