第1283話 お昼は『蓬莱寿司』に行こうではないか
アップルトン王都には蓬莱の料理屋さんもある。
んでー、寿司屋もある。
乙女ゲームだからなんか在るんだ。
この内陸の王都にどうやって鮮魚運んでるのかは知らないが、きっと冷凍魔法とか使っているのであろう。
ゲームのデートの場所としてもあって、ケビン王子とかロイドちゃんとか王族を連れて行くと喜ばれる。
カーチス兄ちゃんはあまり好きじゃ無いようだ。
というわけで、『蓬莱寿司』さんの前に聖女派閥全員で来てみました。
というか王家主従もいる。
「寿司か……」
「生魚をライスボールに乗せて食べる珍味……」
「あまり食べた事が無いわね」
「さあ入ろう」
私はお昼にお寿司が食べられるのでテンションが上がっているが、生粋のファンタジー世界人であるみんなには抵抗があるかもしれないなあ。
まあええんじゃ、きっと美味しい。
というか、前に来たときは美味しかった。
普通に前世の寿司であったよ。
お店に入る。
「へいらっしゃいっ」
元気な板さんが出迎えてくれた。
お客さんの入りはほどほどだね。
「十八人入れるかな?」
「個室にどうぞ~」
おお、個室が空いていたか。
なにしろ王子様が居るのでなあ、カウンター席とか目立ちすぎなのだな。
ランチメニューは、にぎり1.5人前か、海鮮バラちらしであった。
「バラちらしってどういうものかしらマコト」
「お魚とかばらばらに入ってご飯の上にのっている感じ。にぎりは握ってあるよ」
「にぎりがいいのかな?」
「そうだね、お箸が使えないと厳しいかも」
「お匙がつきますから、大丈夫ですよ」
仲居さんにそう言われた。
「私はにぎりで」
「じゃあ、わたしはバラちらしで」
コリンナちゃんはにぎりを頼んでいた。
「蓬莱のお寿司はこれで二度目かな」
「あまりパーティでもでませんからな」
意外に王族でも食べないんだなあ。
蓬莱料理だからなあ。
大陸の東端だ。
乙女ゲームだから平気な顔で存在しているが、ちょとガチ目のファンタジーだと出ない料理だろうなあ。
お、湯飲みに緑茶が入れられて運ばれてきた。
ああ、懐かしい匂いだなあ。
「あら、香ばしい感じのお茶ね」
「グリーンティーだ、目が覚める感じだね」
カロルは店内を見渡して、お座敷に目を付けた。
「あっちはストローマットに座るのね」
「割と床にぺたんと座るのは難しいから椅子の方が良いよ」
「そうなんだ、マコトは良くしってるわね」
まあ前世で体験してるからね。
ランチのにぎりとバラチラシが運ばれて来た。
うん、にぎりは桶の中に綺麗におさまっているね。
「わあ、なんだか綺麗な食べ物だなあ、赤いのとか白いのとか」
「赤いのはマグロ、白いのはイカよ」
「バラチラシも綺麗ね、目に楽しいわ」
海老の入ったお味噌汁と茶碗蒸しも来たね。
ひゃあ、美味しそう。
「いただきまーす」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
にぎりを箸でとってぱくりと食べる。
んーー、お寿司久しぶり。
やあ、コハダ美味しいなあ。
「これは、お醤油掛けるのかな」
小皿にワサビを少し取ってお醤油で溶かして、カロルのバラちらしに回し掛けをしてあげた。
「わあ、ありがとうマコト。ん~~、わあ、ぷちぷちで美味しいっ」
「わあ、ご飯が壊れた~」
「お醤油の中におちたー」
「ああ、美味しいみょん、好きな味だみょんな、赤いのおいしい」
「私は桃色が好きだな、うん、滑らかな感じだ」
「わはは、美味い美味い」
カーチス兄ちゃんがバラチラシをお匙でざばざば食べていた。
んー、お寿司もお味噌汁も茶碗蒸しも美味しい。
「ちょっとしょっぱいプディングね、面白いわ」
「遠い異国のお料理が食べられて楽しいですわね」
「生のお魚と聞いて大丈夫かなと思ってましたけど、お酢のご飯と良い調和具合で素晴らしいですわね」
「うん、ここのお寿司は美味しいね」
「そうですな、今度晩餐会にでも呼びますか」
「そうだね、父さん母さんにも食べさせたい」
おお、なんだか王宮御用達になれそうだね。
あー、卵美味しい。
やっぱり日本料理は目に楽しくて美味しくて良いよね。
「マコトはニギリを食べ慣れているわね、上手いわ」
「私はすぐご飯が落ちてしまうのに」
「まあ、箸での掴み方にコツがあるのだ、コリンナちゃん」
「むずかしい」
「手で握っても良いんだよ」
「そうなのか!」
私はブリを手で摘まんでお醤油を付けて食べた。
「ああ、箸よりも楽かも、おお、ご飯も落ちにくい」
それでも、コリンナちゃんはご飯をぽろぽろと落としてるけどね。
「海老のミソスープも美味しい」
エルマーもニコニコしながら食べているな。
「あ、おねえさん、コーン軍艦は作れますか」
「あら、マイナーなネタを知ってますね、ええ出来ますよ」
「あそこの男の子に一皿作ってあげてください」
「かしこまりました」
エルマーがなんだいという目でこちらを見ているが、まあ、驚け。
しばらくして大将の元から仲居さんがコーン軍艦をエルマーに運んで来た。
「こ、これは……!」
「マヨコーンのお寿司だよ」
エルマーはコーン軍艦を一つつまむと口に入れた。
「うまい……!」
「でしょ」
「あと三……、いや、五皿欲しい……」
「うは、食い過ぎだよ、エルマー」
「マヨコーンだからしかたがないのだ……」
エルマーはマヨコーンをバクバク食べて良い笑顔を浮かべたのであった。
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