第1223話 ガドラガ教会へ着陸する
蒼穹の覇者号は順調に飛行し、現在ガドラガ上空である。
「マコト、駐機場に駐めるの?」
「いや、教会の中庭に下りよう、その方が楽でしょ」
「解ったわ」
カロルはマップの進路を確認し、ふわりとガドラガ教会の中庭に着陸した。
【蒼穹の覇者号、タッチダウン、お疲れ様でした、サブマスター】
「いえいえ、おそまつさまでした」
うーん、カロルもエルマーも操縦が上手いな。
私もがんばらないと。
私は伝声管の蓋をカパリと開けた。
「お知らせします、こちらは艇長のマコト・キンボールです。長旅お疲れ様でした。当機は十五時二十分、ガドラガ教会へ到着いたしました。押し合わずにごゆっくりとお降り下さい」
ダルシーとアンヌさんの案内で神官さんと女官さんがやってきて下船を始めた。
ガドラガ教会からはマシュー助祭が現れて、ギャブリエル司祭と抱き合って再会を喜んでいる。
みんなが下りてから、私もタラップを踏んで中庭に下りた。
「これはこれは聖女さま、ガドラガ教会へお帰りなさいませ」
「大神殿から神官と女官を三十名連れてきたわ」
「夢のような経験をありがとうございました、聖女さま」
ギャブリエル司祭は私の手をがっちりと握ってシェイクした。
「ガドラガ教会の建て直し、頑張ってくださいね」
「お任せ下さい」
「マシュー助祭もがんばって」
「はい、もちろんです」
私は神官さん、女官さんに手を振ってタラップを上がった。
「ここがガドラガ……」
「来年の春にくるまでに平和になっている事を祈りましょう」
この前のガドラガ滞在は不穏すぎたからなあ。
私は艇長席によじ登った。
「それでは王都に帰ろう」
「そうね」
アダベルが居たらマルコアス修道院にクッキーを食べに行こうとうるさかったろうが、エルマーは甘い物は別に好きじゃ無いから行かなくてもいいのだ。
カロルは手慣れた感じで空中に船を浮かび上がらせて操舵輪を舞わして回頭した。
速度を上げ、高度を上げて、雲を抜けて雲海を高速で飛ぶ。
ほどなくして蒼穹の覇者号は自動操縦に入った。
「ガドラガは遠いけど、飛空艇なら近いわね」
「まったくだ……」
「もうすこし色んな場所にみんなと行きたいよ」
「それはあるわね」
「夏にはみんなで海水浴に行こう」
「そうか……、船に泊まればホテルはいらない……」
「そうね、夏休み入ったらみんなで南の島にでも行きましょうか」
そうか、別に街が無くても食糧を買い込めば無人島でも良いわけだね。
うむ、誰も居ないビーチで水着で皆でキャッキャウフフは良いなあ。
「孤児院の子供たちと、アダベルと、トール王子とティルダ王女も呼ぼうか」
「みんな楽しむでしょうね、良いわね」
「賛成……」
よしよし、夏休みは騎獣レースに参加して、みんなで飛空艇バカンスだ。
夢がひろがりんぐ。
雲海の上を飛ぶ。
そういや、イエローワイバーンを見たのはここら辺かな。
もう少し先だろうか。
雲海で滅多に生き物は見なかったので印象が鮮烈だよな。
「新しい水着を買いに行かないと」
「カマラさんちで売ってないかな」
「水着は無かったような」
「海パンを買わねば……」
この世界、下着はドロワースなのに、水着はビキニとかスク水とかのデザインだ。
なんだか捻れているよなあ。
プールに行ったり、海水浴をする習慣もある。
乙女ゲームだからしかたがないのかね。
ダルシーがお茶を入れてくれたので、マメちゃんの背中を撫でながら飲む。
「そう言えば、大神殿にアダベルが居なかったわね」
「籠付けてホルボス山じゃないかな」
「せっかく改造したのに雨がやんじゃったわね」
【王都の明日、明後日は雨模様の予報です】
「ありがとうエイダさん」
【梅雨明けは火曜日以降となりそうです】
遠足が木曜日だから丁度いいのかな。
蒼穹の覇者号は雲海を快速で飛び、王都上空で高度を落とした。
「ビアンカ邸基地で良いわね」
「はい、お願いねカロル」
カロルは操舵輪を回して、するっとビアンカ基地に降下して、トンネルをバックして格納庫に着陸した。
【蒼穹の覇者号、タッチダウン、おつかれさまでした、サブマスター】
「いえいえ」
「ありがとう、カロル」
「どういたしまして」
「操縦……、上手い……」
「ありがとう、エルマー」
三人でタラップを下りて船を出た。
通路を歩いて、武道場口へと行くエルマーを見送った。
カロルと二人で通路を歩く。
どちらからともなく手を繋いでいた。
えへへ。
なんだか嬉しいな。
「お風呂に行こうか」
「そうだね」
というか、ガドラガまで行くと半日使ってしまうね。
まあ、半日で済むとも言うのだけど、追加残業だからなあ。
また、カロルとデートしたいねえ。
女子寮に入り、地下大浴場へと行く。
脱衣所で服を脱いで浴室に入ると、そんなには混んで無かった。
「あら、マコトさま、お帰りですか」
「あ、メリッサさん、マリリン、ヒルダさん、今、ガドラガから帰ったわよ」
「飛空艇は速いですね、領袖」
「半日で往復できるからね」
「素敵ですわあ」
かけ湯をして湯船に浸かる。
ああ、お風呂は良いなあ。
マメちゃんも影から出て泳ぎ始めた。
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