第1253話 えっちらおっちら頂上を目指して登る
クラス別で移動するのは、ちょっと想定外だったな。
コリンナちゃんを介護する事が出来ないな。
代わりに馬車で一緒だった秀才トリオの人達を『ヒール』介護したりした。
「あ、ありがとうございますわ、聖女さま」
「体を鍛えないとガドラガは厳しいよ」
「は、はい、でも私は鈍才なので、なかなか運動の時間が取れなくて」
秀才三人組は男爵子爵騎士爵と官僚狙いの下級貴族の娘さんたちだな。
学園の成績が優秀なら、大学を出た所で王府の官僚組織に入ることができる。
王都の法衣貴族だと、役を取るか取らないかで死活問題なんだよなあ。
王城勤務と郊外関連施設勤務ではお給料とか全然違うしね。
まったく、ファンタジーでも学歴競争社会だぜ。
登山道はつづら折りになって高度を上げていく。
良い天気で木々の隙間から見える景色が素晴らしい。
やっぱり山歩きは良いね。
カロルと並んで、ヨチヨチ歩くマメちゃんの後を追う。
白い花が、わあっと咲いた低木があった。
花が爆発しているみたいで綺麗だね。
「遠足は楽しいね」
「そうね、のんびりしてせいせいするわね」
日々、血生臭かったりやばかったりする事件が目白押しになって来るので、こういうのんびりした時間は貴重だな。
「そういえば、アダベルたちもホルボス山に登山って言っていたわね。今頃登っているかしら」
「頂上からホルボス山見えるかな。さすがに遠いから人は見えないだろうけどね」
「そうね、今度聞いてみましょう」
ケビン王子が切り株に座って休んでいた。
ジェラルドは脇に立って、水筒からお茶を飲んでいた。
「ケビン王子、一休みですか」
「うん、ちょっと疲れてね」
「『ヒール』は要りますか?」
「わ、お願いできるかい、キンボールさん」
私はケビン王子の二の腕をつついて『ヒール』を掛けた。
別に接触しなくても『ヒール』は掛けられるんだけど、つついた方が魔力の消費がちょっと減るんだな。
「お、これは良いね、さすがは聖女さまの『ヒール』だ、ありがとう、疲れが消えたよ」
「もう少しで頂上だから頑張ってください」
「そうだね、がんばるよ」
そう言って、ケビン王子はジェラルドと歩き始めた。
歩いていると、ちょっと大きめの滝が見えて来た。
おおー、良い感じだなあ。
アンソニー先生が滝壺に近づいて水筒に水を入れていた。
「水源の滝ですね」
「毎年ここの水を汲んで帰るんだよ」
私も水を掬って飲んで見た。
ああ、美味しい水だな。
密やかに『オプティカルアナライズ』、ぴっ、うん寄生虫や毒物の混入は無いようだ。
カロルも水を掬って飲んでいた。
「冷たくて美味しい水ね」
「ちょっと汲んで帰ろう」
「この水で、聖女の湯の素を作りましょう」
「それは良いねえ」
霊験あらたかでは無いが、美味しい水だから良い湯の素が出来そうだね。
カロルは収納袋から樽を三本ほど出してアンヌさんと一緒に汲んでいた。
意外と大量に汲むんだなあ。
収納袋があるから何トン汲んでも大丈夫だな。
マメちゃんも水場に寄ってチロチロと舌を出して飲んでいた。
風向きが変わって滝の水しぶきが、ちょっとかかってひゃっこいが、汗をかいていたので爽快でもあるな。
滝から少し行くと頂上が見えて来た。
頂上付近は木々を切り払って眺望が良い。
あと一踏ん張りだね。
カロルと並んで、わっせわっせと登る。
道は王都側ではなくて、東側を巻くように上がって行く。
遠くに突剣山脈が見えて、飛空艇基地も見える。
黄金の暁号も、白銀の城号も見えるな。
こっち側の眺望も良いな。
頂上付近は、ちょっと急登になって、天辺が見えているのになかなか近づかない。
それでも、足を動かして登っていけば、天辺には着く。
「到着~~!」
「わあ、景色が綺麗ね」
天辺は平たくなっていて、ベンチがあり、眺望が素晴らしい。
西側に王都が一望出来る。
王城がおもちゃのように見えるね。
「みなさん、お疲れ様、一時までここで昼食休憩となります。おトイレはあちらに少し下った所にあります。他の一年生が登ってくるまで、のんびりしましょう」
アンソニー先生の号令で、昼休憩が始まった。
カロルは王都が見えるあたりに敷布を引き、聖女派閥の縄張りとした。
他の生徒も思い思いの場所に陣取ってお弁当を開いて食べ始めた。
「B組の派閥員を待つみょん」
「そうね、お菓子でも食べて待ちましょう」
「私はマメちゃんを撫でるぞ、よしよしよし」
「わんわんっ」
カトレアさんに撫でられてマメちゃんもご満悦である。
私は敷布の上で美味しい滝の水を飲んで一息付いた。
「意外に山登りは疲れるな」
「コリンナさんは大丈夫かみょんな」
「スタミナポーションは渡したけど、へばってそうね」
「梅雨の間はランニングさぼってたからなあ」
「運動しないと駄目だ」
「マリリンしゃんは大丈夫だけれども、メリッサしゃんも、ジュリエットしゃんも心配だみょん」
「大丈夫だ、殿が何とかしてくれる」
エルマーは派閥員の会話を聞きながら、お菓子セットを開いて微笑みながらクッキーを食べていた。
「遠足は楽しい……、きっとガドラガ実習も楽しいだろうね……」
「たのしみみょんよ」
「早く行きたい物だ、来年はマコトも深い所に行くのだろう?」
「授業だと大体五階ぐらいまでよ、深い所は自由探索の時だけど、計画書を出して日帰りだから十階ぐらいかな」
「意外にしょぼいのだなあ」
ガドラガは危ないからねえ。
でも、みんなで行ったら、きっと楽しいだろうね。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




