第1247話 学園に戻ってお風呂に入る
さすがに貧乏人にお菓子横町は、向いていないと解ったので、学園に帰る事にした。
浪費が美徳な上流貴族御用達の場所だったなあ。
「ひよこ堂で、お菓子セットを買おう」
「そうだな……」
ヒューイをポックリポックリ歩かせる。
ターチューのお店の中で、お菓子買い放題をしているケリーさんを見た。
くそう、貿易都市のご令嬢はお小遣いもってんな。
「ご主人様も、『ナ』もお金が無い訳じゃないでしょ?」
「ある」
「あるが、実家に渡してるからほとんど無い」
コリンナちゃんは偉いなあ。
カロルの錬金スタンドの会計とか、聖女派閥の会計とか、結構お金が払われていると思うが。
「「お菓子に一万ドランクは無いわ~~」」
「ああ、ただの貧乏症なんですねっ」
「マコトは、孤児が喜ぶと思ったら、アダベルの籠に百万とか、ポンと出せる子よ」
「そりゃあ、子供の為ならねえ」
「やっぱり、ご主人様は優しいですねっ、うふふっ」
うるせえ、愛の籠もったまなざしで見るんじゃあ無いですよ。
《主はえらい》
ヒューイまでやめろよう。
大神殿前を通り過ぎ、ひよこ堂まで戻ってきた。
ややや、店頭の行列が消えて、遠足セットの掲示が無くなっていた。
「おお、マコト、凄い売れたぞ」
「ひょっとして完売?」
「ああ、そうだよ」
あちゃーと、カロルとコリンナちゃん、コリンヌさんと顔を見合わせた。
「なんだよ、もう食べちゃったのかよ」
「アダベルと孤児達に強奪されたんだ」
兄ちゃんはおかしそうにわっはっはと笑った。
「はいよ、多分、食べ尽くすと思って取り置いておいたよ」
クリフ兄ちゃんは店の中から遠足お菓子セットを四つ出してきた。
「ぎゃあ、兄ちゃん愛してるっ!」
「ありがとうございますっ」
「恐れ入ります」
「わわっ、私もですか、ありがとう、ご主人様のお兄さんっ」
よしよし、これで、お菓子無しという事は無くなった。
まあ、カロルの高級お菓子三箱があるが、あれは最後のお菓子だ。
「明日の朝、女子寮食堂遠足お菓子セットをゲットすれば完璧だ!」
「ははは、頑張れ」
クリフ兄ちゃんにありがとうを言って意気揚々と私らは学園を目指して帰った。
「秋のガドラガ実習前に、ガドラガお菓子セットを出してくれないものかなあっ」
「ガドラガは、まあ、美味しい物無いからねえ」
「ご主人様が女子寮食堂を改善しちゃうから、黄金の暁号のご飯がまずくてまずくて、みんなぼやいてましたよっ」
「そんなに、実習飯は酷いのか」
「まあ、美味しく無いだけで、普通だけどね、『ナ』」
「マコトのせいで女生徒の口が奢ってしまったわね」
「さすがに、黄金の暁号の食堂の改善は難しいかなあ」
「来年は私たちも食べるのだぞ、狭い船室で、美味しくない食事が一週間だ」
……、蒼穹の覇者号で行ってはいかんのだろうか。
いかんのだろうなあ、学園の実習だしなあ。
「カロルの部屋でアンヌさんに作って貰おう」
「それでも良いけど、マコトとコリンナぐらいね、派閥全員はちょっと」
そりゃ、伯爵室でもミニキッチンにシャワー室だったしな。
ベロナ先輩の部屋で見た。
ヒューイにのって毎日マルコアス修道院に飛ぼうかな。
二年生のガドラガ実習に暗雲が立ちこめるな。
学園に戻ってきた。
女子寮前でヒューイから下りる。
「今日もありがとうね」
《きにするな》
ヒューイは良い子だねえ。
赤いたてがみをなでる。
なでなで。
体色が黒から白に変わってもたてがみの色は変わらないんだよなあ。
ヒューイは勝手に厩舎の方に行ってしまった。
「なんという便利騎獣なんでしょうかっ、私もライイチローを呼びたい」
《ヤダ》
《え~~!》
ライ一郎の嫌そうな念話が聞こえてきて笑ってしまった。
コリンヌカルテットは別にコリンヌさんが一番偉い訳じゃなくて、三匹と一人は同じ立場っぽいね。
平等キメラだ。
「私はお風呂行くけど、カロルはどうする?」
「私は錬金作業があるから、ごめんね」
まあ、ええんやで。
錬金作業も大事だしね。
「明日の聖女の湯はどうしようか」
「そうね、ヒルダさんに頼みましょうか」
そうだね、一年生は遠足だから、帰るの夕方だしね。
ヒルダさんにお願いしておこうかな。
コリンナちゃんと、コリンヌさんを連れて階段を下りて、地下大浴場に向かう。
脱衣所にはいり服をぱっぱと脱ぐ。
あんまり人は居ないみたいね。
「マメちゃんも入る?」
「わんわんっ!」
マメちゃんもお風呂嫌がらないね。
良い子だなあ。
なでなで。
マメちゃんをなでていると、裸のコリンナちゃんと、裸のコリンヌさんがマメちゃんをなでてきた。
裸ん坊でマメちゃんをなでる会みたいになっているな。
シュールな絵面である。
浴室に入ると、今日は誰も入って無かった。
貸し切りだぜ。
まあ、夕方だしね。
かけ湯をして湯船につかる。
「あ”~~~、極楽極楽」
「マコトはおばさんくさいぞ」
「ほっといてくれ」
「やっぱり女子寮の大きいお風呂は良いですねっ」
私たち三人は大浴場のお風呂を堪能したのであった。
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