第1225話 久々のカロルと王都デート
マメちゃんがベッドの上で暴れ回っているので目を覚ました。
今日も静かに雨音が聞こえるなあ。
ベッドのカーテンを開けると外は小雨だった。
カロルと一緒に雨の中デートか、まあそれも良いかな。
ハシゴから下りて色々と用足しをしていると、コリンナちゃんが起きてきた。
「おはよう、コリンナちゃん」
「おはよう、今日も雨か」
「まあ、障壁傘を作ってぶらぶら歩くよ」
「『ヌ』はどうした?」
「どうだろう」
私はコリンヌさんのパスを繋いだ。
おお、乗合馬車の中がコリンヌカルテットとベロナ隊でぎゅうぎゅうだな。
スーザンさんが狭いので怒っている。
「もう、バロメッツ迷宮に向けて出発したみたい」
「そうか、迷宮アタックは早朝から始めるからな、うんうん」
登山と違って、迷宮は日没の概念が無いので、早朝から行く必要はあまりないのだが、良い冒険者パーティは早朝から行って、昼頃帰って来る所が多い。
計画性の問題であろう。
コリンナちゃんと差し向かいでダルシーの入れてくれたお茶を飲む。
「しばらくぶりの穏やかな日曜だから、のんびりしてくればいい」
「そうだね」
衣料街に行って水着とか見よう。
マーラー領に発注もしないとなあ。
子供達の分もあるから点数が多そうだ。
お茶を飲み終わったので、部屋に施錠してコリンナちゃんと階段を下りる。
エレベーターホール前では派閥員が揃っていた。
「おはようおはよう」
「おはよう、マコト、コリンナ」
「おはよーっ」
みなと挨拶を交わして食堂に入る。
今日は塩ポリッジだな、副食はハムエッグであった。
卵の焼けた良い匂いがするね。
テーブルにトレイを持って行って、皆の着席を待つ。
全員が着席後、食事のご挨拶して食べ始める。
うまうま。
「今日は残念ながら雨ね」
「ガドラガの雨に比べると冷たくないし小雨よね」
「あそこは山の上だから寒かったわね」
「午前中は衣料街を歩いて、ケンリントン百貨店でお昼を食べてましょうか」
「いいわね、楽しみだわ」
やっぱりお出かけは雨の中でもウキウキしますな。
「歩きで行くのか?」
「そうね、ヒューイに乗っていくと早く着きすぎるね」
「二人乗りの一頭立て馬車が欲しくなるわね」
これ以上乗り物を増やしたく無いなあ。
二人で乗れる屋根のある小型馬車は憧れるけど、運用が面倒臭いね。
食事が済んだのでカロルと一緒に玄関の方に出る。
派閥のみんなはそれぞれ静かな日曜日を過ごすようだ。
「コリンナちゃんは今日は何をするの?」
「勉強」
「弓の練習もしなさいよ」
「わ、わかってるよっ」
コリンナちゃんは口を尖らせた。
カロルと一緒に笑って、玄関を出た。
小雨がさーっと降っているね。
校門までは障壁回廊を通り、外に出たら、障壁の傘を頭上に広げた。
カロルは顔を上げ、障壁傘を見た。
「便利で綺麗ね」
「高めに作ってあるから人とはぶつからないよ」
「いいわね」
カロルが私に肩をよせて手を握ってきた。
上空で私の障壁傘とカロルの障壁傘が寄り添う。
なんだか、仲良しな感じでいいね。
私もカロルの手を握り返す。
さあ、行こうか。
丁度、乗合馬車が学園前の停車場に来ていたので障壁傘を畳んで乗り込んだ。
小銀貨二枚を払って座席に並んで座る。
馬車が走り出す。
濃密な雨の匂いがするね。
乗合馬車はひよこ堂前を通り、大神殿を通り過ぎて行く。
衣料街は国立博物館の向こうから始まる。
カッポカッポと馬は歩き馬車は王都の中心部に入っていく。
さすがに雨だから人通りは少ないね。
しばらく乗って、博物館前で下りた。
障壁傘を頭上に広げた。
小雨の中を衣料街に向けて歩く。
衣料街は各種ブティックや衣料品店が立ち並ぶ横町だ。
裏道には縫製所や小さい衣料店が並んでいる。
「夏前だから、水着が並んでいるね」
「ああ、良い色の生地があるよ」
二人で並んで店先を覗いて楽しむ。
やっぱりショッピングは良いね。
好きな人と一緒ならなおさらだ。
表通りのブティックはとても素敵で綺麗な服を置いてあって目に楽しい。
値段は馬鹿高いね。
王都だし。
アップルトン中の布製品の選りすぐりの物が集まり、才能のあるテイラーたちが技術をこらして素晴らしいデザインで服を組む。
なのでとても高い。
前世の大量生産の工場品とは違って、一点一点、手で縫い上げる物だからね。
布で出来た宝物みたいな物だ。
今年の水着のトレンドはワンピースみたいだね、ビキニはちょっと下火のようだ。
なんで、下着がドロワースなのに、水着はちゃんとビキニやらハイレグやらがあるのか解らないなあ。
羞恥心の水準が水着になるとぐっと下がるようだ。
ふだんは足が見えただけで、はしたないと言われるのになあ。
乙女ゲームだから仕方が無いのかもしれない。
「聖女さんだね」
前方から目に険があるのっぽの女生徒がそう言った。
ぼさぼさの金髪で腰に長剣を下げていた。
「二年のシルビア・ハウエルだ、勝負しろ」
そう言うと彼女は長剣を抜いて構えた。
何言ってんだ、こいつ。
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