第1245話 学校に戻ってホームルームに出席する
基地の建屋の前からヒューイに跨がって空に舞い上がった。
アイザック指令と副司令が手を振ってくれたので振り返す。
王都の東門で着陸して、門番さんに冒険者カードを見せる。
「はい、よろしいですよ、聖女さま」
「ありがと」
門をくぐってから、またヒューイを飛ばせて学園を目指す。
東門からだと、下町とか、木工街とかの上を飛ぶ感じだね。
ひよこ堂上空を通過して、校門前で着陸、時計塔を見ると結構やばい感じ。
「ヒューイ、校舎の前から勝手に帰ってくれる?」
《まかせて》
校舎の玄関までヒューイを走らせて私は飛び降りた。
「じゃあ、また後でね」
《わかった》
マメちゃんは慣れた物で、私が飛び降りた瞬間に影の中に入っている。
ダルシーは姿を消した。
玄関に入り、階段をだだだと駆け上がる。
アンソニー先生を追い越した。
「キンボールさん、廊下を走ってはいけませんよ」
「はーい」
と、元気よく返事をしながらA組に飛び込んだ。
セーフセーフ。
小走りで席に近づくとカロルが私を見て目を笑わせた。
「どこいってたの、マコト」
「飛空艇基地、絵を見せに行くの忘れててさ」
「そう、喜んでた?」
「すっごく褒められたよ、巨匠にも」
「飛空艇基地にマルモッタン師が居たの?」
「壁画の仕事の下見に来てたみたい」
そこまで言ったタイミングでアンソニー先生が入って来た。
前を向いて乗馬服のヘルメットを脱ぐ。
着替える暇も無かったぜ。
日直が起立礼着席の号令を掛けてホームルームが始まった。
「さて、明日は遠足ですね。今日はよく休んで明日バテないようにしてください。遠足は二年生からのガドラガ実習の下準備の面もありますが、低山なので気軽な気持ちで楽しみましょう。頂上から見る景色はとても良いですよ」
王都が眼下に一望にできるらしい。
旅程は、学園から徒歩で王都を出て、東の森を抜けて登山道に入る。
山道を二時間ぐらい歩くと頂上であるね。
前世で言うと高尾山とか、丹沢大山ぐらいのグレードの山だ。
コリンナちゃんがバテ無ければいいのだが。
「遠足なので騎獣は禁止です、良いですねキンボールさん」
「はあい」
というか、ヒューイに乗ったら、ひとっ飛びだよ。
「先生、危険な魔物はいますか?」
「特に危険な魔物はいません、角ウサギぐらいでしょう」
ケリンの森と同じぐらいの魔物分布かな。
昼間なんで夜行猫も出ないだろうしね。
前にケリンの森で巨大レッドベアが出たが、遠足で何か出るかな。
ウエリントン家が何か悪さを仕掛けてくるかな。
テイム魔獣が襲ってきたらヒューイでも呼ぶかな。
……、コリンヌカルテットが押っ取り刀で急行して来そうだな。
ホームルームは終わった。
起立して礼、着席。
終礼が鳴って、放課後である。
私は席で伸びをした。
「じゃあ、お菓子横町に行きましょうか」
「そうね、コリンナちゃんも誘って行こうか」
《よし、また出番だな》
ヒューイが念話で張り切っているな。
廊下に出るとB組も終業のようで教室から、どっと生徒が出てきた。
「お、マコト、乗馬服だ、格好いい」
コリンナちゃんが教室から出てきた。
「午後に飛空艇基地に絵を見せに行ってたからね」
「ダルシーの絵か、喜ばれそうだな」
「すごい喜んでたよ」
三人で連れ立って階段を下りていくと、玄関でコリンヌさんが待ち構えていた。
「お菓子横町行きましょうっ」
「『ヌ』は遠足じゃないでしょ」
「良いのよ、いつ行っても、お菓子横町は楽園なのよっ、『ナ』」
「そんなもんかね」
コリンナちゃんはお小遣いが少なかったっぽいから、あまりお菓子横町になじみが無いようだね。
私ら下町王都っ子のお菓子体験は駄菓子屋で安菓子か、パン屋でパンの耳揚げとかだからね。
お菓子横町は中級貴族以上の場所なのである。
砂糖が高いからね。
玄関にヒューイが来ていたので跨がる。
「カロル、乗る?」
「ええ」
私はカロルを引っ張り上げた。
「私らは」
「地面を行けい」
「酷いわ、ご主人様、ライイチローを呼んで良いですかっ」
「駄目」
四人でわやわやとしゃべりながら王都中央通りを行く。
ひよこ堂の前で人だかりがしているな。
よく見ると遠足お菓子セットが飛ぶように売れていた。
商売繁盛でとても結構な事だ。
「ひよこ堂セットは夕方まで残ってるかなあ」
「解らんが、今は得策では無い、並ぶぞ」
「夕方に来て、残ってたら買いましょうよ」
クリフ兄ちゃんと目が合ったので手を振って通り過ぎる。
ヒューイを他の二人と速度を合わせるようにポックリポックリ歩かせる。
大神殿前で、アンドレとルイゾンが掃き掃除をしていた。
「聖女さん、こんちゃーっす」
「ご学友もこんちゃーっす」
「がんばってるね」
「そうなんすよ、掃除なんか馬鹿くせえと思ってたんすが、婆ちゃんとかに褒められたり、お菓子をもらったりして楽しくなっちまいましてね」
「大神殿の掃除はまかせといてくださいよ」
そう言って元不良の二人組は笑った。
こいつらも、なかなか寺男っぽくなって来たじゃあないか。
良いことだな。
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