第1239話 学園に戻って晩餐をいただく
蒼穹の覇者号は暗くなってきた雨空の中を飛行していく。
帰ったら晩餐だなあ。
ホルボス山と王都は近いのですぐ着いた。
子供達を下ろすのに大神殿の練兵場に降りる。
「アダベルはどうするの」
「学園から帰る」
大神殿からよりも、学園からの方が、ちょっとだけ学園長宅に近いんだよね。
「マコねえちゃん、またね~」
「アダちゃんもまた明日」
「またな~~」
アダベルは孤児達に手を振った。
孤児達が降りたら、甲板に乗せてあったアダベルの籠をマジックハンドで練兵場の端のテントに押し込む。
「雨大丈夫だった?」
「凄く快適、だったそうだ、障壁は凄いな」
それは何よりだ。
やっぱり、子供達が濡れて風邪を引くといけないからね。
「学園に向かう……」
エルマーがスイッと蒼穹の覇者号を離陸させて、学園の裏の森上空を飛ぶ。
そして、ビアンカ邸基地の入り口にスイッと下ろして危なげなくバックで格納庫に入れた。
上手くなっているなあ。
【お疲れさまでした】
「エイダさん、ありがとう」
【いえいえ】
みんなでどやどやと船を下りた。
男衆は武術場口から地上に出ていった。
アダベルは女子寮に入ってから外に出る感じだ。
その方が校門に近いからね。
通路を通って女子寮に入る。
「アダベルも晩餐食べていく?」
「いや、ガクエンチョと食べないと、一人だと可哀想だからな」
「そうか、偉いね、アダベル」
「守護竜だからなっ」
アダベルは胸を張った。
やっぱりなんだかんだ言ってもアダベルは良い子だよね。
アダベルと一緒に階段を上がって、玄関まで送っていった。
「それではまたね」
「お、ここにも障壁だ、どこまで」
「校門までよ」
「まあ、校門からすぐだから走って帰ろう、じゃあ、マコト、カロル、コリンナ、またな~」
「またね」
「また」
「じゃあなあ」
三人でアダベルを見送った。
奴は障壁回廊の中をパタパタと駆けていった。
さてさて、晩餐を食べに行こう。
今日も良い匂いだなあ。
フライ系の感じがする。
「今日はなにかしらね」
「フライと見た、魚かな」
「私はチキン系じゃないかと思うな」
三人で食堂まで歩く。
他の派閥員はエレベーターを使って先に食堂に入っている。
クララがカウンターに陣取っているな。
「今日のお献立は?」
「今日はフライチキン、コンソメスープ、ニンジンのサラダ、黒パンだよ」
「お、当たった」
コリンナちゃんが微笑んだ。
魚じゃ無かったかあ。
私はお料理をトレイにのせていき、カップにケトルから冷めたお茶を注いだ。
テーブルまで持って行く。
今日はみんなの方が早く席に着いているね。
カロルとコリンナちゃんが席に着いたら食事のご挨拶。
「いただきます」
「「「「日々の糧を女神に感謝します」」」」
パクリ。
サクリ、サクサク。
ああ~、ジューシーで熱々で美味しい。
やっぱり腕が良いスタッフの揚げ物は良いね。
付け合わせはジャガイモとニンジン、美味しい美味しい。
「夏休みは楽しみね」
「先にホルボス村の夏祭りに行って、その後リシュエール諸島でバカンスか、良いな」
シルビアさんが今日も隣のテーブルに座っていて、振り返った。
「ホルボス山って、聖女が貰った領地か? 夏祭りかあ」
「どうせ、一緒にリシュエール諸島に行くんですから、前日のお祭りにもご一緒しませんか?」
「良いのか?」
「邸宅は広いので良いですよ」
「わりいな、よろしくお願いするぜ」
シルビアさんはニッカリ笑った。
夏休みは色々と賑やかになりそうだね。
「スーザンさん、ベロナ隊の夏休みの予定はどうなってましたっけ」
コリンヌさんが隣のテーブルのスーザンさんに声を掛けた。
「ずっとガドラガよ」
「えー、私は聖女派閥で海にバカンスに行くんですよ、後半からにしませんかっ」
「レアキメラを倒すために修行しないとって、ベロナ様が燃えていたからねえ、諦めなさい、僧侶のあんたが居なかったら遭難しちゃうわ」
「ヤダヤダヤダ、ご主人様と海のバカンスをするんです~っ」
あれだ、所属が二重の人はいろいろと大変だね。
「そんな事いってもねえ~」
「うえええええん」
コリンヌさんが、マジ泣きをはじめおった。
「ベロナさん達も一緒にくれば良いみょんよ」
「え、海?」
スーザンさんが心引かれたようだ。
「海ですよ海、白い砂浜で、誰も居ない孤島で、宿泊は蒼穹の覇者号ですようっ」
人数が人数だからなあ、ベロナ隊は外でテントになりそうだが。
「良いんですか、聖女さま」
「子供達も居るから騒がしいけど、それで良いなら良いわよ」
「ちょっと、ベロナ様と相談してみます」
「お願いします、スーザンさん」
結構キツキツだけど、人数が多い方が楽しいしね。
コリンヌさんも夏の間ずっとガドラガだと辛かろう。
「楽しいバカンスになりそうだな、スーザン」
「あんたも行くのね、シルビア」
「リシュエール諸島はわたしの家の領地だからな」
シルビアさんとスーザンさんは、二年生同士で知り合いみたいね。
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