第1259話 学園に帰ってきて、お風呂に入ろう
205号室に入ってコリンナちゃんはベッドに倒れ込んだ。
「私はもう駄目だ」
「運動しなさすぎだからなあ」
毛布に潜り込んで丸まってしまった。
馬車に乗って学園に帰ってきた。
四時ぐらいだから、ちょっと晩餐まで時間があるな。
「晩餐まで寝てる?」
「寝る」
コリンナちゃんはお疲れのようだ。
おっと今日は水曜日で聖女の湯の日だから湯の素を入れに行かないと。
「今日は聖女の湯だから後で入りに来なさいよ」
「いらん、寝る」
『ヒール』も掛けたし、スタミナポーションも効いているから体の疲れはさほどでも無いと思うんだけどなあ。
これはアレだ心理的に疲れたな。
まあ、ちょっと休め。
階段を下りきるとメリッサさんとマリリンが大浴場の前で待ち伏せをしていた。
「メリッサさん、体調はどう?」
「ちょっとけだるいですわ、そういう時こそ聖女の湯なのですわ」
「そうだね、混ぜに行こう」
マリリンは元気いっぱいだな。
さすがの鍛え方だし。
脱衣所に行くと疲れた感じの一年生とコリンヌさんが居た。
「あはは、遠足はだるかったでしょっ」
「コリンナちゃんとかは寝込んだよ」
「『ナ』は貧弱だなあっ」
「まあ、そう言ってやるな」
「そうですね、ご主人様のお友達だし」
ご主人様呼びはやめろう。
浴室に入ると、一年生中心にそこそこ入ってるね。
遠足で汗をかいたから、やっぱりお風呂に入りたいよね。
浴槽に近づくとダルシーが現れて、聖女の湯の素を差し出してきた。
ありがとう。
というか、木下藤吉郎ムーブだな、ダルシー。
蓋を開けて湯船に聖女の湯の素をたらりと入れる。
湯の中に入った素は拡散して白濁して良い匂いを辺りに漂わせた。
「さあ、入ろうよ」
「「「はい」」」
かけ湯をして湯船に入る。
ああ、聖女の湯は効くなあ。
しみこむしみこむ。
一緒に入っている一年生の御令嬢も嬉しそうな表情を浮かべている。
「ああ、疲れが吹っ飛びますわあ」
「メリッサさまも、もうすこし体力をおつけにならないと」
「ガドラガで遭難したら、マリリンが助けてくださいましね」
「それはもちろんですわ」
なんだか凸凹コンビでお洒落組は良いなあ。
コリンヌさんもお湯に浸かってうっとりしている。
「ワイバーン出たんですって?」
「出たねえ」
「とても大きくて怖くて泣きそうになりましたわ」
「念話が伝わって来たから、ライイチローとヤギジローとヘビサブローで駆けつける所でしたよ」
「んまあ、なんとかなったからさ、問題ない」
「どこの世界にワイバーン五匹に襲われて平気な顔をしている女学生が居るんですか」
「なんか、聖女派閥、強いよね」
「カーチス様も、エルマー様も、カトレアさまも、コイシさまもお強いですわ」
「まあ、ご主人さまが一番規格外なんですけどっ」
なんだか、大物と戦って慣れたな。
アダベルが身近に居るしね。
秋にはポンコツ魔導駆逐戦艦と戦わねばならないし。
「だんだん皆様のマコトさまへの見る目が変わってきましたわ」
「大活躍の連続ですわぁ」
まあ、事件が多いからなあ。
なんでひっきり無しにもめ事がやってくるかな。
前世で何か悪事でも働いたかな。
思い返せば、マンガ描いていただけだったが。
「まあ、悪党どももそろそろ気軽に暴力を使ってこなくなったから、いいとしようよ」
「それはそうですわね」
「本当はマコトさまには、カロリーヌさまとご一緒に穏やかな時間を過ごして欲しいですわ」
気が合うねメリッサさん、同感だよ。
ドタバタ事件を解決すると、絆は深くなるし、思いは強くなるけど、進展とか無いしな。
「次はレースですね、パスカル部長が言ってましたよ」
「コリンヌさん、知り合いなの?」
「同じ水属性でしたから、実習で一緒なんですよ」
ああ、パスカル部長は、それでケルピーを騎獣にしていたのか。
「マコトさまは、騎獣レースにお出になられますの?」
「ヒューイに乗って参加するつもりよ」
「去年は騎士学校に負けましたから、今年は勝って欲しいですねっ」
まあ、今年は古式テイムで人馬一体になった選手が多いからなんとかなるかな。
《レース楽しみ》
(そうだね、私も楽しみ)
夏休みに入る前にレース会場の下見とルールを覚え無いとな。
騎乗しての攻撃は有りなんだろうか。
無しかもなあ。
血生臭くなりすぎるし。
期末試験があって、レースがあって、その後には南海の孤島でバカンスだなあ。
水着の仕上がりは、まだかな。
今年の夏はエキサイティングになりそうだぜ。
あ、その前に武術大会があるか。
まあ、私は見るだけだからいいね。
優勝はマイクーかな、でもオスカーも結構やるらしいし、カーチスがどこまで食い下がるかだなあ。
たのしみたのしみ、私はそう思いながらお湯をちゃぷちゃぷと顔に掛けてニマニマした。
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