第1194話 面倒臭いので抜け道をどこまでも上がって行く
全員で抜け道に入った。
魔物が出ない抜け道は安全でラクチンであるよ。
階段をみんなでわっせわっせと上る。
「一番上は四階なのかしら」
「そういえば上り階段続いてましたね」
もしや地上に出入り口があるのかも。
場所は冒険者ギルドかな。
四階まで上がった。
「もっと上がってみよう」
「そうしましょう」
下から見上げると結構上の方まで続いている。
どこに抜けるのやら。
一番上まで行くと、扉で封じてあった。
ジャンが前に出てコインをかざす。
『開け金色の扉』
合い言葉を唱えても微動だにしないね。
「マコト、接触パネルがあるわ」
おお、光魔法の接触パネルかな。
魔力を纏わせて触ってみた。
ガコン。
音がして扉が開いた。
「聖女さま、勇者さま専用のドアか」
たぶん、地下にもありそうだな。
で、ビアンカさまが何か隠してある。
ガドラガ基地の格納庫はありそう。
とりあえず、扉を潜って中に入る。
どこだここは? 地上っぽいけど。
「……女神様はお答えになられました、勇者と聖女を下界に使わし、人間を導くと、人々の王たちは深く安堵したのです……」
聖心教のお説教が聞こえる。
ガドラガ教会かな。
幕をぺろりとめくると、神父さんが居て、信者さんたちが一杯だ。
礼拝堂の裏に出るのか。
「お、おおっ! 聖女マコトさま! これは丁度良い所に、女神さまのおぼしめしと言えましょう」
「あ、ども、こんにちは」
「こちらへどうぞ、今、勇者と聖女の項を説法していた所ですよ」
他の奴らは私に手を振って、幕の裏から袖に逃げていきおった。
くそう、幕をめくるんじゃなかった。
私は壇上につれて行かれて三十分みっちり説教に付き合った。
どうしてこうなった。
お説法が万雷の拍手で終わった。
というかこの助祭さんは大神殿の顔見知りだから気安いのよね。
説法上手な坊さんなのである。
「ところでどうして幕の後ろから?」
「ガドラガ大玄洞の抜け道がここに繋がってたんだよ」
「おお、こんな所が、ガドラガ大教会も古いですからなあ」
「何年ぐらいの建物なの?」
「一番古い記録で五百年ほど前でしょうか、歴史の有る教会ですよ」
五百年かあ、さぞや伝説遺物も多かったろうなあ。
軒並みどっか行ってしまったが。
みんなはどこに行ったかなと探してみると廊下で待っていた。
「おまたせおまたせ」
ジャンと五本指が居ない、さっさとギルドに行ってしまったのか。
「せっかく教会に来たのですから、ランチをたかって帰りましょう」
リンダさんの言い方よ。
だが、反対する理由は無いので、聖女派閥、従魔軍団、ベロナ隊、そしてリンダ師で教会の食堂になだれ込んだのである。
意外に綺麗なカフェテリア形式の食堂でそこそこ美味しそうである。
このまえ蒼穹の覇者号から食材も卸したしね。
「あ、聖女様、なににいたしますか?」
「定食のAください」
「牛肉コロッケランチですね」
ちなみに定食のBはラムチョップランチだった。
みなで定食のトレイを持って席に座った。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
パクリ。
うん、揚げたてで暖かくてサクサクしているね。
わりと美味しい。
「ラムチョップはどう? カロル」
「臭みが少なくて美味しいわね」
とはいえ、教会ご飯なのでそんなには豪華ではない、清貧をむねとしますからね。
「こんなに美味しいご飯を教会で食べられるなんて」
「女神さまの奇跡だわ」
古参の尼さん達には大好評のようだが、何を喰わしていたんだ、ベルモントめは。
「コリンヌはどうすんだ、その従魔たち」
「ん? 一緒に住みますよ、イルッカさま」
「元の寮の部屋じゃ、入らないだろう」
「ふふーん、聖女さまの部屋で一緒に暮らすんですよ~~」
「くんなっ、というか、私の部屋は205号室よ」
ガーンとコリンヌさんは大きいショックを受けたようだ。
「二階、下級貴族部屋。そ、そんなあ、スイートで広々でメイドさん部屋もあって、ライ一郎ものびのびじゃ無いんですかっ!」
「メイドさん二人と生徒二人の相部屋よ。ライ一郎は入らないわね」
ライ一郎、寄ってきて困った顔をしても駄目なんだからねっ。
可愛いけど。
「教会の聖女さま予算がありますからスイートでも取れますが、どうしますか。警備の関係としてはそうして下さった方が」
「自分のベッドの下で怠惰のマルゴットが寝てるんだから、あそこの部屋が一番安全だと思うわ」
「そう言われたらそうですが」
リンダさんは納得がいかないようだ。
「従魔は大神殿に置いておけばどうかな」
「えー遠いですよう、四人は一心同体なんだから、一緒の場所に居ないとだめなんです、ベロナさまっ」
いろいろと面倒臭いな、この人。
「じゃあ、厩舎に置いたらどうだ、あそこなら学校の敷地内だしよ」
カーチス兄ちゃんがアイデアを出した。
「それしか無いのかなあ、厩舎代とかこまったなあ」
「従魔が三匹も増えたのだから、それぐらいの費用は必要よね」
たぶん、ライ一郎は肉を馬鹿食いするぞ、きっと。
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