第1315話 アダベル達を守護竜牧場に追っ払うと静かになった
「そういう事だから、お昼の食材を守護竜牧場に行って買ってきてほしいの」
「なるほど、厄介払いというやつだな」
「ちがうわよっ」
「でもダシャばっちゃに会えるのは良いな、梅雨の後から守護竜牧場に行ってないから、ジャーキーを貰いに行こう」
「「「「ジャーキージャーキー」」」」
みんな守護竜牧場のジャーキー好きだなあ。
コリンナちゃんがダルシーが出したお財布からアダベルに金貨とメモを渡した。
「これが買ってくる物だ」
「結構あるなあ」
「籠に入る量だよ、大きいのはミルク缶だけどね」
「牧場の牛乳は濃くて美味いからな」
アダベルはペロリと舌を出して唇を舐めた。
「子供達みんなで行くの?」
「全員で行く、籠がちょっと狭いけど、楽しい」
「楽しい」
「楽しい」
トール王子とティルダ王女が笑った。
「気を付けて行ってきなさいよ」
「障壁が掛かったから快適らしい」
「「「「快適快適」」」」
子供達が連れ立ってダイニングを出て行った。
一瞬で静かになるね。
勉強を再開すると、窓の向こうを飛び立つアダベルが見えた。
いってらっしゃい。
カリカリカリカリ。
子供達が居ないと静かだね。
カリカリカリカリ。
「お風呂はどうしよう」
「子供達が買い出しから帰って来てからで良いでしょう」
「男子は村の共同浴場か」
「野趣があって好きだ……」
「たまには時間を変えて、邸宅のお風呂に入りなさいよ」
「いいのか?」
「今日は時間があるからね」
やっぱり村の共同浴場と邸宅の浴場だと広さが違うんだよね。
聖女派閥は女子が多いけど、男子も結構いるからね。
カリカリカリカリ。
学園じゃないから図書館で参考書が借りれない、けれど、エルマーとかカロルがいるからね、質問先には困らない。
メリッサさんとマリリンも、エルザさんやコリンナちゃんに疑問点を聞いているね。
うんうん。
十時になったので、ジェシーさんとハナさんがお茶を入れてくれた。
茶請けは村の蕎麦クッキーである。
ポリポリ、素朴な味で美味しいね。
ブリス先輩が立ち上がった。
「領袖、私は少し、村役場に行って来ますね」
「おねがいします」
ブリス先輩は行政の仕事だね。
先輩は三年生でも出来る方だからなあ。
ユリユリ先輩とは違うのだ。
マメちゃんが影から出て、お茶を運んでいたミーシャさんの足にじゃれついた。
あぶない! と思ったのだが、さすがはミーシャさん、微動だにせず、背伸びして、お茶をテーブルに置いてから、マメちゃんをモシャモシャとくすぐった。
「マメちゃん、私の所にいらっしゃい~~」
ユリユリ先輩がマメちゃんを抱き上げようとしたら、影に飛びこんで逃げてしまった。
ユリユリ先輩はなんだかしょぼんとしてしまった。
「わりと小動物に嫌われますのよねえ」
「それは残念でしたね」
何でだろうか、香水がきついのかな。
カリカリカリカリ。
お隣のカロルも、コリンナちゃんも調子はよさそうだな。
ジェシーさんが置物みたいになっているライ一郎の横にかがみ込んでタテガミをモシャモシャした。
「大人しいのねえ、あなたは」
「大人しいですよ~、もっと撫でて下さいだそうですよっ」
コリンヌさんがそう言うと、ジェシーさんは笑ってライ一郎を撫でた。
ホルボス村は王都に比べると少しだけ気温が低い感じだね。
快適な気温で勉強が出来るぞ。
避暑地としても良さそうだなあ。
アダベル達が後ろのドアからどやどやとやってきた。
おお、いつの間に。
「あれ、広場に着陸しなかったの?」
「どうせ帰りは蒼穹の覇者号だから、基地に着陸して籠を甲板に乗っけてきたよ」
わ、それは偉いな。
荷物もみんなで手分けして運んで来たようだ。
「まあまあ、こんなに沢山、ジャーキーとかチーズとか、頼んで無い物も」
「婆っちゃがオマケでくれた、マコトによろしくとの事だ」
そう言ってアダベルはジャーキーの袋をテーブルに置いた。
おー、ジャーキー。
「あまり食べるとお昼ご飯が美味しく無くなるからね」
「そうは言っても美味しいので食べてしまうのだ」
「うまいうまい」
守護竜牧場のジャーキーはやっぱり美味しいなあ。
「うわ、美味しい、なにこれっ」
「私が後ろ盾の牧場の干し肉だ、ありがたく食べるがいい」
「これは美味しいねえ」
コリンヌさんは初ジャーキーか。
彼女は、干し肉をライ一郎とヘビ三郎に食べさせていた。
「ヤギジローは食べないの?」
「お肉はあまり好きじゃないですねえ」
「山に出して草をたべさせる?」
「そうですね、それが良いかも」
「めーっ」
ヤギ次郎は一声鳴いて窓から庭に出て行った。
コリンヌさんが一緒に行って、裏口を開けて帰ってきた。
「邸宅の庭には草は生えて無いですからね」
「そうね」
ジェシーさん、ハナさんを筆頭にして、聖女派閥のメイドさんたちがキッチンに行ってお昼ご飯を作り始めた。
何ができるのかな。
楽しみだな。
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