第1325話 諸島料理を食べる
シルビアさんが私たちを先導して連れてきたのは、魚市場であった。
「うちの領、ここに早舟で魚運んでんだよ、お、ここだここ」
「うわ、姫様、なんですか?」
なんか、市場の端にあるお店で、何ですかとか言われてるぞ。
大丈夫か。
「いや、友達つれてランチに来たんだよお」
「ああ、そうだったんですか」
「そんな毎度毎度船を強奪したりしねえよ」
「わ、みなさん、いらっしゃいませ、姫様のお友達ですか、サービスいたしますよ」
「にゃろう、あたしと扱いがちがうぞ」
「姫様の友達なんか貴重ですからね、サービスをしませんと、どうぞどうぞ、個室にしましょうね、わあ、沢山ですね……」
なんだかシルビアさんと気安い店員さんは、ケビン王子を見て酢を飲んだような顔になった。
「いや、私は似ているだけだよ、地方伯爵のロジャーと言う者だ、領の特産品は毛織物だ」
「うわー、嘘くさい、ですが、どうかうちの姫をお世話してくださいませ」
「あたしは近衛には入らないから、世話になるのはこっちだ、将来は警備騎士団の長だ」
「あはは、そのようだね」
押し出されたロイドちゃんが引きつり笑いを浮かべた。
「あー、あの学校はそういう学校ですけれども、なんで姫がこんなVIPを……。あ、あああっ」
地方の貴族の家来のくせに聖女候補の顔もしっているのだな。
「あ、うるさいので、そういうの無しで一つ」
「あ、はい、聖女さま。お目に掛かれて光栄でございます」
店員さんは深々とお辞儀をした。
「家令の息子のレオナールだ、幼なじみで島では猿の兄妹みたいにして育ったんだよ」
「やめなさいよ、姫様」
とりあえずレオナールさんに個室に案内してもらった。
南洋気分あふれる建築でワイルドだなあ。
良い雰囲気だ。
「海鮮のお店でして、島から運んだ魚をいきの良いうちに料理してますよ。本日は、シチューか焼き魚かになります」
「じゃあ、私はシチューで」
「それでは私は焼き魚ね」
派閥員は口々に注文をした。
「シルビアさん、リシュエール諸島って、こんな感じ?」
「こんな感じ、籐の椅子で椰子の木陰で魚を食べる土地だ」
椰子生えてるんだ。
この店も店頭に椰子の木が二本にょっきり生えていた。
作り置いていたのか、そんなに時間も掛からないで、シチュープレートから運ばれてきた。
お、結構大きめのお魚がごろごろ入ったブラウンシチューだね。
「お先にいただきます」
「どうぞどうぞ」
焼き魚プレートのカロルに断って、シチューを口に運ぶ。
おお、なんだか磯の香りが少しする。
パクリ。
モグモグモグモグ。
意外に歯ごたえがある、スズキとか、そんな感じの白身魚だな。
味付けが素っ気ないけど、悪く無いね。
カロルの焼き魚も来た。
やっぱり結構大きいね。
「美味しいですね、シルビアさま」
「そうだろっ、島の魚は美味いんだよ」
パンも独特の木の実が入った香ばしい感じのパンだった。
面白い味わいだなあ。
シチューによく合う。
サラダも結構でっかいのが付いていて、オリーブオイル増し増しであった。
「夏休みにリシュエール諸島に行くのが楽しみだ」
「そうだろ、カーチス、浜で試合しようぜ」
「良いな、足腰が鍛えられそうだ。ダンジョンはあるのか?」
「中規模ダンジョンがあるぜ、呪われた島って感じのアンデッドダンジョンだよ」
「死霊系かあ、マコト来てよ」
「ヤダ、夏休みにダンジョンとか。ゴブ蔵でも連れていきなさいよ」
「マコトが居れば安心なのに」
そりゃ、聖女さまだからなあ。
「あ、アダベルもブレスに聖属性入ったからつれて行けば?」
「アダベルか、それも良いな」
「いひひ、楽しい夏休みになりそうだな」
シルビアさんがキシシと笑った。
私の代わりに、ゴブ蔵とカマ吉とオガ太郎を貸しだそうか。
ああ、なんだかわくわくするなあ。
みんなで海にバカンスだ。
ランチが終わった。
結構ボリュームもあったし、美味しいお店だったな。
と、思って居ると、店員のレオナールさんが青いソルベを持ってきてくれた。
「あれ、頼んでないよ」
「うちの姫さんと仲良くしてくれているお礼にサービスですよ。まあ、がらっぱちでお転婆な姫ですが、よろしくおねがいしますよ」
「あはは、ありがとうね」
シャクシャクと青いソルベを食べる。
うーん南洋味だねえ。
謎の果物も付いてる。
「あいたた、夏って感じだなあ」
コリンナちゃんが額に手をやったので、『ヒール』を掛けてあげた。
「ありがと、マコト」
「急にほおばるとなるよね」
前世では、その名もアイス頭痛であったが、こっちの世界では何て呼ばれてるのかな。
ソルベを食べおわり、お会計をすませて、お店を出る。
王家主従は別会計で、ジェラルドが払っていた。
「シルビアさん、美味しかった、ありがとうね」
「いやいや、島にきたらこんな料理だからさ、予行演習だぜ」
「焼き魚も美味しかったわ」
「えへへ、島でまた出してやんよ」
みなで連れだって学園に帰る。
うん、午後は勉強だ。
やれやれ。
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