第1198話 王都に帰還したぞ~
雲を押し退けて高度を落とすと王都地方は依然として雨であった。
黄金の暁号を追い越して先に王都に帰還である。
現在はメイン操縦室に戻ったな。
従魔の連中はラウンジに居る。
「ビアンカ邸基地に入れる? それとも大神殿?」
「大神殿でゴブ蔵たちを下ろそう」
「解ったわ、エイダさん、大神殿への進入経路を表示して」
【了解です、サブマスター、カロリーヌ】
ペコンと地図上に進入路が表示された。
南の方から入って大神殿の練兵場に着陸する感じだね。
いやあ、一週間ぶりの王都だね。
なんだか雨で煤けているけど、懐かしい感じだ。
アダベルとか、孤児達が待ってるかな。
カロルは手慣れた感じで、すいっと練兵場に着陸した。
私は伝令管の蓋を上げる。
「ゴブ蔵、カマ吉、オガ太郎、大神殿に着いたわ、下りてきて」
『かしこまりました、マコトさま』
ゴブ蔵がイケボで返事をしてラウンジから下りてきた。
私は艇長席から跳び降りて部屋を出る。
ゴブ蔵達と廊下で合流した。
雨が降っていたので、タラップから大神殿の屋根があるところまで障壁の回廊を張った。
大分、障壁回廊を張るのになれたな。
上から、ドドドドドと、アダベルと孤児達が駆け下りてきた。
「マコトー、お帰りーっ!!」
「マコねーちゃんーっ!」
「おかえりおかえりっ」
「ゴブ蔵もカマ吉もお帰り、わ、知らない人がいるっ」
「オガ太郎と申します、聖女様の新しいシモベですよ」
「オガ太郎っ!! 顔怖い~~!! でも強そう~~!!」
「よろしくよろしくっ!!」
オガ太郎がちびっ子たちにもみくちゃにされていた。
子供はエネルギーの塊だからなあ。
「マコトお帰り」
アダベルが前に出て来た。
「お土産をくれっ」
そうだよな、アダベルはそういう奴だよ。
「マルコアス修道院からクッキーを貰って来たわよ」
「「「「「ばんざーいばんざーいっ!!」」」」」
「あそこのクッキーは好きだっ、くれっ」
「女官さんに渡すわよ、あんたに渡すと独り占めするから」
「くそうくそうっ」
子供達とワイワイ騒ぎながら、障壁回廊を歩く。
大神殿の屋根の下に入ると、教皇様がやってきた。
「お帰りなさい、聖女マコト、ベルモントは捕まえましたか?」
「惜しくも逃がしました、生死は不明ですが、ガドラガに再び来る事は無いでしょう」
「そうでしたか、お疲れ様でした」
教皇様にリンダさんから預かった手紙を渡した。
「リンダさんは王府の役人がガドラガに来る便で帰りたいって言ってましたよ」
「そうですね、ガドラガに実務家を出しますか。王府の役人を送るときについでに連れて行ってください」
「解りました」
その時に、ローランさんとか、ハナさんとかを引き上げようか。
さあ、教皇様への報告は終わった、学園に戻ろう。
コリンナちゃんが恋しいぜ。
あと、コリンヌさんと会わせるのがちょっと楽しみだぜ。
私は収納袋からお土産のクッキーの包みを出して、孤児院の女官さんに渡した。
「アダベルに取られないように」
「心得ております」
女官さんはニヒルに笑った。
「くそうくそう」
「アダちゃんはあればあるだけ食べるから」
「際限というものがない」
「美味しい物は我慢ができない」
気持ちは解るけどね。
「アダベル、一週間留守にしてたけど、王都で何か変わった事はあった?」
「特にないなあ、雨降りだからホルボス山に行けなくて困ってる、トールとティルダが寂しがっているだろう」
「明日でも行ってみようか」
「そうしようっ!」
「私も行く~~!!」
「ティルダちゃんと遊びたい~~」
「村の三馬鹿とも会いたい~~」
地獄谷も見とかなきゃだしね。
領主さまは色々と忙しいのだ。
「それじゃまたね」
「またなー、マコトー、カロル-」
「またねーまたねー」
「明日は遊ぼうっ」
ちびっ子達と別れて、私とカロルは蒼穹の覇者号に乗り込んだ。
「やっぱり、子供達と話すとほっとするわね」
「うん、やっぱり良いね」
私は艇長席に、カロルは副艇長席によじ登る。
カロルはエンジン出力を上げ、スイッと上がってスイッと格納庫にバックで入れた。
【蒼穹の覇者号、タッチダウン】
「「ふうう~~」」
「我が家が一番!」
「我が家じゃないけど、やっぱり落ち着くわね」
エイダさんにハッチを開けて貰い、下船した。
エバンズがうろうろしていた。
「おかえり、マコトさん」
「何してんの、エバンズ」
「一週間も蒼穹の覇者号をいじって無いので禁断症状が出た」
なんたる飛空艇馬鹿なのか、こいつは。
「点検の方、よろしくね」
「任せてくれ」
エバンズは嬉々として船内に入って行った。
甲板からヒューイが下りてきた。
《なつかしの我が家》
「おかえり、ヒューイ」
エイダさんが、気を利かせてゲートを開けたままにしてくれているね。
「勝手に帰る?」
《帰る、では、またな、主よ》
ヒューイは勝手にゲートをくぐって空に舞い上がって行った。
「勝手に厩舎に行ってくれるのは便利ね」
「勝手に来てくれるのも便利だわ、ヒューイはお利口さんだね」
「ワンワン」
マメちゃんが僕も褒めてという感じで戦闘聖女服の胸元から顔を出した。
「マメちゃんもお利口さんだよ、よしよし」
「よしよし」
カロルと二人でマメちゃんをなでなでしてあげた。
彼は気持ち良さそうにしていた。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




