第1241話 晴れたのでランチはひさびさのひよこ堂
火曜日の授業は得意分野続きなので、サクッと履修する。
やっぱ、歴史と国語が好きだな。
数学はまあまあ、魔術理論はいろいろな仮説があって楽しい。
楽しく授業を受けていたら、あっという間にお昼休みであります。
「おー、今日は晴れたな、外食いくか?」
いつものようにカーチス兄ちゃんがB組からやってきた。
エルマーも寄ってくる。
「ひよこ堂に行きたいけどね」
「そうか、パン買って自然公園に行くか」
王家主従も寄ってきた。
「今日はひよこ堂かあ」
「やっと梅雨も明けましたからな」
「あんたらは火曜日なのでビビアンさまへのご接待だ」
「「うぐぐ」」
何かというとサボろうとするな、この王家主従。
「はあ、行こうかジェラルド」
「そうですな」
二人は肩を落として教室を出て行った。
「その袋はなんだ、カトレア」
「女子寮食堂で販売している遠足おやつセットですよ、沢山入って二千ドランクです」
「ほうほう」
カーチス兄ちゃんはカトレアさんのおやつセットを開いて中をあらためた。
「おお、チョコボンボンも入っているのか、お得だなあ」
「男子は、買えないのか……?」
「明日の朝も売り出すそうですから、買っておきましょうか、殿、エルマー」
「これはいいな」
そう言ってカーチス兄ちゃんはチョコボンボンの木箱を開けて一つ口に放り込んだ。
「ぎゃー、何するんですかっ、殿!!」
「いや、味をみようと思って、ブランデーボンボンじゃないな、イチゴクリームか、これは?」
「明日、殿の袋から一個返してもらいますからねっ」
「けちくさい事を言うなよ、カトレア」
「愛する殿でも、お菓子は別なのですっ」
コイシちゃんがお菓子セットの亜麻袋を死守するように抱え込んだ。
食い物の恨みは怖いんだぞ、カーチス兄ちゃん。
廊下を通り、階段を降りて、派閥員を拾いながら玄関を出る。
ああ、お日様が照ってるって良いなあ。
視界内の障壁回廊を一気に消したら、土埃が舞った。
「ちょっと放って置くだけで土埃が凄いですわね」
「雨水に含まれた塵が溜まってたんだね」
土埃が落ち着くまで玄関で待っていた。
障壁回廊を消すときは周囲に注意しないとね。
下に誰かがいたら、土埃が直撃しかねない。
マメちゃんが上着の胸元から飛び出してちょこまか走り回った。
そうかそうか、マメちゃんも晴れて嬉しいか。
みんなで歩いて王都中央通りを行く。
梅雨明けだからか街が綺麗に見えて、歩いている人も笑顔の人が多いね。
ひよこ堂に着くと、みんな考える事は一緒なのか、大盛況で、クリフ兄ちゃんが列の整理をしていた。
「兄ちゃん、こんちは」
「おお、マコト、みなさんも、いらっしゃい」
「梅雨明けだからお客さんいっぱいだね」
「なかなか雨の中、パン屋に行こうとは思わないからな、嬉しい悲鳴だよ」
しかし列が結構長いな。
「そういや、ひよこ堂では遠足に備えたお菓子ラインナップは?」
「え、遠足あるのか、準備してないや、いつだい?」
「明日」
「……」
まあ、梅雨の間は生徒とかあまり来ないからなあ。
絶好のビジネスチャンスを逃したな。
「女子寮食堂ではお菓子セットを二千ドランクで販売しておったぞ」
「あー、そうか、クララはやり手だなあ、うちも真似をするか」
クリフ兄ちゃんに女子寮食堂遠足お菓子セットを見せた。
「おー、これは凝ってるな、この品揃えで二千ドランクは安いな」
「ひよこ堂だと、ソバボウロとクッキーだね、地味だなあ」
「チョコボンボンが良いな、一個食べて良いか?」
「ああ、良いよ」
私はチョコボンボンの木箱を開けた、なかには三つのボンボンが鎮座していた。
クリフ兄ちゃんはパクリとボンボンを食べた。
「ああ、なるほどなるほど、これはクララの手じゃないな」
「本職のパティシエさんのメレーさんだよ」
「ふむ、チョコも高級品じゃないけど、十分美味しい、しまったな、もっと早く知っていれば準備もできたんだが」
「ソバボウロとクッキーと、あと、なんか焼き菓子のセットを作って店頭に並べておきなよ」
「そうだな」
「あら、ひよこ堂クッキーとソバボウロのセットですの?」
「よろしいわね、私、ソバボウロが素朴で大好きですのよ」
「お得なお値段なら欲しいわね」
やっぱりお菓子は乙女の燃料なので、食いつきが良いな。
クリフ兄ちゃんは店頭にあった商品を亜麻袋に手早く詰めてセットを完成させた。
「やっぱりチョコボンボンが無いからなあ」
「目玉がほしいな、フロランタンもあるんだが」
「あんまり似ててもしょうが無いから、両方買ってもお客さんが満足するセットにしようよ」
「そうだな、その分安くして千ドランクで売り出すか」
「そうそう」
クリフ兄ちゃんが詰めた、ひよこ堂遠足セットは詰める横から売れて行った、私も買ったし、派閥の皆も買った。
千ドランクでいっぱい入って格安であるね。




