第1230話 晩餐後に水着の生地を確認する
食堂に入り、今日のお料理をトレイにのせる。
本日の下級貴族食は、合鴨のソテー、オニオンスープ、キノコサラダ、黒パンであった。
今日も美味しそうだ。
トレイを持ってテーブルに着き皆を待つ。
合鴨の良い匂いがするなあ。
皆がそろったので食事のご挨拶である。
「いただきます」
「「「「日々の糧を女神に感謝します」」」」
パクリ。
ん~、やっぱり合鴨は風味があって美味しい。
ソースも良い感じ。
「そろそろ期末テストの勉強会もしないとね」
「ああ、もう、そんな時期かあ」
「遠足があって、武道大会、期末テストで、一学期は終わりよ」
なんだか一学期は盛りだくさんでもう早三年ぐらいの事件が起こった気がするよ。
でも、もう一頑張りで夏休みだね。
楽しみ楽しみ。
オニオンスープをすすり、キノコサラダを食べる。
ああ、毎日毎日美味しい晩餐を食べられて幸せだなあ。
「遠足が終わったら勉強会を始めましょうか」
「そうね、あと、ガドラガに行っていた一週間分の埋め合わせをしないと」
「コリンナちゃん、ノートとってある?」
「もちろん」
コリンナちゃんに隙は無いな。
ガドラガに行った分、勉強を頑張らないとね。
「夏休みにバカンスに行く孤島を調べていたんだけど、リシュエール諸島ってどこの領地かしら」
「南岸の諸島ですわね、どこかの子爵領ですわね」
やっぱりヒルダさんはよく知ってるな。
と、思ったら隣のテーブルの女生徒がこっちをみた。
「うちの実家の領地だぞ、聖女候補」
シルビアさんがこっちを見て変な顔をしていた。
ああ、ハウエル子爵って、シルビアさんの実家か。
「わ、意外な繋がりが、夏休みに砂浜のある孤島でバカンスをするつもりなんだけど、許可とれるかしら」
「孤島で? 実家の諸島は行くの大変……」
「飛空艇で行きますのっ」
「中で料理もできますし、泊まれるのですわよ」
シルビアさんは、眉を上げた。
「剣豪のシルビア・ハウエル……」
「武道大会のライバルみょんっ」
「カトレア・ピッカリンと北方の蓬莱刀、お前らが聖女派閥の剣客か」
「そうだ、勝負だシルビア・ハウエル」
「負けないみょんよ、コイシ・コミンビッチだみょん」
「お、おう、楽しみだな」
立ち上がったカトレアさんの肩を持ってエルザさんが座らせた。
「飛空艇でバカンスかあ、確かに良い砂浜の無人島は幾つかあるな」
「許可とか要るのかしら」
「いらねえよ、ヨットで遊びに来て散らかして帰る奴らも多いぜ」
わりと適当な管理なんだなあ。
「砂浜があっても水場が無い島とかばっかりだぞ、水場あると村があるし」
「飛空艇は水持って行けるから問題ないわよ」
「じゃあ、問題ねえよ、勝手に来な」
「シルビアさまは里帰りいたしませんの?」
「一応夏休みには帰るけどな」
リシュエール諸島に帰るとなると陸路で一週間、船に乗って一日かな?
「許可を取ってくれるなら、何かの縁ですし、飛空艇で送って行きますよ」
「うお、あの凄い飛空艇か、三日ぐらいで付くか?」
「三時間ぐらいですよ」
シルビアさんは目を丸くした。
「マジかよ、そんなに速いのか、すげえなあ飛空艇。ああ、父ちゃんも聖女候補が来ると聞いたら喜ぶかもな」
「教会でミサとかは勘弁ね」
「ああ、そうだな、でも顔をつなぐだけで喜ぶぞ、父ちゃんも母ちゃんも信仰深いからさ」
お、これは簡単に許可が取れそうだな。
「じゃあ、悪いけど乗せて行ってくれ、交換条件で、リシュエール諸島のどこでも停泊許可でどうだ」
「かまいませんよ、シルビアさん」
私とシルビアさんは握手を交わした。
「バカンス中に勝負だ」
「勝負みょん」
「あ、エルザって今いるのか?」
「はい、私ですけれども、シルビアさま」
「おお……。へへ、武道大会で戦うのを楽しみにしてるぜ」
「よろしくおねがいいたしますわ」
おお、ライバル同士の初接触だな。
食事が済んだので、空食器を返却口に戻した。
ダルシーがお茶を入れてくれた。
「シルビアさまもご一緒しませんか」
「ん? 何すんだ?」
「水着の相談ですよ」
「水着かあ」
シルビアさんはあんまり水着とか興味なさそうだなあ。
ヒルダさんがテーブルに幾つかの布地を出して広げた。
「わ、ミズ蜘蛛の魔導布じゃないですか、マーラー領でも作ってたんですか」
「ええ、小規模ですけど、養殖に成功しましたの」
魔導布を手に取ってみる。
おお、前世の化繊みたいな肌ざわりだな。
「水を含み難くてすぐ乾きますわ」
「シルビアしゃんは、諸島でどんな水着を着てるみょん?」
「え、下着姿で入るぞ、専用の水着とか馬鹿馬鹿しい」
「なかなか剛の者であるな、シルビア殿」
「いちいち着替えるなんてなあ、下着か、もしくは全裸だ」
ぐっは、諸島は野蛮な感じだなあ。
「あら、それは?」
「マコトさまが描いてくださったデザイン画ですわ」
「ほほう、どれどれ」
ヒルダさんがメリッサさんからデザイン画を奪い取ってしげしげと見ていた。
私は収納袋からノートを出してヒルダさんに渡した。
「わ、こんなに素敵なデザインがいっぱい、うれしいですわ領袖」
「わ、これ私? パレオビキニはちょっと……」
「カロリーヌさまもこれくらい冒険すべきですわっ」
「そうですわそうですわ」
「え~~」
ヒルダさんの目がピタリと止まった。
お、ヒルダさん用にデザインした妖艶なビキニに目が止まったか。
「男性向けの、これは、その、大丈夫ですの?」
ヒルダさんが指さしたのは、冗談で描いたカーチス兄ちゃんがブーメランパンツを履いた絵であった。
「まあ、これはこれは……」
「は、破廉恥ですわあ、まろびでませんこと?」
まあ、サポーターパンツ履けばまろび出ないだろうし、大丈夫だ、というより、参考作品である。
「作ってみたいですわね……」
おい、ヒルダさんっ。
作った所でカーチス兄ちゃんは履かないと思うぞ。
「はああ、殿が、こんな、こんな姿になったら」
「ど、ドキドキするみょん!」
なんか意外に好評だなあ。
本人に履くかどうか聞いてみようか。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




