第1278話 土曜は久しぶりに男爵家に泊まる
放課後をせっせと勉強に費やす。
みんなも真面目に勉強しているね。
ブリス先輩なんかは親身になって一年生、二年生に勉強を教えている。
ユリユリ先輩は優雅にお茶を飲んであたりをゆったりとみている。
というかさぼってるなあ。
でも三年生だからあくせく勉強しなくてもいいのかもね。
後輩の勉強を見ろやあ、とも思うが、まあ、勉強はあまり得意では無いのかもしれない、ユリユリ先輩だし。
土曜日なので、放課後、みっちり勉強会をすると相当長い。
ちょっと疲れるので長めのお茶の時間をとった。
ダルシーが入れてくれたお茶を飲みながら、ノートをぺらぺらめくって進捗を確かめ。
四分の一ぐらいか、まあまあね。
《どこかへいこう》
ヒューイが念話で誘って来たが勉強中である。
(ごめんね、テストが終わったら乗ってあげるから)
《ざんねんだ》
ああ、ヒューイに乗って遠乗りしたいなあ。
だが、試験前なので我慢我慢。
エルマーに魔術理論を教わって、ノートを書き写す。
とりあえず理解するよりも暗記が先だな。
だんだんと脳に染みこむ系の学問なのであろう。
「マコト、今日は男爵家に泊まるの?」
「うん、久しぶりにキンボール家でご飯を食べて寝るよ」
「私も晩餐を一緒にする予定よ」
ジャンヌお姉さんも一緒か。
「ブラッドお義兄様が帰って来ますか?」
「ううん、私だけ、もうすぐ結婚式だからお養母様と打ち合わせなのよ」
「それは楽しみですね」
「そうなのよ~~」
もうすぐ結婚式かあ、お義兄様、お義姉様にとっては一生の思い出でしょうからねえ。
「ハネムーンはどこにいらっしゃりますの?」
「ビタリに船で行くつもりよ、総本山に参拝してくるわ」
む?
人工聖女を作っている派閥とか大丈夫だろうか。
キンボール家の人間と解るだろうしなあ。
まあ、お義兄様、お義姉様を害するような悪者がいたら、この世に存在した事を呪うぐらいの目に遭わせますけどね。
四時頃に勉強を切り上げた。
みんなはお風呂に入ったり、晩餐まで自由時間を楽しんだりするようだ。
私は、お義姉様と一緒にキンボール家に行きますよ、はい。
「それじゃあ、また日曜日の朝にね、マコト」
「そうね、おお、そういやジェラルドに日曜に来いって言われてたんだ」
「何がある?」
「アライドから飛空艇が来て、その船長が公爵令嬢なので挨拶をしたいとの事だよ」
「飛空艇パイロットの御令嬢がいるのね」
「私とカロルが唯一の存在かと思ってたね」
「飛空艇マニアのメリンダ・ウインター公爵令嬢ですわね。アライドが保有する二隻の飛空艇のうちの『成層圏の召雷号』の船長ですわね」
さすがユリユリ先輩は他国の貴族の情報も詳しいな。
飛空艇マニアなのかあ、エバンズと話が合いそうだな。
「秋に会うのが楽しみね、マコト」
「カロルも明日、来てみる?」
「そうね、邪魔にならないなら一緒に会いたいわ」
「来てくれると嬉しいよ。知らない人と会うのはおっくうで」
「何を言ってるのよ、マコトは誰ともすぐお友達になっちゃうじゃないの」
「そんなことはないですよ」
それは誤解だ、カロル。
わりとアライド王国の人間は底意地が悪そうで怖いんだよ。
偽ブリカスだからねえ。
カロルに日曜朝一で王城で会う約束をして、お義姉様と一緒に集会室を出た。
他の派閥員はおしゃべりをしたり、お風呂に行ったりする模様。
カロルは錬金作業だな。
お義姉様と肩を並べて校門を出る。
「やっぱり、聖女候補ともなると近くにいるお友達も粒ぞろいよね」
「なんか、凄い人、良い人が集まりましたよ」
「運命なのかもね、きっと何人も偉人が出るわ、コリンナちゃんとか」
「コリンナちゃんは、なんかやってくれそうですよね」
「女性で財務省に入れたら凄いわね、歴史書に載るわね。カロリーヌさんも、ヒルダさんも凄いわよね」
うむ、振り返って見ると、派閥員の質がおかしいはおかしい。
なんだか、次世代のアップルトンのSクラス人材が集まったんじゃないかというぐらい凄いよね。
ありがたい事だよ。
人は石垣、人は城だしな。
「お、マコト、大神殿か」
「ちがうよクリフ兄ちゃん、キンボール家に泊まるのさ」
「ああ、そうか土曜日だしな」
「お義姉様、これはクリフ兄ちゃん、私の実兄ですよ」
「これは初めまして、クリフさま、このたびキンボール家に嫁いでくるジャンヌと申します、よろしくお願いいたします」
「うえええ、ブラッドさんのお嫁さんのジャンヌさん、初めまして、クリフです、ど平民なので、そのように丁寧にされてしまうと困ってしまいます、頭をお上げください」
「一度会ってみたいと思っていましたのよ、今後ともよろしくおねがいいたします」
「いえいえ、こちらこそ、至らない妹のお世話をいつもありがとうございます」
失敬だな、クリフにいちゃん。
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