第1304話 ついに準決勝がはじまるはじまる
さて、泣いても笑っても武術大会は今日で終わりだ。
先に準決勝四試合があって、その後男女の決勝の二試合だ。
だが、男女で決戦して、魔法学園一の剣士は決めないのである。
準決勝四試合は一試合ずつ行われる。
最初に試合台の上に呼び出されたのは、マイクーとオスカーであった。
マイクーも強いが、オスカーもなかなかだからな。
両方とも両手剣であった。
二人は台上に上がり、礼を交わした。
悠然とした動きで大木剣を構えた。
「それでは、開始!」
男の先生が台上で手を上げて、試合開始を宣言した。
マイクーは上段、オスカーは中段に構えた。
ゆっくりと歩くように両者は近づき、間合いを越えた瞬間、もの凄い速度で剣を振り合った。
ガンガンガンガンガン。
大木剣が霞むほどの速度で二人は打ち合った。
あー、オスカーは強いな。
背筋の強さが体のバネになっている。
んで、マイクーだが……、それの上を行くわ。
マイクーってこんなに強かったかな?
私と対峙した時はすっかり気を抜いていたのかな。
それくらい、強さ感が違う。
これは鍛えてあるなあ。
剣を振るリズムがどんどんどんどん上がって行く。
両者とも下がらずに剣を打ち合わせているが、一瞬オスカーの振りが遅れた。
それからは、オスカーが防戦一方になり、マイクーに踏み込まれて剣を弾き落とされた。
「参った……」
マイクーは薄く笑って木剣を引いた。
奴が片手を上げると、ポッティンジャー派の生徒が集まった席から歓声が上がった。
「マイケル卿、強いわね」
「前年度の優勝者だからね」
「よくあんな奴の金的を潰そうとか思ったな」
「まあ、不意打ちは豪傑でも関係ないしさ」
しかし、オスカーは良く戦った。
来年に向けて頑張ってくれい。
さて、第二試合、女子の部で、カトレアさん対シルビアさんであるな。
ピッカリン兄妹が連続で試合だね。
バッテン先生が選手を呼び出すと、カトレアさんとシルビアさんが台上に上がった。
シルビアさんは良い感じに脱力しているけど、カトレアさんの動きが硬いな、肩に力が入っている感じだ。
「カトレアさん、リラックス!」
私が声を掛けると、カトレアさんはハッとしたように目を見開き、肩をぐりぐりと回した。
よし、余分な力が抜けたね。
カトレアさんとシルビアさんは台上の中心で向かい合って礼をした。
「それでは、第二試合、開始!」
バッテン先生が宣言して試合が始まった。
シルビアさんは両手剣、カトレアさんは模擬エストックだった。
シルビアさんが気負い無く近づく。
カトレアさんが飛び退いて下がる。
シルビアさんはさらに近づく。
カトレアさんは再度後ろに飛び退いた。
「ああ、後が無いわね」
「そうだね」
飛び退くのは良いけど、後ろが無い。
この武術の試合では、場外に出されても負けなのだ。
ちなみに、魔法が使える武術大会では、風魔法で吹き飛ばして場外狙いの選手が結構いるそうだ。
条件によって、有利な属性は違うだよね。
カトレアさんは背中を丸めた。
あ、笑ってる。
ピッカリン一族特有のヤバイ表情だ。
「きええええええっ!!」
カトレアさんは怪鳥のような気合いを発して、低い位置から大きく踏み出してエストックを突いた。
良い突き!
シルビアさんは、おっという顔をして、剣の腹で鋭い突きを受けて軌跡を変えた。
カトレアさんは背中を丸めて、笑いながら突く、突く、更に突く。
どんどん速度とキレが乗っていく。
シルビアさんもすごみのある笑みを浮かべた。
突きを跳ね返しながら、踏み込み、鋭い斬撃でカトレアさんの出足を払う。
カトレアさんは細かく下がり、力の乗った三段突き。
シルビアさんは三連を流れるように跳ね返し、踏み込み切り下げ、バックソードで切り上げる。
うっは、凄い技の応酬だな。
ガキンガキンと木製でないようなヤバイ音が響く。
カトレアさんは背中を丸めて四足獣のような姿勢で突きを放つ。
シルビアさんは、回転しながら突きを捌き、切り上げ切り下げ振り回してカトレアさんに斬りつける。
両者とも、女子が浮かべてはいけない感じのヤバイ笑顔を貼り付けて戦う戦う、戦いぬく。
しかし、カトレアさんの攻撃は突きだから単調になりそうなものだけど、背中をまるめて、低い姿勢から打ち込まれる突きのキレが尋常じゃない。
シルビアさんは技量でカトレアさんの突きを捌いて斬り技を使って追い詰めていく。
いやあ、上手いなあ、シルビアさん。
同じような動きでないから、逆に拮抗して積み上がるのではなく、どっちの旗色が悪いか解らないな。
シルビアさんが台上に伏せるぐらいに姿勢を低くして、木剣を振った。
カトレアさんの突きが彼女を襲う。
が、器用に手を付いてシルビアさんは半回転して横切りを放った。
カトレアさんが飛び退いて避ける。
シルビアさんはそのまま前に詰めた。
あ。
カトレアさんが試合台ギリギリに着地して、バランスを崩した。
シルビアさんがそのまま前進して、突きを打って、カトレアさんの姿勢を崩し、台上から落とした。
うおおお! と会場がどよめいた。
「ああ、あの突きの動きは機動性があるぶん、場外に出やすいのね」
「シルビアさまは上手いですわね」
カトレアさんは、地面を叩いて悔しがっていた。
「勝者、シルビア・ハウエル!」
バッテン先生が勝者の名前を呼んだ。
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