第1251話 プートリー山の麓から歩き出す
私たちの乗った大型馬車はプートリー山の麓にある馬車停車場に着いた。
馬車から降りると山の麓で、なんだか空気が綺麗な感じがするな。
プートリー山は王都の東にあって、ぽっこりと盛りあがっている可愛い感じの山だ。
私たちはこの麓の駐車場から登り始めて、二時間ほどかけて天辺まで行き、昼食を取りながら展望を楽しみ、その後、反対側の麓へ下りていく。
そちらの駐車場に移動していた大型馬車に乗って、夕方に学園へと戻るのが遠足の流れらしい。
ペッコウペッコウと山鳥が鳴く声がする。
風が渡ってザヤザヤと木々を鳴らす。
「良い所ね」
「そうだね、良い感じ」
さて、お弁当はあるし、オヤツもある。
収納袋からお茶を入れた水筒を出して肩に掛ける。
チューリップ帽を出して被る。
直射日光は怖いからね。
「さあ、行きましょう、それほど険しい道ではありませんから、のんびり登りましょうね」
「「「「はーい」」」」
アンソニー先生の先導で私たちは歩き始める。
砂利を敷き詰めた小道をカロルと並んで歩いて行く。
わりと歩きやすい。
マメちゃんも影から出て来てヨチヨチと歩いている。
お尻がぽっこりしていて可愛いねえ。
エルマーが棒をもって杖代わりにして歩いているな。
「エルマー、三節棍の方は上手くなった?」
「まかせて……」
エルマーは棒に魔力を流し、三節棍モードにしてヒュンヒュン回し始めた。
おお、なかなか堂にいった動きじゃないですか。
魔術師にしては上出来だなあ。
「エルマーさまの棒の腕もあがりつつある」
「氷の魔力を込めて、殴った後に凍らせるみょんよ」
「そういう使い方なのか」
「あとは罠察知にも使える」
そう言ってエルマーは棒モードに戻して、目の前の道をつついた。
普段は先をつつき棒にしてんのね。
砂利の小道が終わり、所々に横木を埋め込んだ未舗装登山道に変わる。
えっちらおっちら登っていく。
ちょっと汗がでるね。
カロルがアンソニー先生に近づいた。
「先生、スタミナポーションを持って来ました……」
「それは、ありがたい」
アンソニー先生は一本受け取ってゴクリと飲み干した。
「あ、いえ、沢山持って来ましたので、バテた生徒にあげるために、買って下さい」
そう言ってカロルは五本ほどアンソニー先生に渡した。
「あ、そうですか、一本お幾らですか」
「五百ドランクになります」
スタミナポーションは市価で千ドランク内外で売られているから、結構お得だな。
アンソニー先生はスタミナポーションを受け取りお金を払った。
「たしかに、スタミナポーションがあるとバテた生徒を助けられますね。ありがとうございます、オルブライトさん」
「いえいえ」
カロルは笑って戻って来た。
さすが、私の嫁、抜け目がないぜ。
急登があったり、なだらかな尾根になったりして私たちは高度を上げていく。
意外に汗をかくね。
秀才さんトリオの一人が顔を真っ赤にして遅れだしたので、アンソニー先生がスタミナポーションを渡して飲ませた。
さすがはカロル製だけはあって、一本ぐいっと飲むと平常に戻り足取りがしっかりした。
木々の影から王都が見えるようになった。
なかなか良い感じだね。
山登りって感じである。
この手の低山だと、道迷いが怖いんだけど、プートリー山は構造が単純だからその心配はなさそうだ。
三十分ほど登ると、ちょっと開けた場所に出た。
「こちらで小休止をします、水分を取ったり、お菓子を食べたりして休憩を取ってください」
わあっと、皆から歓声が上がった。
カロルが敷布を敷いて派閥の皆を座らせた。
「殿が登ってきたらお菓子を献上しなければ」
「エルザしゃんも二個買ってたみょんよ」
「ぐぬぬ、それは強敵」
エルザさんは本妻だからなあ。
王家主従はメイドのマリオンさんにお世話されている。
護衛のジャックさんも居るから、あそこだけ少し雰囲気が違う感じだよな。
エルマーはカップに詰めたマヨコーンを匙で掬って食べていた。
どんだけマヨコーンが好きなんだよ。
「エルマー、女子寮の遠足セットを上げる」
「わあ……、うれしいよマコト……」
エルマーは心底嬉しそうに笑った。
って、フロランタンにマヨコーンを載せて食べんなっ。
「甘塩っぱい……」
だめだ、このマヨコーンフェチは。
カロルが高級お菓子を出して、皆に勧めていた。
マメちゃんは焼き菓子とかを貰ってご機嫌である。
ああ、青空の下でお茶とお菓子を頂くのは、ほっこりするなあ。
休んでいると、B組の人達も到着して、思い思いの場所で小休止を取り始める。
「おお、美味そうな物喰ってるな」
カーチス兄ちゃんが寄ってきて、エルマーのお菓子をつまもうとした。
「マコトからの愛のお菓子だ……、やらん……」
「まじかーっ!」
「殿ー!! 私が殿の分も買っておきましたぞっ!」
「おお、カトレア、天晴れだ!」
「なので、チョコボンボンを返してください」
「ぐぬぬ」
カーチス兄ちゃんは貰ったセットからチョコボンボンを取りだしてカトレアさんの口に放り込んだ。
カトレアさんはとろけるような幸せな笑顔になった。
やれやれだぜ。
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