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第1208話 マール邸から帰る

 さて、これにて一件落着なので帰ろう帰ろう。


「それでは、幸せにお暮らしください、では」

「お、お待ち下さいっ、聖女さま、ち、治療費は、治療費は幾らになりますかっ、可愛いコリンヌが帰って来たのです、家屋敷を売ってもお支払いいたしますっ」

「ベントゥラ伯爵家に融資を申し込む事も出来ますっ、お幾らでもお支払いしますっ」


 うーん。


「金は基本的に取らないです、戦闘のついでに治してしまったので、気になるなら生活の負担にならないぐらいの額を大神殿に寄進なさってください」

「ああ、ああっ、なんてなんというお方なのですかっ!」

「そんな、それではこちらの気持ちがっ」

「じゃあ、銀貨三枚で」

「ああ、ガドラガでそれで腕を生やしたりしてたらしいですね」


 コリンヌさんはそう言ってニコッと笑った。


「治癒の力は女神様から授かった物だからね、金儲けに使っちゃ罰があたるのよ。でも秘密ね、困った人が殺到しても困るし」

「さすがはご主人さまです、はい」


 コリンヌさんがポケットから銀貨を三枚出して渡してきた。

 ありがたく頂こう。


「で、でも、コリンヌ、聖女様に銀貨三枚ではあんまりな」

「後で寄進に参りましょうよ、あなた」

「あまり無理しないでください、これからコリンヌさんの力を借りる事もあるでしょうし」

「そうだよ、私はご主人様の従魔だからっ、水くさい事は良いんだっ」

「ありがとうございますありがとうございます」

「なんとお礼を言っていいやら」

「今日の所はコリンヌさんと再会を喜んでください」

「ご主人様も夕食食べていかない?」

「寮で食べるから良いわ」

「そう、今日はありがとう、助かったわ」

「気にすんな、可愛い従魔の為だからさ」

「うひひ、ありがとうっ」


 コリンヌさんは満面の笑顔で笑った。

 なんつーか、阿呆の子化してずうずうしいけど、なんか憎めないのよね。


 私は入って来たガラス戸から外に出た。


「今度、イチローとジローとサブローを連れてくるよっ」

「ど、洞窟ライオンかい、でっかくないかい?」

「でっかいよう、でも大人しいから大丈夫」

「それは楽しみだわ、ああ、学校の方の手続きもしないとね」


 うん、上手くやれそうだね。

 なによりだ。


 私はヒューイに跨がった。

 いつの間にかダルシーが後ろに座っていた。


「さあ、帰ろう」

《わかった、よかったなコリンヌ》

《ありがとう、ヒューイくん》

《きにするな》


 もう、ヒューイがお兄さんぶって可愛いね。


 私たちはマール邸を後にして雨空に飛び上がった。

 もうすっかり夕暮れで薄暗い。

 眼下の王都は街灯が付きはじめている。


 ヒューイは学園の校門近くに下りて走ってくぐった。


《入る方が結界がキツイ》

「そうなんだ」

「マコトさまの従魔たちと念話出来るようになれるのですね、是非私にもテイムを掛けてください」

「却下」


 何を言っておるのだ、このダルシーは。


「うう、マコトさまが危機の時に颯爽と駆けつけなければなりませんのに」

「今でも十分ダルシーに助けられているわ、テイムしなくても大丈夫よ」

「マコト様……」


 感極まった顔で頬を赤らめるなというのだ。

 んもう。


 ヒューイは女子寮の玄関で止まった。

 いつの間にかダルシーは居なくなっていた。

 念話とか出来るとこの快適さが無くなるからなあ。


《では、帰る》

「ありがとうねヒューイ」

《何でもないのだ、主よ》


 ヒューイは勝手に厩舎の方にすたすた行ってしまった。

 なんという便利な騎獣なのであろうか。


 寮の中に入るとふわっと美味しそうな匂いが漂ってきた。

 あ、今日はなんかのフライだな。

 なんだろうななんだろうな。


 エレベーターホールに行くとまだ誰も来てなかった。

 時計を見ると、ちょっとだけ早いか。


 ロビーのラウンジで『プートリー国立公園』のガイドブックを読む。

 なるほど、王都から山頂まで四時間ぐらいか。

 朝に出て、お昼は山頂かな。

 展望台があって眼下に王都が見えるそうだ。


 気になる魔物はそれほど強い奴は居なくて、角兎とか、夜光猫ぐらいらしい。

 夜光猫のにゃーりんは元気にしてるかな。

 今度大神殿の孤児院に見に行こうかな。


「あら、マコト、どうしたの?」


 カロルがエレベーターで下りてきて、私を見つけてくれた。


「ああ、ちょっと野暮用で出てたんだ」

「そうなのね、あ、今度の遠足の場所の本ね」

「そうそう、ちょっと楽しみ」

「ホルボス山より近い山なのよね」

「真面目に行くとホルボス山も遠いからね」


 コリンナちゃんとか、剣術組とかやってきて、ラウンジでわやわやと喋る。


 そのうちみんなが揃ったので、食堂へと入る。


「クララ、今日のお献立は?」

「タラのフライ、タルタルソース仕立てと、ほうれん草サラダ、キノコのスープ、黒パンだよ」

「おお、塩ダラかあ」

「良いのが手に入ったらしくてね」


 私はトレイに料理を乗せていき、カップにケトルから冷めたお茶をいれた。

 いつもの席に持っていき、みんなを待つ。


 みんなが揃ったので、お食事の挨拶だ。


「いただきます」

「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」


 パクリ。

 うんうん、良い塩梅の塩抜きだね。

 サクサクしてこれは美味しい。

 コイシちゃんはまた沢山塩を掛けてカトレアさんに怒られていた。

 彼女は将来腎臓病になりそうだなあ。


 ほうれん草のサラダもシャキシャキで美味しい。

 ああ、やっぱりイルダさんの料理は美味しいね。

 キノコのスープも良い味が出ている。


 うんおいしいおいしい。


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― 新着の感想 ―
[一言] ゲームジャンルによっては指揮にスパイにとどんどん使っちゃいそうな人間対象従魔システム。距離によるけどほぼ直接通話とか諜報が変わる……か? そういや通信担当は耳長さんがもう出てたか
[一言] コイシちゃんだったら聖女のエクストラヒールで治るからへーきへーきだみょん!とか言いそう。 実際派閥院の皆様方、老衰以外で死ななそうな気がするな。 老衰しないのも約二名いるしw
[良い点] お兄さんポジションのヒューイくん。 [一言] マール家・・・コリンヌさんの名字が出てくるのが初めてかな?とか、ガドラガで再生して文字通り裸一貫だったのだけど、金銭はどこから?とか疑問が。 …
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