第1316話 お昼は庭でBBQをする
おや、メイドさん達が庭に……、あれはブロウライト領提供のBBQコンロだな、蒼穹の覇者号から出してきたのか。
「BBQ」
「BBQ」
子供達が硝子越しの景色にくいついた。
チーズフォンデュのポッドも出してきたなあ。
そうか、今日のお昼はBBQか。
試験が終わってからの打ち上げに、とも思ったのだけど、期末試験後は騎獣レースだし、その後はバカンス旅行だね。
試験前にがっつり食べておくのも手かもしれないね。
子供達は窓に取り付き、派閥員は気が削がれて勉強がおろそかになってる感じ。
火属性のメイドさんが炭に着火してコンロに入れている。
こっちの世界はバーナー要らずで便利だな。
いや、気を散らすな、勉強勉強。
カリカリカリカリ。
庭に面したガラス戸がからりと開いた。
「さあ、聖女さま、お昼ご飯でございます」
「そう、ありがとうジェシーさん」
「BBQか、BBQなのかっ」
「はい、ブロウライトのお坊ちゃま、その場で焼いて焼きたてをお召し上がりください」
メイドさんが全部世話をしてくれるBBQかあ。
自力での調理が無いからラクチンだな。
子供達が歓声を上げて庭に飛び出した。
アンヌさん、シェリーさんがお皿とナイフフォークを配った。
お肉はコンロで専業のメイドさんが焼いてくれるようだ。
庭にはパラソルの付いたテーブルもあるし、なかなかの雰囲気ね。
私も庭に出て、お皿とシルバーを貰った。
さて、お肉とパンだなあ。
ダルシーから焼きたてのお肉を貰う。
焼肉大というよりも、ミニステーキぐらいの大きさだね。
パンも貰い、テーブルに付くと、ミーシャさんがお茶を配ってくれた。
「いただきます」
パクリ。
ああ。
ああ。
ダシャ婆っちゃのお肉はスゲえなあ。
美味しい。
カロルとコリンナちゃんも一緒のテーブルにやってきた。
コリンナちゃんがスープを持っているな。
「スープはカリーナさんがやってるよ」
「おお、あそこか」
私は席を立って、カリーナさんにスープをよそってもらった。
カロルが後についていた。
さて、パクパク、もぐもぐ。
板塀で外が見えにくいけど、空の見える庭で食事は良いなあ、
マメちゃんが影から出て来たので、ダルシーが煮こごりを持って来た。
メリッサさんとマリリンのテーブルではチーズフォンデュをやってるな。
子供達がパンとか、ソーセージとか、野菜とかを串にさして、チーズファウンテンになったポッドのチーズに搦めて食べているね。
「明日から期末試験だから、BBQで気勢を上げて頑張ろうという事だな」
「キエエエエ」
「コリンナちゃん、それ、奇声」
「そうか」
パンは村のパン屋さんのパンだね。
素朴で美味しい奴だ。
チーズフォンデュのチーズをたっぷり付けてガブリと噛みつく。
おいしい!
「いやあ、アダベル親分と一緒だと美味し物が食べれて良いや」
「いいだろう」
「王都に行ったり、いろんな事ができて楽しいです、親分」
「えっへへへ」
アダベルが照れて笑った。
子供達のテーブルは騒がしくて散らかして汚して、でも楽しそうだね。
大人になるまで、沢山の思い出を作っておくんだよ。
子供時代のキラキラした思い出が、大人になった時の辛い現実に立ち向かえる唯一の宝石なんだからね。
アダベルも、トール王子やティルダ王女、孤児達、村の子供、この子達が大きくなって、ずっとあの頃は楽しかったなあって思い出せるような楽しい事を体験させてあげないとね。
私が前世でおかあさんに与えられたように。
こっちの世界にきて、ひよこ堂の父母と、キンボール家の父母に、家族に与えられたようにね。
そう思うんだ。
まあ、それでも私はまだ子供でもあるので、楽しみを享受する立場でもあるね。
パクパク。
焼きたてのステーキをバクバクたべ、チーズフォンデュでパンとか色々食べて、スープを飲み、お茶を飲み、最後にジェシーさん特製のチーズケーキを食べて、豪華な昼食は終わった。
あー、お腹いっぱいだ。
みんな適当に邸宅の中でくつろいでのんびりしているね。
私はお庭のベンチにカロルと一緒に腰掛けて食休みである。
子供達は庭でドドドと駆け回って遊んでいる。
陽が陰った、と思ったらヒューイが空から降りて来た。
《帰った》
「お帰り~」
「わあ、ヒューイヒューイ!!」
子供達はヒューイが大好きなので、わあっと寄って乗ったりして遊んでいた。
ヒューイの方も子供が好きなので、鷹揚に子供達を乗せてゆっくり歩き回ったりしていた。
「良い風景ね、夢みたいだわ」
「まだまだーっ」
「まだなんだ」
「もっともっとどこまでも楽しく幸せになるよ、みんなも私も」
「私も?」
「もちろん、カロルは最優先だよっ」
「ありがとう、マコト」
そう言って、カロルは幸せそうに微笑んだ。
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