第1306話 男子決勝戦
男女共に決勝進出選手が決まったので、ちょっと休憩である。
おトイレ行ったりしているね。
男子の決勝はカーチス兄ちゃんとマイクーであった。
女子の決勝はエルザさんとシルビアさんであったな。
男女共に決勝に派閥員が進出して誇らしい限りだね。
さて、トイレ休憩も終わり、男子の決勝選手が台上へと上がった。
カーチス兄ちゃんはやや堅い感じだな。
マイクーはリラックスしている。
両者台上で向かい合い、礼をした。
「始め!!」
男性の先生が片手を上げて試合開始を宣言した。
カーチス兄ちゃんはブルッと武者震いをすると木剣を中段に構えた。
マイクーは大きい構えで大上段だ。
ゆっくりカーチス兄ちゃんがマイクーの周りをまわる。
間合いが詰まっていき、どんどん緊張感が高くなる。
カーチス兄ちゃんが木剣を振り上げ大上段に構えて間合いを詰めて振る。
マイクーも迎撃で振る。
ビュン!
ガキン!
木剣が打ち合わされて、合図のように速度の乗った斬撃が両者から繰り出される。
カンカンカンカンカンカン!
いやあ、良い速度で打ち合っているね。
しかし、マイクー相手に大上段は思い切ったな。
気持ちで負けていない証拠だね。
脚を使い、腰を使い、リズミカルに打ち合いを続けていく。
すかしたり、受けを取ったり、複雑な技が応酬されあう。
両者拮抗してる感じだな。
ちょっと緊張していたカーチス兄ちゃんの表情も柔らかくなった。
おお、良い動きでマイクーを圧倒してるか。
なんだか、さっきよりもずっと技の切れが良いぞ。
カーチス兄ちゃんは現場に強いからな。
じわり、と、マイクーが押されて後退した。
「行け行け!! カーチス!!」
私が声援を送ると、奴は笑って更にじわりじわりと押していく。
お、これは行けるか?
カーチス兄ちゃんはのびのびと技を繰り出して行く。
マイクーは防御を続けている。
押してる押してる。
「やったか!」
「あっ!」
押されているマイクーがピタリと止まった。
地面に根を生やしたように動かず、カーチス兄ちゃんの斬撃をうけながしていく。
砂かぶりにいるカトレアさんが渋い顔をした。
なんだ?
雰囲気が……。
あ、マイクーが笑っている。
笑っている。
なんだか肉食獣みたいなそんな感じの笑い方だ。
やべえ、ピッカリン笑いか!!
カーチス兄ちゃんもすごみのある笑顔を浮かべて、攻撃の速度を上げた。
マイクーが一歩、笑いながら踏み込んだ。
ガガガガン!
もの凄いキレのある斬撃が飛び、カーチス兄ちゃんが受け流した。
あ、いかん雰囲気が完全に変わった。
ピッカリンモードに入ったっぽい。
「ふふふっ、あっはははははっ!!」
マイクーが笑いながらもの凄い勢いで斬撃を放つ。
カーチス兄ちゃんも負けじと同じ速度で相殺していく。
ガガガガガガガガッ!!
連続的に打ち合わせる音が響き、もの凄い速度でお互い斬撃を放ち、受け、切り結んでいた。
す、すげえっ!
カーチス兄ちゃんもピッカリンモードの速度に付いて行ってるぞっ。
両者、一歩も引かない斬り合いだ。
汗が噴き出し、熱気が蒸気となって二人の間でとぐろを巻いた。
試合場は神域みたいな場所となり、連続音が台上に響き渡る。
マイクーはどんどんどんどん前のめりになり、凄い笑顔で恐ろしい速度の技を放つ。
カーチス兄ちゃんも負けじとそれを受ける。
一瞬だった。
ほんの一瞬の髪の毛の半分ぐらいの隙に、マイクーが斬撃をぶち込む。
なんとか脚を使ってカーチス兄ちゃんはかわそうするが、バランスを崩した。
ドカッドカッ!!
重い二連撃がカーチス兄ちゃんの胴体に入り、奴は吹っ飛ばされた。
「一本!! それまでっ!!」
あーあーあー。
ピッカリンモードには勝てなかったかあ。
さすがはマイクーだよなあ。
「勝者、マイケル・ピッカリン!」
男性の先生が、勝者の名前を呼んだ。
カーチス兄ちゃんは肩で息をして、がっくりと膝を付いた。
「ブロウライト卿、来年、上がってこい」
「くそう、来年は倒す!」
マイクーは笑って片手を上げて、観客からの歓声に応えていた。
ひゃあ、やっぱりマイクーは強いなあ。
よくあんな奴の金的潰せたなあ。
不意打ちは強いよなあ。
肩を落として台上から下りたカーチス兄ちゃんの前にエルザさんが立った。
「カーチスさま、木剣をお貸し下さい」
「剣を使うのか?」
「はい、カーチスさまのご無念を晴らしますわ」
「よし、やってこい」
カーチス兄ちゃんはエルザさんに自分の木剣を渡した。
エルザさんには大きく無いか、と思ったのだが、彼女がブンッと素振りをすると、サイズじゃあ無いんだなあと解った。
対面に立ったシルビアさんがニヤリと笑った。
「おもしれえ」
さあ、次は女子の決勝だ!
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




