第1286話 騎乗レースコースを確認した
「区間の選手を替えるときはどうやるの」
「タスキです、タスキを渡して選手を交代して走らせますよ。区間のスタートでは替えの走者がいて、交代します」
なるほど、前世の駅伝みたいな感じか。
ペガサスは飛行してチェックポイントだけ着陸して、選手交代して、また飛ぶのだな。
コースを確かめる。
走路は山道で、馬とかだと結構苦労しそうだね。
山岳なので、坂もきつい。
スレイプニルだと有利そうだ。
というか、飛ぶ騎獣を計算に入れたレースじゃないよなこれ。
《私もレースでは飛ぼう》
「そうだねえ」
エルヴェ部長はスレイプニルをてってこ走らせていた。
意外に騎乗が上手いな。
「しかし、騎獣が買えるか買えないかで勝負が決まってしまうのは難だね」
「そうなんですよ、一頭二頭ならまだ良いのですが、全員ペガサスはあまりにも酷いのです」
「レースのコースは毎回ここなの?」
「いえ、今回はプートリーの山岳コースですが、平地の多いコースもありますよ。毎年変わるんです」
そうかそうか、だったらホルボス山でもやれると良いなあ。
はちまき道路出来たし、ホルボス村から出発して地獄谷経由して山頂経由で戻ってくるとか良いね。
レースの委員会に提案して勧誘しようっと。
五カ所のチェックポイントがあって区間は六区間であった。
ゴールはプートリー山山頂なのだな。
「ありがとう、参考になったわ」
「聖女さまも出られるなんて夢のようです、その素晴らしい竜馬で出走なされるのですか」
「そう、ペガサスの事を聞くと空を飛びたく無くなるけどね」
「羽が生えている騎獣は飛んでも良いと思いますよ。有利だからと金に物を言わせてペガサスを揃えるのが下品なのであって、騎獣は縁ですからね」
「ありがとう、当日は正々堂々戦いましょう。といっても魔法学園もそんなには強くないんだけどね」
「ええ、でも楽しみましょう」
エルヴェ部長はにっこりと笑った。
良い笑顔だなあ。
良い坊さんになりそうな人だ。
レースでの再会を誓い合って神学校騎乗部と別れた。
さすがに坊さんの学校だけあって、みんな大人しい感じだ。
聖騎士系の生徒はいないのかね。
あ、騎士系は騎士学校か。
一応、聖騎士団にも伝令、索敵に少人数のペガサス騎士はいるけどね。
ヒューイを飛ばして王都へと向かう。
なかなか有意義な散歩だったな。
《あそこでレースか、楽しみだな》
「ありがとうねヒューイ、助かったわ」
《なんの気にするまいぞ主よ》
さあて、帰るかなあ。
そういや今日は月曜日だから聖女の湯の日だった。
もうメリッサさんたちが入れたかな。
今日から、また新作の湯の素だし。
西門前に降りて門をくぐる。
冒険者カードを掲示すればいいだけだから楽よね。
門番のおじさんが笑顔で行って良いと手を振った。
門を抜けて、また宙に舞い上がる。
というか、やっぱり飛行すると色々楽よね。
大神殿上空を飛び越して……。
おおっと、アダベルが練兵場に着陸する所だな。
手を振るとアダベルがうなずいてくれた。
籠の中の子供達も手を振ってくれる。
彼女達の上を飛び越して学園の校門前で降りた。
もうすぐ夕暮れだね。
空が暗くなり始めた。
《では主よ、私は厩舎に行く》
「送って行かなくて大丈夫?」
《平気だ、では》
ヒューイは私を女子寮前で下ろすとスタスタと厩舎の方へ歩いていった。
なんというか、手間いらずな騎獣だなあ。
ありがたい。
さて、女子寮に入り階段を降りて大浴場へと入る。
服を脱いで浴室に入ると、カロルとメリッサさん、マリリンが居た。
「あ、聖女の湯の素入れてくれた?」
「うん、今入れたわ、新作」
「綺麗な乳白色の湯ですわね」
「良い香りですわあ」
私もかけ湯をして浴槽へと入った。
おお、効く効く、染み入るねえ。
とろっとした肌触りで、良い匂いがする。
「マコト、今日はどこに行ってたの?」
「プートリー山に行ってきた。なんだか騎士学校騎乗部と神学校騎乗部が揉めてたよ」
「あら?」
「夏のレースの会場がプートリー山だったみたい、騎士学校が練習場を独占しようとして難癖つけてたよ」
「大変ですわねえ」
「神学校だと、マコト様に好意を抱かれたのでは無いのですか」
「ああ、うん、ファンだったよ」
「それは良かったわね」
「うん、良かった、レースのコースとか教えてもらったよ、参考になった」
「夏の騎乗レースは王都の五つある各種学校の騎乗部が参加するのですわ。魔法学園、騎士学校、神学校、師範学校、農学校、の五校ですわよ」
「そうなんだ」
師範学校は学校の先生を作る学校で、農学校は農業の学者さんとかを作る学校だね。
騎乗部あったんだなあ。
「わが魔法学園の戦績はどんなもん」
「毎年、農学校と最下位争いですわよ」
「うわ、意外と農学校強い」
「騎獣生産の農家もおりますからね」
「そうかあ、今年はなんとか勝ちたいねえ」
「マコトとヒューイが強くても、他の部員さんがね」
「そうですわね、団体戦ですので」
ヒューイと部長のケルピーのジョガーが特殊騎獣で、あとの部員は普通の馬だからなあ。
山道を行くのも大変だ。
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