第1298話 オルブライト領の薬膳ランチを頂く
なんだかハイテンションなカロルに連れられて蔦の絡まるレストランにやってきた。
派閥員たちは皆押し黙ってカロルの後を付いてレストランに入った。
「おや、お嬢様、いらっしゃいませ」
「今日は前に言っていた派閥の仲間を連れて来たわ、美味しい物を出してあげてね」
「かしこまりました、お任せ下さい」
初老の支配人さんはそう請け負ったが、どんな物を出してくれるのだろうか。
重厚なインテリアの店内は、カロルの錬金部屋のような、薬草の匂いがした。
嫌いな匂いじゃあ無いんだけど、お料理屋の匂いとしてはなあ。
お客さんは意外に入っていた。
なかなか社会階層の高い感じの紳士淑女さんがテーブルに座っているね。
「意外とお客さん入っているね」
「王都の上流階級では健康食が流行っているからね」
「錬金都市のファルンガルドからの出店なので、評判が良いのですよ」
情報通のヒルダさんが教えてくれた。
うん、あまり美味しく無いので閑古鳥が鳴いている、でなくて良かった。
カロルは私の嫁だからなあ。
支配人さんが直々に個室に我々を案内してくれた。
なんだか、良い感じのお部屋だなあ。
「メニューは無いの?」
「お任せよ、マコト」
「そうなのか」
皆でテーブルに付いてお料理を待つ。
わりと何を喰わせられるのか、みんな、戦々恐々としているなあ。
「レバーと香草のスープです」
女給さんがエグい匂いのスープを注いでくれた。
うむむ。
「さ、食べましょう、マコト」
「はい……」
やべえ、正露丸みたいな匂いがするぞ。
むむむ、お鼻呼吸を止めて、スープを一口飲んだ。
ゴクン。
お?
おおお?
意外に食べやすい味だな。
匂いは正露丸だけど、スープの味わいが濃厚でするっと入るね。
「美味しいね」
「でしょでしょ」
意外に美味しいな、このスープ。
臭いけど。
皆も一口食べて、おやという顔で眉を上げた。
「ランチプレートでございます」
プレートに、豚肉と香草の炒め物、何かの赤いサラダ、緑の野菜を練り込んだパンが乗っていた。
パクリパクリ。
おお、なかなか食べやすい、というか美味しいな。
「美味しいね、カロル、私は見くびっていたよ」
「そうでしょうそうでしょう」
カロルは満面の笑みでうなずいた。
豚肉が良い味で、香草の味で良いハーモニーを醸し出しているね。
うん、美味しい美味しい。
「なんだか、子供の頃に食べた薬膳と違うな。昔はもっと薬くさかったよ」
「支配人と一緒に、美味しい薬膳を目指して開発したのよ」
「なかなか美味しいな」
コリンナちゃんにも好評であった。
「お前はなぜ健康な薬膳に塩を山ほど掛ける?」
「おいしいみょんよ」
うーむ、コイシちゃんの将来が心配だよ。
パクパク食べて完食であった。
やっぱり印象で結論を下してはいけないね。
ちゃんと美味しくてカロルに悪かったね。
食後に、濃いコーヒーと、薬草の入ったシフォンケーキが出た。
「これから武術大会で、美味しくて体に良い物を食べてがんばれるみょんな」
「そうだな、午後から頑張ろう」
ダルシーを呼んでお金を払おうとしたら、カロルが首を横にふった。
「ここは私のおごりよ」
「ごちそうさま、カロル」
ここはありがたくカロルに奢られておこう。
「思ったより美味しかったみょんな」
「うむ、どんな地獄ランチになるか不安であった」
「んもう、酷いわねっ」
「あはは、ごめんみょんな」
美味しいランチを食べて、皆のテンションが上がって、私らは学園へと戻った。
一度教室に戻って、武術場へと向かった。
今日もダルシーと、アンヌさん、シャーリーさんが席取りをしてくれていた。
みんなで席に座る。
出場選手たちは試合台の近くの席へと座った。
さて、本日は二回戦目だ。
そろそろ、勝ち抜けない派閥員の選手も出て来そうね。
「二回戦目は楽しみね」
「みんな勝ち抜いてくれたら良いんだけど」
「全員はなかなかね」
今日は生徒の二回戦目が終わると、バッテン先生とリンダさんのエキビシジョンマッチがある。
リンダさんが選手席で屈伸したりで柔軟体操をしているなあ。
「バッテン先生はリンダさんに勝てるかなあ」
コリンナちゃんがそんな事を言った。
「リンダさんは強いからなあ」
リンダさんの剣の才能はめちゃくちゃチートだからなあ。
あんな強い人は私は他に知らない。
あと、阿呆みたいに修行するしなあ。
バッテン先生も鍛えているけど、次元が違うんだよなあ。
バッテン先生と男性の先生が試合台の上に乗り、選手を呼び出した。
さて、武術大会、二日目の開始だね。
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