第1275話 集会棟へ空いた部屋を見に行く
晩餐が終わり、ダルシーの入れてくれたお茶も飲み干した。
「さ、ちょっくら空いた集会場を見に行くかな」
「今から？」
「今から」
「今では事務所が開いていませんが、まあ、なんとかしましょうか」
ヒルダさんがニヤリと笑ってヘアピンを抜いた。
おお、諜報系の人は鍵開け出来るんだね。
「ご一緒しますわ」
「見ましょう見ましょう」
さあ、夜の内覧だな。
みんなで食堂を後にしてエレベーターで地階に下りる。
カロルとコリンナちゃんも一緒に来たな。
地下道の風景は昼でも夜でも、あまり変わらないね。
武術場口から地上に出る。
空にはまんまるのお月様だね。
暖かくて良い夜だな。
集会室に着いた、上の方の部屋では灯りがついたりしてるね。
夜に集会してる人達も居るのかな。
いつもの115号室の横に階段があって、それを登っていく。
三階には五つの集会室があった。
どれだろう。
「一つだけ、看板が着けられていませんね、ここでしょう」
お隣は社交ダンス研究会、空き部屋、その隣は新聞部であった。
おお、新聞部の部室はここだったのか。
基本的に集会棟は文化部の部室が多いみたいね。
運動部の部室棟は、また別にあるんでしょう。
カチャン。
ヒルダさんが部屋の鍵をヘアピンで開けおった。
こっそりと中に入る。
お、意外に広いね。
『ライト』
ちょっと大きめの光球を作って浮かせる。
「115号室の倍ぐらいの広さかな」
「設備は、キッチンと、おトイレ、メインのお部屋と、サブ部屋が一つですね」
夜会部が抜けた部室は、なんだかガランとして広かった。
家具が無いと殺風景なものよね。
「なかなか良いんじゃ無いか？ 一ヶ月の借り賃にもよるけど」
「115号室の倍ぐらいじゃないかな」
みな、思い思いに内覧していた。
さあて、借りる感じで進めて良いかな。
「夏前に引っ越しをして、二学期から使いましょうか」
「賛成、エレベーターはあるの？」
「奧にあったよ」
「それなら簡単かな」
夜会部を作って、広い集会室を借りて、でも麻薬に関わって堕落して行ったのか。
なかなか無情感漂うね。
「ああ、家具とか、お絨毯とか新調したいですわ」
「今ある家具を組み合わせてレイアウトですわあ」
「インテリアはメリッサさんとマリリンでやってみる？」
「「やりますわっ」」
お洒落組はファッションとかインテリアとかに詳しくていいね。
レイアウトは頑張ってくれい。
キッチンに入ってみた。
まあ、普通のサイズのキッチンだね。
魔導冷蔵庫と魔導コンロが備え付けられている。
魔導オーブンは無いみたいね。
お茶は入れられるが、本式の料理はちょっとキツい感じか。
まあ、構わないかな。
存分に内覧したので廊下に出る。
ヒルダさんが、またヘアピンで施錠してくれた。
「あら？」
お隣のドアが開いて、新聞部のレイラさんが現れた。
「聖女さま、お隣に聖女派閥が来るんですか？」
「その予定よ。お隣さんなのでよろしくね」
「とんでもない、助かりますよ」
レイラさんは新聞部の聖女派閥番だからね。
仲良くしていて損は無いな。
「本決まりになったら挨拶にくるね」
「はい、放課後でしたら、みんないますよ」
「今日は遅いんだね」
「今日は残業ですよ、今、帰る所です」
そうだったのか。
部室を施錠したレイラさんと一緒に、みんなでエレベーターに乗る。
ここは身分差で使用禁止とかは無い見たいだね。
高いお金の集会室代を取れる集団だから気にしなくて良いのかな。
「レイラさん、女子寮？」
「そうですよ」
「じゃあ、武術場の所から地下道を通って行きましょうよ」
「わ、助かります。女子寮のどこに出るんですか？」
「地階の洗濯室の隣に出るわよ」
「ああ、あそこに」
みなでぞろぞろと歩いて武術場倉庫から地下道へ。
「ああ、ここから地下に入れるんですか」
「そうそう、あっちの方が蒼穹の覇者号の格納庫、あっちが図書館の地下へ、こっちが女子寮よ」
「わりとあちこちに繋がってますね。図書館に行けるのは良いですね」
レイラさんを交えて女子寮に戻ってきた。
エレベーターホールで解散である。
私はエレベーターで上がっていくカロルたちを見送って、メリッサさんと、マリリンと、コリンナちゃんで階段を上がる。
「意外と良い部屋でしたわね」
「広くて使いやすそうだ」
「お金は大丈夫でしょうかしら？」
私はコリンナちゃんの顔を見た。
「とりあえず、聖女の湯の素の売り上げが堅調、ドライヤーやランプ、錬金キットのロイヤリティーもかなり入ってくるから、集会室を変えても問題は無い」
さすがはコリンナちゃん、なんだか説得力があるぜ。
というか、意外と堅調なのかー。
ちょっとした事業でお金が入ると良いね。
うししし。
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