第1263話 お昼は外食に行こう
食堂で朝食を食べて、みんなで登校である。
梅雨が上がったのでちょっと暑いぐらいだね。
来週から夏服に衣替えっぽい。
いや、上着が無くなって、薄手のシャツになるだけだけどね。
A組に入ってカロルと雑談をしながらアンソニー先生を待つ。
程なくして先生が入って来て、ホームルームである。
そろそろ期末テストなので、勉強の方を頑張るように、との事。
A組は選ばれたクラスなので気を抜くとすぐB組落ちしてしまうそうだ。
組分けは一年に一回なので、一度落ちるとなかなか取り返すのは大変なんだそうだ。
卒業までに、あと二回しかチャンスが無いんだなあ。
来年はコリンナちゃんがA組に確実に上がってくるので、だれか一人はB組落ちになるんだろうな。
まあ、麻薬禍で、A組からは三人ほど居なくなったので、その分の余裕はあるんだけどね。
聖女派閥が全員A組に昇格すると、何人かはB組行きだなあ。
なかなか厳しいジャングルの掟なのだ。
ホームルームが終わって起立礼。
木曜の授業は文系が多いね。
国語の先生が来た。
国語、社会、魔物学、美術と受講して、お昼であるな。
「今日は晴れてるから外食しようぜ」
「しようぜって、カーチスや、どこか目星ついてるの?」
「ない!」
堂々とした奴だな。
王家主従が、一緒に外食に行きたそうにしていたが、木曜日は駄目である。
「君らは、ビビアンさまへの接待をしてくるのだ」
ケビン王子はあからさまにばれたかという顔をした。
「それは残念」
「まったくですな」
うるせえ、黙って行け、王家主従め。
さて、実際どこに行こうかな。
派閥員の関係のあるお料理屋は、カロルの薬膳料理を残すだけだなあ。
とりあえず薬膳は絶対行きたくねえ。
「まあ、劇場の方に歩いて、適当に入ろうぜ。見当たらなかったら、ブロウライトの肉酒場だ」
「あの凄い肉の店か、まあ、良いか」
派閥員を拾いながら階段を下りて、玄関から出た。
「今日はどこですの?」
「適当に歩いて、ランチを食べる」
「行き当たりばったりですわね、でもそれも楽しそうですわ」
ゆりゆり先輩が上品におほほと笑った。
皆でぞろぞろと王都中央通りを歩く。
初夏だから爽やかな感じだね。
ちょっと暑いか。
お、ひよこ堂の前にクリフ兄ちゃんがいるぞ。
「おー、にいちゃん、最近街で美味い食事屋の噂を聞かないか?」
「あはは、派閥の皆さんと外食か、そうだなあ、下町にカリイ屋という店が出来たらしい。ツバメ食堂系列だそうだ」
カレーか!!
カマラさんは何と素晴らしい仕事をしてくれるんや。
「カレー食べようカレー、にいちゃん、情報ありがとう、カリーはパンの餡にすると人気出るぞ」
「おお、食べた事があるのか、マコト」
前世でだがな。
きっとカマラさんが作るのだから、美味しいに決まっている。
うん。
「マコト、カレーとはなんだ?」
「ちょっと辛いシチューみたいな物だ」
「ピリ辛シチューか」
「美味しそうね、たのしみだわ」
うん、カロルもきっと気に入るに違いない。
ああ、カレーカレー。
カマラさんが居て良かった。
自分で前世風料理を開発しなくても、美味しい物を作ってくれるのだから。
私の足は下町に向かい、チラシを頼りに、カレー屋さんを発見した。
おー、カレーハウス『ウツギー』である。
宇津木さんとか、転生してきたかな。
「たのもう」
「お、もう聞きつけてきましたね、マコトさん」
「あ、カマラさん、クリフ兄ちゃんに聞いてたまらなくなって来ましたよ」
「うしし、市販のカレーっぽさを出すのに苦労しました、ささ、どうぞ、どうぞ、まだ空いてますよ」
「あ、やっぱり混みそう?」
「リピーターの付き方がツバメ食堂っぽいから、流行りそうですよ」
エルマーが鼻をくんくんと鳴らして匂いを嗅いでいた。
「かぐわしい……」
「南洋のスパイスが一杯入ったシチューだよ」
「ナンか、ライスで食べますよ」
おお、ナンかあ。
日本カレーにしたかったけど、パン食のアップルトン民に妥協した感じかな。
でもパンじゃなくて、ナンというのが工夫が見えるけどね。
「さあ入ろう入ろう、今は空いてるみたいよ」
「あの凄腕料理人の店か、また流行りそうだな」
「ツバメ食堂は予約で一杯で、なかなか入れないみょんなあ」
「気軽に入れないとなあ、ああいう店は」
「ツバメ食堂は支店とか出しますから、混雑は解消されると思いますよ」
「儲かってそうだねえ」
「そりゃあ、もう、良い感じですよ」
何しろ現代日本の味わいはチートだからなあ。
今度、蕎麦を打って貰って、富士そば的な蕎麦を食べさせて貰おう。
ああ、美味しい物が勝手に出来てくるのは良いよなあ。
私たちはカレーハウス『ウツギー』に入り、ランチセットを頼んだ。
ああ、わくわくするな。
まだかなまだかな。
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