第1200話 対決コリンヌ対コリンナ
コリンナちゃんと応接セットでだべっていたら、女子寮がざわざわとした。
お、黄金の暁号の二年生が帰って来たかな。
と、思ったらドアがバーンと開いてコリンヌさんが顔を出した。
「ご主人様っ! あなたのコリンヌがやってきましたようっ」
「うへえ」
「これがコリンヌさんかあ」
「あなた誰!」
「コリンナ・ケーベロスですよ、コリンヌさん」
「あなたが噂の『ナ』ねっ、わたしは『ヌ』だわっ」
何だろうなあ、この変なテンションは。
「お茶飲んでるんですか、私も貰っていいですか、あ、ありがとうメイドさん」
ダルシーがしかめっ面でコリンヌさんにお茶を出した。
というか、コリンヌさんも、まだメイドさん姿だな。
「制服は?」
「部屋に行ったら綺麗さっぱり片付けられて無かったです、明日実家へ行ってみます」
「実家には知らせて無いの?」
「面倒だから明日です」
まあ、娘が生きかえって来たらさぞや喜ぶであろうなあ。
「従魔たちはどうしたの?」
「船で騎乗部の部長さんと知り合いまして、厩舎に行くので連れて行ってもらいましたよ」
「パスカル部長は世話好きだなあ」
「離れてしまうので寂しくって困ります」
「厩舎ぐらいだと念話使えないかな」
「むむむ、あ、通じる通じる、みんな元気? うん元気そうです」
コリンナちゃんが、コリンヌさんを見て酢を飲んだような顔をした。
まあ、似てるのは名前だけで性格は偉く違うからなあ。
「コリンヌさんは何が出来るの?」
「水属性僧侶なので『癒やしの水』が使えますよ、あと水魔法が少々、仲間の魔物が三匹居ますよ、コリンナ」
「私、男爵令嬢なんだけど」
「私は准男爵令嬢です、同じぐらいですね、コリンナと私」
男爵位の方が上な気もしないでもないが、あまりコリンヌさん的には気にならないようだ。
「聖女派閥に入りたいとか思ってる……?」
「私のご主人さまはマコト様ですから、私も聖女派閥に入ります、当然ですっ」
入るのかあ。
「ベロナ先輩のメイドさんじゃないの?」
「はい、でもベロナさまの所は仕事です、マコトさまはご主人さまですから」
「マコト的にはどうなのよ」
「わ、わたし?」
コリンヌさんが興味津々という感じでこちらを見ている。
いやああ、困ったなあ。
「ま、まあ、入りたいなら反対する理由はないわよ」
コリンナちゃんが、お前はっきり迷惑って言えやこらあっ、という感じでしかめっつらをした。
いや、その、なあ。
「ありがとうございますっ、マコトさま、これで私も聖女派閥の一員ですねっ、わっはっは」
「押しが強い」
そろそろ時間なので、食堂に向かう事にした。
三人で外に出て部屋を施錠する。
「あのメイドさんは?」
「ああ、必要の無いときは姿を隠してるんだよ」
「すごい、メイドの里の諜報メイドさんですね、初めて見たっ」
「コリンヌさんはメイドの学校は?」
「出てませんよ、ベントゥラ伯爵家の執事の家系なので、幼い頃から英才メイド教育を受けてますっ」
伯爵家ぐらいだと、中核の使用人は下位貴族だったりするんだよね。
とはいえ、使用人は別に平民でも問題は無いのだ。
貴族の家だと、ちょっとだけ信用が高いぐらいだね。
階段を下りていく。
踊り場から見える空はもう真っ暗だね。
エレベーターホールには聖女派閥員が集まっていた。
「マコトさま、お帰りなさいませ」
「いらっしゃらない間、寂しかったですわっ」
「ただいま、メリッサさん、マリリン」
みんながお帰りお帰りと挨拶してくれる。
いやあ、みんなと会うとほっとするね。
「あら、領袖……、コリンヌさんが」
ヒルダさんがコリンヌさんを見つけていぶかしげな顔をした。
「こちらコリンヌさん、聖女派閥に入りました」
「あらあら」
「まあまあ」
「こんにちはコリンヌです、マコトさまのシモベです~」
コリンヌさんはドヤ顔でそう言った。
「どういう事ですの、マコトさま」
「シモベだなんて」
「間違えてテイムしてしまったのだ」
「「「まあっ」」」
「マコトさまの従魔でーす」
「人もテイムできますのね」
「なんだか禁断の香りがいたしますわっ」
そんな香りは一切無いです。
風評被害です。
ぞろぞろと皆で食堂に入る。
「お、お帰りマコト」
「ただいまクララ、今日のお献立は?」
「下級貴族食は、ハンバーグ森のキノコソース、オニオンスープ、エシャロットサラダ、黒パンだよ」
「ハンバーグかあ、良いねえ」
さっそくトレイを取って料理のお皿を載せていく。
最後にカップに冷めたお茶を注いで完了。
いつもの席に持って行った。
コリンヌさんがテーブルが決まらなくてうろうろしたあと、剣術部のテーブルに付いた。
「あら、コリンヌ、あなた聖女派閥に入ったの」
「入りましたスーザンさま、これから卒業までご主人様と楽しく暮らすのです」
「まあ、良いけど、ちゃんとベロナ隊の会合にも出なさいよ」
「わかっちょりますっ」
剣術組のテーブルに座ったコリンヌさんは、カトレアさんとか、コイシちゃんに話しかけられていた。
仲良くなると良いね。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
みんなで挨拶をして食事をはじめる。
パクリ。
ああ、これこれ、イルダさんの料理の味。
いやあ、美味しいねえ。
「やっぱりイルダさんのお料理は特別ね」
「アンヌさんのお料理も美味しかったけどね」
「やっぱりプロは違うわよね」
オニオンスープも、エシャロットサラダも美味しい。
はあ、幸せ。
美味しい物を食べると充実しちゃうね。
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