第1308話 エルザさんが女子の部優勝、カーチス兄ちゃんが男子の部準優勝で勉強に身が入らない
女子寮食堂でご褒美のお菓子を受け取って集会室に行くと、シルビアさんが来ていて盛りあがっていた。
「いやあ、エルザつええよなあ、さすがにアレを避けられるとは」
「刀身を持って柄で打つ技は初めて見ましたわ、あと、弾かれて宙に飛ばされた剣をキャッチして切る技も」
「いやあ、あの技を初見で破るとはなあっ、さすがはエルザだよっ」
確かに剣を飛ばされた瞬間、エルザさんの勝ちだと思ったね。
良く、あのトリック打ちみたいな斬撃をかわしたよなあ。
「さあ、ご褒美のケーキだよう」
「まあっ」
決勝進出のご褒美に大きめのショートケーキが、エルザさんとカーチス兄ちゃんに、そして優勝のご褒美に、小振りのホールケーキがエルザさんに贈られた。
「わ、私のは?」
「シルビアさん、派閥員じゃないから」
「ええー」
不満そうなシルビアさんにエルザさんが笑いかけた。
「ちょっと多いので、シルビアさま、お手伝いねがえませんか」
「お、おお、良いのか」
「はい、こういうのは気持ちなので」
「そうだなっ」
シルビアさんは優勝祝いのホールケーキを半分貰ってエビス顔である。
「あ、うめえなっ、女子寮の食堂かな」
「メレーさんのやつよ」
カーチス兄ちゃんも穏やかな表情でケーキを食べているな。
「マイケル卿に負けた、くそう」
「彼は強いからね、また来年挑戦だよ、カーチス」
カーチス兄ちゃんにオスカーが声を掛けた。
そうだね、来年また頑張れば良いよ。
「来年は、シルビアを倒ーすっ!」
「倒ーすみょん!」
「ぎゃはは、来い来い、私は来年エルザを倒すぞー」
シルビアさんにロイドちゃんが近寄った。
「君は、警備騎士団志望なのかい?」
「え、そうっすよ、警備騎士団の道場に行ってますし、なにより近衛よりも荒事が多そうで」
「えー、近衛に来いよ、荒事はあるぜ」
ロイドちゃん付きのリックさんがそんな事を言った。
「ジャックさま、リックさまは良いんですけどねえ、まあ、そのー」
あー、ハゲか、一番上がハゲだから嫌なのか。
「まあ、色々大変だけどなあ、でも近衛は腕自慢が集まるぜ」
「いや、僕は将来警備騎士団を統括するから、歓迎するよ、シルビアくん」
警備騎士団は、前世の警察っぽい団体だからな。
シルビアさん向きかもしれない。
近衛騎士団は超一流だけど、偉い人にペコペコしなければならない所もあるしな。
「エルザさまは、将来近衛に入ったりなさるのか?」
「入りませんわ、リックさま」
「えー、あんなに強いのに」
「私はカーチスさまの家庭を守りますので」
おおー、それはそれで正しい淑女道だなあ。
淑女は木剣を振り回したりはしないのだ。
「マイケル卿は近衛にスカウトされますかね」
「ポッティンジャー派ではあるけれども、あれだけ使えればね」
マイクーとハゲは相性どうなのかな。
まあ、マイクーが我慢しそうではあるけどね。
「というか、シルビアさん、出て行きなさい、勉強が捗りません」
「な、なんだよう、いいじゃんか、せっかく武術大会が終わってほっとしたってのによう」
「明後日から期末試験です」
「ぐぬぬ」
「勉強しない人は邪魔ですので」
「くそう、ライアン勉強を教えろっ」
「えー、今からですか?」
「うん」
ライアンがやれやれと言いながらノートを広げてシルビアさんの隣に座った。
学期の最初からやるっぽい。
大変だなあ、ライアン。
それを見て、カーチス兄ちゃんもノートを広げた。
まあ、カーチス兄ちゃんの方はまだマシだな。
シルビアさんは期末の勉強を一切してなさそうだ。
あんまり成績が悪いとB組も落第、C組に行くしか無くなるが、まあさすがにまったく勉強しなくても、そこまで成績が落ちる生徒は入学試験ではねられているね。
だから、B組なら、わりと気楽に剣術とか冒険者とかしながら学園生活が出来るってわけさ。
静かになったので、勉強を進める。
カリカリカリカリ。
マメちゃんが影から出て来て遊んでくれと足にじゃれつく。
ダルシーが抱え上げて、煮こごりを上げていた。
その後、カロルが持って行って、机の上で可愛がりながら勉強をしていた。
シルビアさんが勉強に飽きて、体を伸ばしてマメちゃんをひったくってテーブルの上で遊び始めた。
勉強しなさいよ。
「シルビアさまは聖女派閥に入りませんの?」
「え、入らねえよう」
「楽しいみょんよ」
「練習相手に不自由しないのだぞ」
「んー、剣術部に入部すれば良いし、まあ、警備騎士団の道場が気合い入って好きだしなあ」
そうかそうか。
「マコトはシルビアさん、派閥に勧誘しないの」
「入りたければ入れるし、入りたく無ければ無理に誘わないよ」
「お、ドライだな、聖女、そういう所は好きだぞ」
「シルビアさまが参加なされたら、女子の武術大会は派閥で独占できますのに」
「そういうのドキドキしないしなあ」
「そうそう、私は付かず離れずでいるぜっ」
シルビアさんが、ポッティンジャー派閥に取り込まれなければ問題はあまりないよな。
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