第1254話 コリンナちゃんを急登したまで迎えに行く
カロルが高級お菓子の箱を開けてくれた。
ぱくり。
あれよな、同じクッキーでも、ひよこ堂とか女子寮食堂の物とは格が違う感じはあるな。
マルコアス修道院の素材で殴る感じとも違う確かな職人の手腕が感じられる高級菓子である。
ぱくりぱくり。
ダルシーが現れて、携帯魔導コンロでお湯を沸かしてお茶を入れてくれた。
山頂でお茶は良いねえ。
天気が良くて日差しがポカポカするよ。
B組の班がようやく登ってきた。
が、コリンナちゃんはまだだな。
一番手はメリッサさんを背負ったマリリンであった。
「わあ、マリリンお疲れさま」
「なんでもありませんわ」
「バテてしまって~、恥ずかしいですわ~~」
「まあ、いきなり登山だからね、『ヒール』」
「わ、だるさが消えましてよ、ありがとうございます、マコトさま」
「コリンナちゃんにスタミナポーションを貰わなかったの?」
「えー、それがですねえ……」
おっと、ロイド王子と、リックさんに背負われたジュリエットさんが上がって来た。
「ジュリエットさん、大丈夫?」
「古代の隠された力が解放されて、山なんか一足、と思っていたんですけど、解放に失敗して余計に疲れてしまいましたわっ」
また厨二病みたいな事を言ってやがるな。
「『ヒール』」
「わっ、元気になりましたわ、ありがとうございます。リックさまもありがとう、もうよろしくてよ」
「そうかい、やっぱ聖女さンの『ヒール』はすげえなあ」
リックさんは太く笑ってジュリエットさんを背から下ろした。
「カーチスは? ロイドちゃん」
「コリンナさんの面倒を見てたよ、エルザさんと一緒に」
うはあ。
私はカロルと顔を見あわせた。
迎えに行って『ヒール』掛けて上げた方がいいな。
「ちょっと行ってくる」
「一緒に行きましょう」
メリッサさんやジュリエットさんたちに休むように言って、私とカロルは頂上から元の道へ下った。
うん、ちょっと下の急登あたりで、コリンナちゃんが亡霊のようによろよろ歩いていた。
カーチスとエルザさんが一緒に付いて励ましているな。
「マ、マコト~~」
「なんでスタミナポーションを飲まないのだ」
「C組のドレスに盗られたんだよう」
「またあいつか、『ヒール』。ぶっ飛ばしてこようか」
「俺もエルザも、そう言ったんだが、コウナゴが聞かなくてなあ」
コリンナちゃんはシャンと立ち上がった。
「いいんだいいんだ、下級貴族が派閥の力で報復とかすると、後々たたるからさ、私が我慢しとけば万事解決だよ」
カロルがスカートからジャリジャリと鎖を下に落とし、馬モードに組上げた。
「ここから登りがキツいから、乗って行きなさいよ」
「ありがとー」
私はコリンナちゃんのお尻を押し、チェーン馬の背に上げた。
つづら折の下の方に花が咲いたようにドレスの御令嬢が登って来ている。
岩でも落としてやろうかと思ったけど、まあ、コリンナちゃんの我慢が無駄になるからやめておこう。
「スタミナポーションを盗られたのはあるけど、コウナゴも体力がなさ過ぎだな、鍛えろ」
「そうですわね、ガドラガで遭難なさったら悲しいし、体力作りが必須ですわね」
「明日から、みっちり早朝ランニングじゃ」
「ぎゃー」
コリンナちゃんは聖女派閥の中で私に並んで身分が低いからなあ。
彼女より家格が下のはマリリンぐらいしか居ないからなあ。
知力は素晴らしく高いのだが、体力がなあ。
マリリンと足して二で割ると丁度良いのだが。
頂上近くの急登でも、馬モードチェーン君の敵では無いので、サクサク上がっていった。
カロルが馬子さんみたいに手綱を取っているのが面白いね。
アンソニー先生が降りて来た。
「やあ、オルブライトさん、それは便利だねえ」
「ちょっとルール違反な気もしますけど」
「それを言ったら、キンボールさんの『ヒール』も、スタミナポーションも反則だから、まあ、幸運という事で目をつぶりますよ」
「C組の御令嬢とか、毎年つぶれる人がいっぱいでるんじゃないですか?」
「風物詩だね、あまり具合が悪い時は、武術の先生とかが背負って下山するよ」
「スタミナポーションを急登の前で配りませんか?」
「いいのかい、在庫はどれくらいありますか」
カロルは収納袋からポーションの入った木箱をどさどさと出した。
「こんなに沢山。ありがたいよ」
「請求の方は学園に回しておきますから」
「そうだね、ありがとう、確かに毎年急登あたりで脱落者が多いね、良いアイデアだよ」
そうか、頂上付近でスタミナポーションで元気を出せば御令嬢でもなんとか登頂できそうだね。
カロルはアンヌさんに命じて、スタミナポーションの箱を急登前まで運ばせた。
コリンナちゃんはチェーン馬に揺られて頂上を踏んだ。
「やったー!」
そう言って、コリンナちゃんはみんなが並んで座っている敷布に倒れこんだ。
どんだけ体力無いのかよ。
さて、聖女派閥員はC組には居ないので、みんな揃った感じだね。
みな笑顔でリュックからお弁当の箱を取りだした。
お、男子のお弁当箱は大きいな。
男子寮食堂のお弁当か、どんな味だろうか。
後でエルマーと少し交換して味を見よう。
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