第1266話 勉強会初日はみんな頑張る
勉強会は盛りあがっていても、あまり華やかな物では無いのである。
とりあえず、植物紙ノートの在庫はテーブルに積んでおいた。
やっぱり成績の良い人はノートも、いっぱい使っているね。
紙面をケチっている人は勉強が出来ないようだ。
私はエルマーにノートを貸して貰って、ガドラガ一週間の穴を埋めるぞ。
私がノートを書き写すと、次はカロルであるな。
解らない所はエルマーに聞こう。
とつとつと喋る奴だが、内容は論理的なので解りやすい。
なるほどなるほど。
解りやすいな。
カロルと二人してエルマー先生の講義を聴いていたら、奴はなんか照れて詰まった。
「注目してはいけない……」
「良いじゃん、解りやすかったし」
「やっぱり物事の理解力が違うから良いわよね」
「なんだか、面はゆい……」
まあ、ずんずんと進めて、受けて無い期間の授業内容を理解して覚えよう。
みんなで真面目にもくもく勉強しているので、割と静かであるな。
剣術部のカーチス兄ちゃんが心配である。
あと、ロイドちゃんとジュリエットさんが来て無い。
「ダルシー、ロイド王子とジュリエットさんはどこ?」
「……、観劇だそうです」
「にゃろうめっ」
ロイドちゃんは良いんだ、あいつは王家派閥とのコウモリやろうだからね。
問題はジュリエットさんを連れて行って仕舞う事で彼女の勉強が遅れる事だなあ。
ジュリエットさんのお家は魔法研究の家だから地頭は良いんだけどなあ、厨二病ではあるが。
なんとかしないとなあ。
コリンヌさんは、ブリス先輩に勉強を見て貰っていた。
さすがはブリス先輩だぜ。
ちなみに、ライアンも一緒に聞いている。
ライアンは当てにならないっぽいな。
なんだかんだいってみんなで勉強するのは楽しいね。
なにげに捗る感じだ。
カロルのノートの取り方を教えて貰ったり、私のノートの取り方を教えたりする。
人によって色々な方法があるね。
さっそくカロル式をメリッサさんとマリリンが真似をしている。
「まあ、このやり方だと、解りやすくなりますわ」
「後で注記するスペースがありますわ」
「余裕を持って行を取るのがコツよ」
ああ、なんという地味な光景だが、とても学生らしい風景である。
とりあえず、二時間ほど勉強をしたので一休み。
「カロル、聖女の湯の素を作りに行く?」
「行きましょうか」
そういう事になった。
私たち二人は集会室を後にして、女子寮のカロルのお部屋に向かった。
カロルと一緒だとエレベーターを使えるので楽だな。
マメちゃんが目をさまして影から出て来た。
「あら、マメちゃん、オッキですかあ」
カロルが猫なで声を出してマメちゃんを抱き上げた。
「わんわんっ」
ぐりぐりとカロルがマメちゃんを可愛がっているうちに、エレベーターは五階に到着した。
カロルの部屋まで来ると、アンヌさんがドアを中から開けてくれた。
いつの間に。
カロルはマメちゃんを抱いたまま、錬金室に入った。
「さて、初夏の聖女の湯はどんな風にしましょうか」
「汗対策で、さっぱり系かな、あと、熱気で具合が悪くなるかもだから、体調を整える系で」
「そうね、アルニカと、サンザシで保湿、イランイランで匂い付けをしましょうか」
「おお、なんだか効きそう!」
ハーブの種類は解らないからなあ。
カロルは貯蔵庫からハーブを出して来て細かく刻み純水を入れた錬金釜に入れた。
うわ、もわっとお花の匂いだなあ。
火の魔石で温度が上がった錬金釜をゆっくり混ぜ棒で混ぜていく。
ちょっとずつ、魔力を付与していく感じでね。
グールグル、グールグル。
ハーブが混ざり合い、複雑な良い匂いになってきたな。
グールグル、グールグル。
混ぜ棒がどんどん重くなって、動かせない、ぐらいに重くなった瞬間、ボワンと煙が出て、動きがスムーズになる。
匂いもなんだか変わったね。
「ちょっとピンク色だね」
「そうね、アンヌ、充填してちょうだい」
「はい、お嬢様」
アンヌさんが出て来て、小瓶と中瓶に出来た薬液を詰めていった。
これで一ヶ月ぐらいは大丈夫だろう。
「ホルボス山温泉の素はどうよ? 売れてる」
「売れているわね、聖女の湯を買いたくても手が出ない人が代わりに買っているわよ」
そうか、まあ、地獄谷で取られた新鮮な湯の華だしね。
成分に間違いはないだろう。
「じゃあ、私は厩舎に行ってくるよ」
「ヒューイによろしくね」
「わかったー、マメちゃん、おいで」
「わんわんっ」
マメちゃんは走って来て私の影の中に跳び込んだ。
影犬は便利だよねえ。
カロルは錬金薬の在庫を増やすために、色々と作るようだ。
よく働くよなあ。
というか、カロルが居ないのでエレベーターが使えず、階段を一段飛ばしで駆け下りた。
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