第1211話 今日のお昼はクララのパンワゴン
武術の授業から帰って来ると、お昼休みである。
B組の連中がわらわらとやってきた。
「雨の日は外に食べに行けなくて辛いな」
「校内だと食べられる所、限られてるからね」
「今日はパンワゴン出てるって、朝の食堂で見たわ」
でかしたカロル。
「パンワゴンに行くかあ、早く梅雨終わらねえかなあ」
ぼやくカーチス兄ちゃんを押して私たちは階段を下り、二年生と合流し、玄関で三年生と合流して女子寮へと歩く。
この前設置してあげた障壁屋根の下で、クララとメレーさんがパンを売っていた。
結構人が多いね。
人気のワゴンだ。
大人しく順番待ちをして、番を待った。
上を見ると障壁に当たって弾ける雨粒が綺麗だな。
ちょっと待ったら番が来た。
「いらっしゃいマコト」
「新作は無さそうね」
「いつものばっかりよ」
「聖女マリアパンとシチューポットをちょうだい、あとレモネード」
「まいどあり、シチューポット好きね」
「美味しいからね」
パイ生地のポットの中にイルダさん特製のビーフシチューが入った料理パンだ、ちょっとお高いけど、ご馳走という感じで美味しい。
「ひゃあ、美味しそうですねえ、何が美味しいですか、ご主人様」
「わりと何でも美味しいけど、調理系が美味しいわよ」
「じゃあ、川鱒フライパンと聖女マリアパンとレモネードをください」
コリンヌさんはパンワゴン初めてなのか。
「いつもはベロナさまがレストランにつれて行ってくれてたんですけど、やっぱり聖女派閥でご主人さまと食べたいじゃないですか」
「ベロナさんの所にも行ってお上げなさい」
「まあ、時々は~~」
コリンヌさんは、聖女派閥に居着く気まんまんだな。
障壁回廊を使って校舎へと行く。
一階の職員室前を通り裏口から渡り廊下へ、少し行って集会棟への回廊をのり継いで聖女派閥の集会室へ。
部屋の中でテーブルにパンを置き、椅子に座る。
この部屋は良い匂いがして、テレピン油の匂いもして、居心地が良いね。
買ってきたパンをレモネードと一緒にわしわし食べる。
ダルシーがマメちゃんに煮こごりをあげていた。
「あ、おいしいっ、こんな美味しい物を見過ごしていたとはっ、ベロナさまにも教えてあげねば」
「女子寮食堂のイルダさんが作ったお料理を使っているからね」
パンの出来もさすがのクララだから美味しいんだけどね。
「ダルシーの絵はできあがり?」
「そうよ、午後にホルボス邸宅に持って行って飾るわ」
「良いわねえ、飾る絵一号ね」
「ホルボス山にご主人様の邸宅があるのですかっ」
「あ、あるよ、あそこらへんの領主だからね」
「すごーい、凄いです御領主さまっ」
やめろい。
「夕方、子供達を迎えに行くから、コリンヌさんも行く?」
「いきますいきます、きゃっほうっ」
テンション高いよなあ。
集会室でおしゃべりをしていたら、あっという間に昼休みは終わった。
みんなは午後の魔法の授業の為に出発した。
私だけが集会室に残った。
さて、今日は子供達をホルボス山に送って行かないとね。
私はダルシーの絵を布で包み収納袋に入れた。
集会室から出て施錠する。
《行くのか》
(ヒューイも行く?)
《行くとも、主よ》
(じゃあ、飛空艇の出入り口で待ってて)
《解った》
集会棟から障壁回廊で渡り廊下へ、渡り廊下横の階段を使って図書館二階へ。
中に入ると、ルカッちが貸し出しカウンターで本を読んでいた。
「地下か?」
「地下よ」
それだけを言って階段を一階まで下りる。
というか、授業は良いのか、ルカッちよ。
地下書庫から、地下通路に入り、歩いて格納庫まで行く。
格納庫に入ると自動的に蒼穹の覇者号のハッチが開きタラップになった。
「今日もお願いね、エイダさん」
【了解です、マスターマコト】
私は蒼穹の覇者号に乗り込み、メイン操縦室に入った。
艇長席によじ登り、船長帽をかぶる。
「発進します」
【蒼穹の覇者号、離陸シーケンスを開始します】
前方のゲートがバクンバクンと開いていく。
私は出力レバーを押し上げ、操舵輪を傾けて微速で前進していく。
最後の出口の向こう、発着台の上にヒューイが居て、ピョンと甲板に飛び乗った。
(うまいうまい)
《まかせて》
蒼穹の覇者号を垂直上昇させて回頭、大神殿を目指す。
ぴゅーっと飛んで、練兵場にふわりと下ろした。
子供達は待ち構えていたのか、障壁回廊を全速力で下りてきた。
ハッチを開けてあげる。
子供達はドドドと上がって来てメイン操縦室に転がり込んできた。
「こんにちはマコねえっ!」
「ホルボス山久しぶり~~」
「トトメスも持って来た」
「にゃーりんも持って来た~~」
みな従魔を抱いたりして持って来てるね。
アダベルはカエルのトトメスを頭にのせ、黒猫のクロを肩にのせて大いばりである。
「にゃーん」
あいかわらずクロはイケボで鳴くなあ。
「じゃあ、みんなでホルボス山に行こう」
「「「「「いこういこう」」」」」
船外では、オガ太郎、ゴブ蔵、カマ吉がいて、こちらに頭を下げていた。
うん、うちの従魔さんたちも大神殿で頑張っているね。
じゃあ、ホルボス山に子供達をつれて行こう。
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