第1313話 ジャンヌお義姉様と一緒にキンボール家へ
ヒューイの背中にひらりと跨がって、ジャンヌお義姉様に手を差し伸べた。
「一緒に行きましょう、ジャンヌお義姉様」
「あら、良いわね」
私はジャンヌお義姉様をヒューイの上に引っ張り上げた。
「んじゃ、明日の朝は集会室集合ね~」
「わかったわ」
「いってらっしゃいませ」
みんなに手をふって、ヒューイを回頭させて校門を目指す。
「ヒューイくん、乗り心地良いわね」
「でしょー」
マメちゃんが影から首だけ出して前を見ているな。
ヒューイをシタシタと歩かせる。
校門をくぐったら、ヒューイに羽を広げるように念じる。
「お義姉様、しっかり掴まっていてくださいね」
「え、何々? どうするの」
「飛びます」
バサリと羽ばたいてヒューイは空に舞い上がった。
「きゃーーー!」
お義姉様が落っこちないように障壁で支えよう。
彼女は悲鳴を上げて私に抱きついてきた。
まあ、空中は怖いかもねえ。
とはいえ、それほどの速度は出て無いからね。
「わあ。空からの王都……、素敵」
「でしょー」
空の上を行くと見慣れた王都の景色も新鮮で良いんだよねえ。
とはいえ、キンボール家はそんなに遠くは無いから、するりと庭に着陸であるよ。
戸を開けて、お養父様が顔を出した。
「おお、マコト、お帰り、ジャンヌさんも一緒か」
「学校で勉強会を手伝ってくれてたんですよ」
「それはそれは」
私が先に下りて、ジャンヌお義姉様が下りるのを手伝った。
「ヒューイ号もいつもながら綺麗だね」
《ありがとう》
「お養父様、ヒューイがありがとうって」
「そうかそうか」
お養父様は嬉しそうに微笑んだ。
ヒューイはキンボール家の馬丁さんに連れられて厩舎に行った。
小さいけど、一応馬小屋はあるのよね。
「まあまあ、マコトちゃん、ジャンヌちゃん、いらっしゃい、今、クッキーが焼けた所よ」
お養母様がミトンをしてオーブンからクッキーの乗った天板を引き出しながら言った。
わあ、焼きたてで良い匂いだなあ。
みんなでリビングで焼きたてクッキーを食べながらお茶を飲んだ。
いやあ、美味しいねえ。
「今週は何か珍しい事あったかしら」
「期末試験前なので、勉強ばかりしてましたね」
「ひさびさに穏やかな学園生活のようだね」
「そうでしたね」
さすがの私でも毎週大冒険はしないのである。
夏休みは大冒険しそうだけどね。
「もうすぐ結婚式ですね」
「そうよー、派閥の皆さんも呼んで派手にやりましょうね」
それは別にいいのだけれど、会場の大きさとか大丈夫なのかな。
学者系の男爵家の結婚式だしなあ。
「結婚式は第三教会で、披露宴は国際ホテルを使うよ」
「派閥大会をやったホテルですね」
「そうだね、マコトがらみのお客さんも多いから広めの所を予約したよ」
良いなあ、もうすぐ結婚式かあ。
身内の結婚式は転生してから初めてだから楽しみだね。
「ハネムーンはビタリですか、お気を付けて」
「大丈夫よ、ブラッドは強いし」
ビタリだと、総本山がらみで事件に巻き込まれないかね。
避けて欲しいのだけれど、ハネムーンだしねえ。
ちなみに夏いっぱいハネムーンらしい。
陸路と海路でのんびりと旅行するとのこと。
楽しんで来てくださいね。
お養母様とお義姉様がキッチンに入って晩餐の用意をしはじめた。
キンボール家の料理は美味しいんだよなあ。
良い匂いがしてきたぞ。
「さあ、ご飯が出来たわよ、ダルシーちゃんも出てらっしゃい」
「……」
気まずそうにダルシーが姿を現した。
「私はその……」
「いいのいいの」
「いいのよ」
「ダルシーちゃんも家族だしね」
お養母様の勢いにはダルシーも勝てないのであった。
ダイニングでみんなで晩ご飯である。
キンボール家の料理は素朴だけど、美味しいなあ。
私の好きなお料理を並べてくれているね。
お義姉様の家のお料理も目新しくて良い感じ。
将来はブラッドお義兄様のお家の味になるのだろうなあ。
マメちゃんも煮こごりを作って貰ってワシワシと食べているね。
楽しく晩餐を食べたあとは、お風呂を頂く。
小さいお風呂だから、ダルシーの介護は無しであるな。
自力でちゃっちゃと洗おう。
お風呂を出て、バスローブを着て自室でのんびりする。
この部屋に居たのは三ヶ月ぐらい前なのに、もう何年も昔のような感じだね。
怒濤の一学期であったなあ。
期末試験が終わったら、待ちに待った夏休みだ、南の島でバカンスするぞー。
楽しみ楽しみ。
すやあ……。
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