第1279話 日曜の朝一に王城へと向かうぜ
部屋を駆け回る荒くれマメちゃんに起こされて私はベッドから体を起こした。
一瞬どこだと思ってしまったな。
そうだ、男爵家の私の部屋であった。
マメちゃんは新しい場所が嬉しいのか、飛び回っているね。
用足しをして洗顔、そして制服に着替えた。
朝だからコリンナ二等兵を追い回したい所だが、まあ日曜の朝なので見逃してやろう。
ダルシーが出て来て私の髪をブラッシングしてくれた。
なかなか気持ちが良い。
ダルシーとマメちゃんと連れだってリビングに行くと、お養母様とお義姉様が朝食の支度をしてくれていた。
「もう出かけるのかね」
「はい、お養父様、王城でアライドの飛空艇船長の公爵令嬢と会う約束がありますの」
「おお、それはそれは、楽しそうだね」
「ジーンにアライドに、マコトちゃんの世界がどんどん広がっていくわね、そのうち新大陸や蓬莱までも行ってしまうのでしょうね」
「蓬莱は行ってみたいですね」
偽中国の芙蓉も行ってみたいけど、やっぱさあ、偽日本の蓬莱には行ってみたいわけよ。
時期的には幕末かな、明治かな。
戦国って事はなさそうなんだけど。
男爵家のみなさんと朝ご飯をご一緒してから家を出た。
ジャンヌお義姉様は今日は実家でお養母様とご一緒されるそうだ。
新しい家族が増える感じでキンボール家としてめでたい感じだね。
男爵家の門を出たら、空からヒューイが降ってきた。
《きたぞ》
「お、おう」
鞍も付いているなあ。
なんという便利な騎獣なのか。
とりあえず鞍に乗って、ダルシーに手を伸ばした。
彼女は私を抱えるように後ろに乗った。
私はヒューイを駆って空に舞い上がった。
マメちゃんは鞍の影から頭だけをぴょこんと出して居た。
ふわあ、やっぱ空を行くのは爽快だね。
大神殿の上空を飛び、ひよこ堂を飛び越した。
校門の所で着地して、地を駆って学園に入った。
そのまま飛び上がり、女子寮の五階、カロルの部屋の前まで飛ぶ。
私を見つけて目を丸くしたカロルが窓を開いた。
「おはようカロル」
「おはよう、朝からヒューイなんだ」
「うん、勝手に来た、便利便利」
《我は便利》
「いま準備をするわ、玄関で待ってて」
「はいよう」
私はヒューイの手綱を引いて女子寮の玄関へと降り立った。
護衛女騎士さんが渋い顔をしていたが、まあ気にすまい。
程なくしてカロルが出て来た。
ダルシーがなんだか居なくなっていたのでカロルをヒューイの上に引っ張り上げた。
学園の王城門にむけてヒューイを歩かせる。
カロルと二人乗りの感じは何か良いよね。
王城門にさしかかると門番さんが寄ってきた。
「あ、聖女さまいらっしゃいませ、どうぞどうぞ」
「ありがとう」
門が開いたのでヒューイを進ませる。
見上げるとみたことの無い飛空艇が三階の飛空艇発着場に着艦する所だった。
あれがアライドの『成層圏の召雷号』か。
「なんだか機能的ですっきりしたデザインの船ね」
「なんだか速そうだわ」
そんなに大型の船じゃないね。
蒼穹の覇者号を二回りぐらい大きくした感じの中型飛空艇だ。
特筆すべきは甲板に大型の魔導バリスタが取り付けられているね。
武装船だな。
王城の勝手口で、ジェラルドとケビン王子がいた。
「やあ、おはよう、きたね、キンボールさん、ヒューイで来たのか」
「おはよう、オルブライト嬢も来たか」
「飛空艇令嬢だとカロルも紹介したいしね」
「うむ、では、発着場に行こう、ヒューイ号は馬屋に」
「ははっ、解りました」
馬丁さんがヒューイの手綱を取った。
私とカロルは彼から下りた。
「また後でね」
《いつでもよべ》
ヒューイを見送りながら王城へと入った。
「ウエストン家の悪者はアライドに渡しちゃうの?」
「あまり拘留していてもな、新しい情報もでてこないし」
「とりあえず、女王に貸しを作る感じだね」
私たちはふかふかの絨毯を踏んで王城の階段を上がって行く。
マメちゃんが影から出て来てちょこまかと歩くので可愛い。
三階の飛空艇発着場には王様と王妃様が居て、ウエストン家の悪者共が縛られて座らされていた。
「おお、マコト嬢、きおったか」
「向こう様からのご要望ですからね」
「すまないわね、聖女さま」
「良いんですよ」
『成層圏の召雷号』のタラップが下りてきて、のっぽの美少女が降りて来た。
船長帽をかぶっているから、この子がメリンダさまかな?
彼女は私とカロルを見て目を笑わせた。
「初めまして、アップルトン王家の皆様、私が『成層圏の召雷号』の船長、メリンダ・ウインターです」
そう言うとメリンダさまは敬礼をした。
「これはこれは、高名な船長令嬢のメリンダ嬢と会えて嬉しくおもうぞ」
「遠くアライドからよくいらっしゃったわね」
「いえ、我が国の愚か者がご迷惑をおかけしました。よし、こいつらを積み込んでください」
「「「はっ!」」」
騎士っぽい人が三人、ウエストン家の連中の縄尻を持って『成層圏の召雷号』へと連行していった。
「はじめまして、僕がこの国の第一王子ケビンです。こちらは宰相候補のジェラルド、そして、聖女候補のマコト・キンボール嬢と、錬金で有名なカロリーヌ・オルブライト嬢だよ」
「まあ、あなたが聖女さま、そして錬金令嬢さんね、初めまして」
メリンダさんは微笑んで踏み込み、私の手を取って握手をしてきた。
おお、でっかくて力強い令嬢だなあ。
「はじめまして、蒼穹の覇者号の艇長、マコト・キンボールです」
「副艇長のカロリーヌ・オルブライトです」
二人で並んで敬礼をすると、メリンダさんも敬礼を返してくれた。
なんか、良い感じの人だな。
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