第1305話 準決勝決着する
シルビアさんとカトレアさんの激闘は、シルビアさんに軍配が上がった。
やっぱり上手いよなあ。
さて、次に呼び出されたのは、カーチス兄ちゃんと知らない一年生男子であった。
同じ学年だけど、知らない人だな。
B組かな。
武器は片手剣と丸盾だった。
対するカーチス兄ちゃんは大剣であるよ。
「始め!」
と、男性の先生が片手を上げて試合開始の合図をした。
カーチス兄ちゃんは大きい構えで落ち着いてるなあ。
相手の一年生男子もわりと落ち着いて動いているね。
「剣術部の一年生のギュスターヴ君だみょんな」
「ああ、落ち着いてると思ったら、剣術部の人なんだ」
「結構な使い手みょん、閣下がんばれーだみょん」
両者の間合いが詰まり、カーチス兄ちゃんが、まず動いた。
速度の乗った木剣が最上段から振り下ろされる。
ギュスターヴ君は丸盾で受けながし、片手剣を振った。
カーチス兄ちゃんは脚を使って間合いを空けて避ける。
なるほど、片手剣と盾の方が防御力が高い感じだね。
両手剣の方が攻撃力が高いが、防御が薄いんだなあ。
ギュスターヴ君はなかなか手堅い動きをするね。
カーチス兄ちゃんは派手に動くので、方向性が真逆だ。
カンカンカン!
カーチス兄ちゃんの斬撃は丸盾に吸い込まれるように受けられて、片手剣の反撃が置くように振られる。
やあ、なかなか上手いなギュスターヴくん。
ガドラガに行く前のカーチス兄ちゃんだったら、じれて自爆していたと思う。
それぐらい、ギュスターヴ君は堅牢だ。
でも、なんか、ねばりかな。
そんな感じの物がガドラガから帰って来たカーチス兄ちゃんには備わってきている。
苛立たない感じで、自分の大剣を振っているな。
ガドラガの深部でジャンとかリンダさんとかの戦いをじっくり見たり、五本指のイレギュラーな動きを見て成長したのだろうなあ。
風格、みたいな物が剣の振りに宿り始めているね。
うん、なんだか凄く強くなりそうな予感がする。
まあ、今は、それほど目立って強い訳じゃ無いんだけどね。
あ、リンダさんみたいな切り方をした。
やるねやるねえ。
歩法を使って丸盾のガードを崩そうとアタックを仕掛ける。
ガッキンガッキン。
重い音がして、丸盾が弾かれた。
ギュスターヴ君が、しまったという顔をした。
カーチス兄ちゃんは、その隙に即座に攻撃を打ちむのではなく、一拍置いて、遠間合いからの斬撃を打った。
丸盾のガードをすり抜けてカーチス兄ちゃんの木剣はギュスターヴ君の肩を打った。
「一本、そこまで!」
男性の先生がカーチス兄ちゃんの勝ちを宣言した。
カーチス兄ちゃんはギュスターヴ君と握手を交わし、片手を上げて観客の声援に応えた。
いやあ、強くなってんじゃんよ。
ホウズのコーチもあるね、あれは。
さて、これで、男子の決勝は、マイクーとカーチス兄ちゃんとなったな。
「カーチスが決勝に上がったわね、マイケル卿に勝てるかしら」
「どうだろうねえ、結構強くはなってるけど」
マイクーの方が有利な感じかな。
カーチス兄ちゃんはもうちょっと技量を上げないとなあ。
まあ、勝負は水物だから、やってみないと解らないけどね。
女子の部の準決勝二回戦目が始まる。
エルザさんと、二年生の槍女子が呼ばれて台の上に上がった。
エルザさんの得物は相変わらず鉄扇だね。
対する相手は槍だ。
装飾の付いていない素槍な感じで速度で押す感じかな。
「それでは、始め!」
バッテン先生が片手を上げて試合開始を宣言した。
観客の熱気が、ぐわっという感じで上がる。
やっぱりエルザさんクラスになると存在に華があるからね。
エルザさんは気負い無くスタスタと歩いて間合いを詰める。
槍女子は息を大きく吸ってもの凄い速度で突きを放ち始めた。
軽い、だが、速い!
槍の穂先がぶれるぐらいの速度で何回も何回も突きが放たれる。
エルザさんはふんわり笑って、まっすぐに速度を落とさず進む。
パンパンパンパンパンパン。
片手の開いた鉄扇がもの凄い回転数の槍の突きを捌いていく。
すげええええ。
槍女子は一歩さがり、槍を振り回し、突きから振りにチェンジした。
その振り技も鉄扇が捌く。
うわあ、鉄壁防御の鉄扇だ。
両手に拳盾を持って居るに等しいぞ。
エルザさんは少し沈み込み、槍の突きを下から掬うようにした。
ぐるん。
魔法のように、槍女子は一回転して転がり、場外に落ちた。
シン、と会場が静まりかえった。
「勝者、エルザ・グリニー!」
わあっ!! と会場が沸騰したようになった。
エルザさんは涼しい顔をして鉄扇であおいで顔に風を送っていた。
やっぱりべらぼうに強いなあ。
女子の決勝は、エルザさんとシルビアさんか。
こっちも面白そうだな。
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