第1255話 遠くホルボス山山頂を見る
エルマーとサンドイッチを一個ずつ交換したのだが。
もぐもぐもぐもぐ。
「女子寮食堂のサンドイッチは美味しいね……」
「キッチンスタッフが凄腕だからね」
男子寮食堂のお弁当は、まあまあだな。
不味くは無いけど、さして美味くもない。
女子寮食堂の華のある味わいとは、ずいぶん違うね。
「男子寮食堂はあんまり美味しく無いね」
「食べられなくないという水準……」
「俺は自室で執事に作って貰っているぜ」
「僕も調理執事が作るね……」
エルマーもカーチス兄ちゃんも上位貴族だからなあ。
侯爵水準になるとキッチンスタッフが常備か、贅沢な事だ。
カーチス兄ちゃんは、エルザさんと、カトレアさん、コイシちゃんとサンドイッチを交換して、ほとんど女子寮食堂産のお弁当になっていた。
カロルも、コリンナちゃんも、笑顔でお弁当を食べている。
やっぱりさあ、外でのご飯は何だか美味しいよね。
王家主従の縄張りは、ひっきりなしに令息と令嬢が訪れて社交をしているな。
お弁当はメイドさんのお手製かな。
王城食堂製かもしれない。
ご飯をパクパク食べて、元気が充填された。
頂上では一時間ほど休憩である。
ちょっと離れた所でC組のドレスさんたちがお弁当を広げ始めたな。
メイドさんや執事さんがお茶を入れたり、敷布を引いたり、せっせとお世話をしているね。
さすがに私とカロルがいると意地悪令嬢がコリンナちゃんを虐めには来ないようだ。
カロルとコリンナちゃんと私で、頂上からの眺望を楽しむ事にした。
やっぱり三人で居ると楽しいね。
聖女派閥の執行部だな。
「あ、ホルボス山が見えるよ」
「え、どこどこ」
「あそこの平たい山頂の山、特徴があるからすぐ解るね」
「おー、王都を挟んで反対側だね。アダベルは登山中かな?」
なんか引っ張られるような感じがしたので、目に魔力を込めて強化してみた。
魔法は便利だぜ。
ギュンとズームした感じになって、ホルボス山山頂で誰かが手を振っているのが見えた。
「あはは、アダベルだ、おーい」
私は手を振り返した。
遠くのアダベルは喜んでぴょんぴょん跳ねながら手を振った。
さすがドラゴンの視力だ、私の姿も見えているみたいね。
山頂には、トール王子、ティルダ王女、村の三馬鹿と、孤児院の子供達も居て手を振って居る。
「いや、見えるんかい」
「魔力で視力を強化してみた、コリンナちゃんは魔法のメガネでズームできるんじゃない」
「お、おっ、アダベルだ、たしかに居る~~、おーいおーい」
「なによ、二人だけでずるいわ」
「身体強化の魔法は二年生で覚える魔法だからねえ」
カロルがぷうと膨れたが、しゃーないのであるよ。
「ん? アダベルが……、何か」
「どうかしたの?」
ホルボス山のアダベルが真面目な顔をして、東の空を指さしてピョンピョン跳んでいた。
東?
東の空の遠く、何かが近づいて来るのが見えた。
鳥?
飛空艇?
距離が遠いので解らない。
「あ、アダベルがドラゴンになって飛び上がった」
「え、どうしたの」
カロルが聞いて来た。
「あれは……、なんだ? ……、大きいぞ」
ごま粒みたいな飛来物はどんどん大きくなってきた。
まさか、ポンコツロボの魔導駆逐戦艦じゃあるまいな……。
いや、ちがう、羽ばたいてる、生物だ。
キラリと金色の鱗。
腕が羽になっている竜。
「イエローワイバーンだ!! しかも複数!!」
イエローワイバーンは雷を纏ってこちらへと飛来してくる。
いちにいさんしご、五匹!!
前に飛空艇から見た群れか?
どうして。
バリバリバリと、イエローワイバーンはこちらに向けてサンダーブレスを放った。
咄嗟に障壁で受け止める。
ガシャンと障壁が割れ、ブレスが霧散する。
「うおっ!! なんだなんだっ!!」
『カーチス、油断するなっ! イエローワイバーンだ!!』
カーチス兄ちゃんが聖剣ホウズを抜いて立ち上がった。
エルマーも棒を持って立ち上がる。
奴らの狙いは、王家主従? 学園の貴族たち?
いや違う……。
やっぱり、私の方に一直線に突っ込んでくる。
私狙いでしたかあ。
知ってたけど。
そして誰の計画かも解った。
イエローワイバーンの首に隷属の首輪がはまっている。
アライド王国のウエストン家だ。
にゃろー、せっかくの遠足を台無しにしおって。
ぶっ殺す。
「なあ、やっぱり事件が起こるだろっ」
「思ったとおりみょんなあ」
カトレアさんがエッケザックスを抜き、コイシちゃんが氷結丸を抜きながら言った。
うるさいわねっ。
プートリー山の山頂は大混乱になった。
王家の護衛が王子達を守り、バッテン先生が剣を抜く。
御令嬢は悲鳴を上げて雷から逃げ回り、令息が倒れて泥だらけになり、メイドさんが悲鳴を上げた。
「こっちだ、ワイバーンども、私はこっちにいるぞっ!!」
竜どもの気を引きながら、私は開けた方に下りていく。
五匹のワイバーンは一斉に私を追ってきた。
「マコト!! 弓くれえ!!」
「あいよう」
コリンナちゃん愛用の銀の弓は私の収納袋に入っていた。
素早く出してコリンナちゃんに投げわたす。
私は聖剣フロッティを抜いた。
カロルはチェーン君を出して迎撃の準備をする。
どこかに操っている魔獣使いが居る。
どこだどこだ。
『サーチ』
カアアアアン!
くそっ!! 山の反対側か!
ワイバーンの視界を使って操ってるのか。
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