第1271話 ホルボス村で池の取材をする
王都からホルボス村はそんなに遠く無い。
空を行けば、すぐそこだよね。
村の広場にひらりとヒューイを下ろしたら、子供達が寄ってきた。
「マコ姉ちゃんっ」
「今日は何?」
「今日は池の取材よ」
「「「池?」」」
説明しないと良く解らないよね。
「今、アダベルとトール王子とかの絵を描いていて、池で釣りをしてる絵なんだけど、現場をスケッチしようと思って」
「トールと私の絵!!」
「え、私は私は?」
「ティルダ王女も描いてますよ」
「わあいっ」
私はヒューイから下りた。
「今回は孤児院の子供は出てこないけど、別に描くから」
「そ、そうなのね」
「わあ、楽しみ~~」
「マコト、絵が見たい、もうあるのか?」
「まだ下書きぐらいよ、もうちょっと待ってね、アダベル」
「わ、解った!」
「じゃあ、今日はみんなで池に行こう」
「「「「行こう行こう」」」」
子供達と一緒に池を見に行く事となった。
「マコねえちゃん、ヒューイに乗って良い?」
「ヒューイ乗せてくれるかしら」
《よいぞ》
そういってヒューイはちびっ子を一人くわえて背中に乗せた。
子供達は歓声を上げてヒューイの上に乗った。
沢山乗ったけど、結構平気だね。
ヒューイは涼しい顔で歩いている。
池は村の外れにあった。
畑などの用水に使われる池みたいだね。
「聖女さんも釣りをするか?」
「そうね、竿を貸してくれる?」
「うん、俺の竿を使うと良いよ」
村の子供のセルジュが私に自分の竿を渡してくれた。
「餌はミミズだよ」
餌箱もくれた。
トール王子や、アダベルなんかも竿にミミズを付けて池に放り込んでいた。
思ったより広くて深そうな池だなあ。
やっぱり実際に来てみないと解らない物だね。
浮きが二回水の中に引っ張り込まれて沈んだ。
うおっ!
咄嗟にちょっと上げたら針が引っかかったのか、水の中で何かが暴れている。
水はよどんでいるので、中は見えないね。
無詠唱で『サーチ』を掛けて見る。
おおお、結構、池の中に魚がいるね。
一匹、私の仕掛けをくわえて大暴れしている。
「聖女さん、慎重に慎重に」
「わ、わかった」
おおお、右に左に魚が暴れるね。
トール王子がたも網を出してくれた。
とりあえず慎重に竿を立てて魚を引っ張り上げていく。
しばらく暴れていたのだけど、観念したのか、動きが弱くなり、水面近くにフナが顔を出した。
「やったあ、聖女さん」
「フナだ、おっきいね」
トール王子のたも網の方へ魚を誘導してすくい取って貰った。
おおお、魚ゲットだぜ。
なんか、釣れると面白いね。
「マコト、釣ったなあ、凄いぞ」
「ありがとうアダベル」
「僕も釣るぞ~~」
トール王子のテンションも上がった。
針外しでフナから釣り針を外し、ちょっと『ヒール』を掛けてあげた。
「食べれるの、これ?」
「ちょっと泥臭いけど、美味しい」
なるほどね。
まあ、邸宅の夕飯になればいいか。
ミミズを針に付けて、また池の中に送る。
ポチャンと音を立てて、ミミズは沈んでいく。
「よし、来た!」
トール王子の竿に何かが引っかかったようだ。
ぐいぐい引くのを上手にいなして引き上げると、ナマズであった。
変な顔の魚だなあ。
「ナマズはフナより美味い」
「そうなんだ」
「釣りはいいなあ」
「トール王子は釣りが好きなの?」
「サイズに居た頃はやった事が無かったんだけど、試しにやったら凄く楽しかった」
「トール王子は才能があるからなあ」
「そう、夏のバカンスは孤島だから、海釣りする?」
「「「「するっ!!」」」」
うお、トール王子だけじゃなくて、村の子供とアダベルまでもが力強く返事をしおあった。
「海釣りは道具違うんだよなあ」
「大きいリールとか必要だな」
「地元の貴族の人に聞いてみるよ」
シルビアさんは魚釣りとか詳しいかな。
聞いて見よう。
最悪の場合現地で漁師さんに教えてもらえばいいしね。
魚釣りは楽しそうだ。
収納袋からノートを出して、池の周りの木々をスケッチした。
景色も良いし、良い風の吹く、良い場所だなあ。
「この池の名前は?」
「ため池」
「夢も希望も無い名前の池だねえ」
「池はまあ、村人にとっては、用水の一つだからね」
あまり小洒落た名前は付かないのか。
うーむ、池の近くの木々の成長の仕方が独特だよなあ。
水際を木炭でスケッチスケッチ。
子供達と遊んでいたら、良い時間だった。
「参考になったわ、そろそろ学園に戻るから」
「おう、今日はまたくるか?」
「特に用事が無いから来ないかな」
「そうか、気を付けて帰れ」
「解ってるよ」
アダベルに言われなくてもねえ。
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